将棋名人血風録 奇人・変人・超人~加藤一二三さん綺羅星の如きライバル達を語る

囲碁の漫画に週刊少年ジャンプに連載されていた ヒカルの碁 がありました。 この漫画は囲碁のルールを全く知らなくても楽しめる とても面白い漫画でした。

これと同様のことが将棋の名人位の獲得経験も有る 加藤一二三 さんが2012年5月10日に角川書店より上梓した 将棋名人血風録 奇人・変人・超人 にも言えます。 この本は将棋の駒の動かし方さえ全く分からなくても 充分に楽しめる将棋書籍になっています。

将棋の名人位はかたむき通信2012年4月10日の記事 名人位成立よりちょうど400年の平成24年将棋第70期名人戦始まる にも記したように大橋宗桂初代名人以来世襲制であった一世名人制は 関根金次郎十三世名人を最後に1937年廃止され、 短期実力制名人位制度が開始されました。 それ以来第1期木村義雄名人を皮切りに連綿と継続され今期70期には 森内俊之名人と羽生善治王位が対決の末、森内名人が死守していました。

名人位はこの70期を一覧すれば以下のようになります。

702012森内俊之
692011森内俊之
682010羽生善治
672009羽生善治
662008羽生善治
652007森内俊之
642006森内俊之
632005森内俊之
622004森内俊之
612003羽生善治
602002森内俊之
592001丸山忠久
582000丸山忠久
571999佐藤康光
561998佐藤康光
551997谷川浩司
541996羽生善治
531995羽生善治
521994羽生善治
511993米長邦雄
501992中原 誠
491991中原 誠
481990中原 誠
471989谷川浩司
461988谷川浩司
451987中原 誠
441986中原 誠
431985中原 誠
421984谷川浩司
411983谷川浩司
401982加藤一二三
391981中原 誠
381980中原 誠
371979中原 誠
361978中原 誠
351976中原 誠
341975中原 誠
331974中原 誠
321973中原 誠
311972中原 誠
301971大山康晴
291970大山康晴
281969大山康晴
271968大山康晴
261967大山康晴
251966大山康晴
241965大山康晴
231964大山康晴
221963大山康晴
211962大山康晴
201961大山康晴
191960大山康晴
181959大山康晴
171958升田幸三
161957升田幸三
151956大山康晴
141955大山康晴
131954大山康晴
121953大山康晴
111952大山康晴
101951木村義雄
91950木村義雄
81949木村義雄
71948塚田正夫
61947塚田正夫
5 木村義雄
4 木村義雄
31942木村義雄
21940木村義雄
11935~37木村義雄

70期を数えるにも関わらず、 名人には以下の著者を含む12人しかなり得ていないことが分かります。

  • 木村義雄
  • 塚田正夫
  • 大山康晴
  • 升田幸三
  • 中原 誠
  • 加藤一二三
  • 谷川浩司
  • 米長邦雄
  • 羽生善治
  • 佐藤康光
  • 丸山忠久
  • 森内俊之

そして驚くべきは著者は著者以外の11人全員と対局をしているのです。 将棋名人血風録 とは言って見れば著者の手になる書籍にのみ許されるタイトルであるでしょう。 これ等、名人全ての人となりを鎬を削ったライバルとして著している書籍となるのです。

果たして最強の名人は誰なのか? 対戦相手として最も恐るべき相手は誰なのか? 愛すべき人柄、愛すべき癖、エピソード、などなど、 互いに勝負師として名人位を争い切磋琢磨しあった 間柄同士だからこそと言える話題で満載です。

将棋ファンには残念かも知れませんが 途中棋譜などはほとんど出て来ません。 名人を人間として見た時の実に人間臭い話題を中心とするものです。 だからこそこの書籍は将棋の門外漢にも楽しめるものとなっているのです。 名人位と言う400年の歴史を持つ棋士最高の位に付いた 謂わば聖人君子のような人々の中に血肉の通ったドラマを見せてくれます。

