金環日食の裸眼観察者約700人が顕在化、内約80名が目に異常

以て他山の石となすべきでしょう。 かたむき通信にもお伝えした世紀の天体ショー 金環日食[K1] は凡そ魅力的なエンターテインメントではあれ、 その観察の際には注意を払わねばなりませんでした。

かたむき通信に伝えた際にはその観察上の注意点を国立天文台から得た情報として 避けるべき観察方法を以下の様に列挙しました。

  • 肉眼で直接太陽を見る(数秒でも危険です)
  • 望遠鏡や双眼鏡を使う
  • 色つき下敷きやCDを使う
  • フィルムの切れ端を使う
  • すすを付けたガラス板を使う
  • サングラスやゴーグルを使う
  • 日食グラスを使って望遠鏡や双眼鏡を覗く

この内、最も忌むべき手法は矢張り最も簡便なる肉眼での直接観察で、 この方法を取った方が凡そ多かったようで、 その具体的な数値も今回 毎日新聞[※1] 及びMSN産経ニュース[※2] に報道されました。

両者ともにソースは同源で 日本眼科学会 のまとめを2012年8月25日の横浜市のシンポジウムで、 静岡県浜松市は聖隷浜松病院の尾花明眼科部長が発表したものです。

まとめでは金環日食後の6月末までに目の異常を訴えた受診者は958人と、 1,000人に届かんばかりのかなりを人数を数えています。 この内に肉眼での観測を吐露した方は7割にも及ぶそうで、 些か吃驚させられる数字は金環日食の情報ばかりが先走り、 観測上の注意は追い付いていなかった状態が危惧されます。 孰れ残りの3割の方も上記の問題ある観測手法を取ったことが推測されます。

また驚くことに受診者の平均年齢は43.5歳とかなり高齢で、 12歳以下は69人で全体の1割にも満たず、 少々子供のお手本とはなれない大人が多かったようです。 若しかしたら子供達は観測上の注意が学校でなされていたのかも知れません。 そう考えれば大人も事態を軽く考えた無謀も併せ無知が招いた結果と言えるでしょう。 なお、受診者の年齢層は2歳から92歳と何と90年の巾を有し、 図らずも国民的行事であったのが窺い知れる結果を示しています。

男女比は此方も少々驚きの男性288人、女性670人と 女性は男性のダブルスコア以上を記録しており、 女性が無謀を図る筈もないでしょうから矢張り観測手法が行き渡っていなかったのが問題となるでしょう。 この数字から見て絶対観測者数も女性の方が多かった蓋然性が高く、 女性の方がロマンチストであったと言えるでしょうか。

都道府県別では最多は愛知県の172人、後は東京都107人、茨城県97人、栃木県70人が続き 関東勢が多い中に愛知県が吐かなくてもいい気を吐いてしまった結果となりました。 このデータは対人口比で見ていけば更に興味深い結果が得られるでしょうし、 天体観測のみならず学校指導に於けるデータともなり得るでしょう。 特に愛知県に於いては次回の折には事象に対する注意点の周知徹底が必要となるようです。

受診者も9割は数日内に異常は感じなくなったそうで、 中に網膜の異常などを確認できたのは80人とされていますが、 深刻な障害が残りはしなかったのは先ず先ず不幸中の幸いでした。

尾花明聖隷病院眼科部長は 眼底異常と症状継続の人について日食網膜症になった可能性を言及し、 なお追跡調査をされているそうです。 金環日食に於ける裸眼観測が如何に危険な行為かを記録として残しおいて欲しく思います。

今回の目の障害は天文現象及びその観測の際に惹き起こされた障害としては 異例の多さでもあったそうで、 これも世紀の天体ショー、宇宙の幽玄さを直接味わえる稀有な機会として 金環日食の並外れた魅力を物語るものかも知れません。 しかしこの後に類似の機会の折には他山の石としなければならないのも確かで 其の為にも今回の事象を詳細に記録に残し於くのは必須となります。

かたむき通信参照記事(K)
  1. 5月21日国を挙げての大イベント金環日食~国立天文台HPが分かり易く説明(2012年5月19日)
参考URL(※)
  1. 金環日食:眼科を受診した人1000人に…眼科学会まとめ(毎日jp:2012年8月25日:2019年5月5日現在記事削除確認)
  2. 金環日食で1000人が眼科を受診 80人は目に異常(MSN産経ニュース:2019年5月5日現在webサイト閉鎖確認)
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