書籍からは将棋界に於ける名人と言うものの特別な雰囲気も伝わって来ますし、 圧巻は著者が長年の夢であった名人位を遂に獲得した瞬間でしょう。

そして1940年、昭和15年正月1日と言う芽出度い誕生日を持つ著者は 満72歳となる今も歴代最高通算勝利数を積み重ねながらライバル達と鎬を削っています。

追記 (2017年10月13日)
各メディアが挙って報道しましたから大方周知でしょう、 残念ながら加藤一二三さんは77歳を以て引退と相成りました。 公益社団法人 日本将棋連盟 のサイトには最も確実な情報として公式ニュースに当該記事[※1] が載せられています。 以下に引用します。

現役最年長棋士の加藤一二三九段(77歳)は6月20日、第30期竜王戦ランキング戦6組昇級者決定戦(対 髙野智史四段戦)で負け、現役引退となりました。
加藤九段は第75期順位戦C級2組で降級点が3回となりフリークラスへの降級が決定していました。C級2組で降級点を3回とったフリークラス棋士の定年は60歳のため、加藤九段は2016年度の出場していた残りの棋戦の最終対局日をもって引退となっていました。

引退会見の全文が掲載されたページも用意されていますが[※2] さて果たして其の引退理由は如何なるものでしょうか。 日本将棋連盟の情報はなかなか門外漢には理解し難い内容なのですが 此れを分かり易く解説してくれている情報ページはネットを繰れば多く見つかります。[※3・4] 芸能人などでは自ら宣言しなければ引退には至りません。 スポーツ選手などでは引退を避けたい意向があっても契約がなされなければ余儀なくされます。 此れ等を閲して今回知られたのは棋士に於いては引退は成績次第と言う、 こと、引退に限って言えば芸能人、スポーツ選手より厳しいものと言って良い条件です。 成績を規定通り上げられなければ、数値を満たせなければ、即引退、と言う訳です。

処で ひふみん と愛称される加藤一二三さんの引退にはプロ棋士生活の終わりには違いないのですが 終わりと言う言葉に連想される暗さや哀しさは微塵も伺えず天衣無縫に輝く様子さえも伺えます。 此れは偏に加藤一二三さんの持って生まれた明るい個性の為せる技でしょう。 其れ故テレビ番組にも引っ張りだこで多忙の余り4kgの健康痩せが齎された[※5] のだそうです。 公式戦最多連勝記録を29に塗り替え一大将棋ブームを巻き起こした 藤井聡太四段(2017年10月現在)の影響も勿論あるでしょうが、 フランクで気取らない解説は必然的に万人受けすれば番組制作側から引く手数多なのも当然でしょう、 番組カテゴリーは将棋に無関係のバラエティーさえからもオファーがあり 日本テレビの しゃべくり007 ではお得意の爆笑カラオケも交え高視聴率を叩き出したのだとか[※6]、 先月2017年9月には引退後初の著書 ひふみんの将棋入門 も上梓されました。 引退しても尚乗りに乗ってる ひふみん は将棋愛好家にさえ留まらずまだまだ極上のエンターテイナーとして吾人を楽しませてくれそうです。

参考URL(※)
  1. 加藤一二三九段、引退(日本将棋連盟:2017年6月21日)
  2. 加藤一二三九段が引退会見「名局の数々を指してきました」63年の棋士人生に悔いなし(全文)(HuffPost:2017年6月30日)
  3. 加藤一二三が引退決定の理由!なぜひふみんは辞める必要があるの?(グーチョキパン店
  4. 加藤一二三ひふみん引退はなぜ?プロ棋士の引退の規定は?(なないろDiary:2017年6月25日〜2017年8月21日)
  5. ひふみん、引退後テレビに引っ張りだこで4キロやせた(ORICON NEWS:2017年10月3日)
  6. 77歳・ひふみん出演の「しゃべくり007」視聴率12・5%(スポーツ報知:2017年7月25日)
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