哀れNOTTV大失敗~4ヶ月経過して契約数は目標の1/3以下

地デジ化に因り空いた電波周波数帯にNTTドコモ肝煎りの新チャンネルとして、 それも自ら望んで参入した訳ではなく iPhoneに無理矢理押し遣られた土俵であるスマートフォン向けに日本初を謳った放送局と言う歪な形で、 鳴り物入りで登場させたのはNTTドコモグループの株式会社mmbiが運営する NOTTV[※1・追4] でした。 大企業の大資本を以て充分準備にもコンテンツにも資金を掛け、 易々と手に入れた電波で一稼ぎしようと目論んだのでしたが、 そうは問屋が卸さないようです。

mmbi代表が2011年末にインタビューを受けているのですが、 其の時の受け答えに当初目論みは開局後1年間で100万人と明言[※2] されています。 この開局以前のインタビューで奇しくも代表が自ら懸念した 開局したはいいが契約者がいないという事態 という最も避けたい状況が招かれてしまったようです。 これは代表が薄々感じていた個人的な不安を インタビューの際にうっかり溢してしまったのではないかという程のリアリティがあるのもでした。 実際この後、歳の明けても世評は実に厳しいもの[※1] だったのです。

今年2012年4月1日に華々しく開局されたNOTTVはそれより4ヶ月を経る頃の7月30日に、 サイトにリリースをひっそりと掲載しました。 御礼10万契約突破!! と2つも配したビックリマークも勇ましいそれはタイトル通り 契約者数が10万を突破したのを知らせるもの[※3] でした。 即ち4ヶ月経過時点で10万契約と言う勘定です。 すると1年経過した時点を単純計算すれば30万人となる勘定で、 これは目論みの100万契約には全く足りない、3分の1にも達しない数字です。 有料放送の契約数は即ち売上ですから、 売上の70%下方修正となればこれを失敗と謂わずして何を失敗と言うでしょうか。

mmbiへの出資はドコモだけではなく民放も加担していますので ドコモのみが責任を負うものでもありません。 先ずはネットにどう接していいか分からない民放を上手くスケープゴートに取り込むのに成功した訳です。 従ってドコモを責めるのもなりませんが、 携帯トップキャリアとして優良な収益性を誇る同社のユーザーは果たして何を思うでしょうか。

ドコモの技術力が疑われる失態が頃日相次ぎます。 2011年6月から2012年2月に掛け発生した事故は重大なものだけでも5件に及び、 その再発防止策や今後の取り組みのまとめを総務省へ報告[※4] してもいました。 その舌の根も乾かぬ内にspモード、 即ちNOTTVにも絡むスマートフォンに関して重大な失態[※5] を犯しました。 何と間髪入れず次は通信障害2件[※6・7] です。 ドコモの障害は話題にもなりません、最早当たり前になりつつあるからです。 これをユーザーはどう思うでしょうか。

ドコモは出来得るならばインフラ、土管屋として専念は出来ないものでしょうか。 何故様々な商売に色気を出すのでしょうか。 利用客は水道局に清涼飲料水を売って欲しいとは恐らく思っていないのです。 今回はスマフォ放送局でしたが、頃日ネットショップへ食指を伸ばす姿勢をも見せています。 ドコモがAmazonを目指すその姿勢にユーザーは何を思う[K1・2] でしょうか。

NTT DoCoMo Booth
NTT DoCoMo Booth photo credit by David Poon

NOTTVに於けるコンテンツ揃えも絶大な人気を誇るAKB48を出しておけば それで総て上手く行くと言ったような安易な印象を受けます。 恐らくスマートフォン放送局と言うからにはそれなりのノウハウが必要なのでしょう。 それは既存のテレビ放送局ではなくニコニコ動画などにあるのです。 しかしそれでも恐らく向後も人気俳優や芸人に頼る 即ち金に飽かせたコンテンツを配信する方針以外取れないままなのでしょう。

さてNOTTVの巻き返しはあるのでしょうか。 残り8ヶ月で90万契約は獲得出来るのでしょうか。 代表がインタビュー記事[※2] に明言した2015年迄の600万人への引き上げはなるのでしょうか。 当面の目標とする1000万人は当面達成出来るのでしょうか。

追記 1(2012年10月27日)

NTTドコモの2013年3月期第2四半期決算説明会の開催を受け ドコモ800億円の下方修正はiPhone5の所為にあらず を配信しました。

追記 2(2013年7月5日)

Tizenのプロジェクトがキャンセルされた旨伝えられた同日にNTTドコモ社長のインタビューが知らず知らず悲哀を帯びます。 Tizenがチグハグ施策迷走ドコモの象徴となる断ち切れぬ負の連鎖 を配信しました。

追記 3(2015年6月29日)

本記事の配信より3年の月日を経ようとしている今もNOTTVを運営する株式会社mmbiへの批判は鳴り止まず 官報を受けて当該社の決算を抽出する記事[※8] 及び、電波の無駄遣いと断じる記事[※9] など配信される事態が招かれています。 NTTドコモ社の広く普及した携帯電話契約者数を基盤に新規契約や機種変更の際に 抱き合わせの如く無関係のNOTTVの契約を結ぶ手法は 情報社会にさして興味もなく詳しくもない層に取っては些か詐欺染みているとの悪評もネット界には珍しくなく見られます。 此の如き手法と取られても致し方なく思われる状況として其の後の契約者数の伸びを見れば明らかでしょう。 2013年6月3日に契約者数が100万人突破との公式リリース[※10] が配信されたのは目論見より2ヶ月遅れの目標達成を得るものではありました。 しかし当時代表氏の明言した当面の目標とする1000万人は愚か 2015年迄の600万人への引き上げも虚しく響く現在の契約者数は公式リリースに 2015年3月末現在の契約者数が約175万件とある[※11] のを見れば一般顧客からは否を突き付けられた以外の意は汲み取れません。 更には本追記冒頭の嵩む赤字は国民の大事な資産と言える電波帯を無駄遣いしていると断じられて致し方ないでしょう。 ドコモ社の キャッシュを燃やしているだけ と迄揶揄された経営[K3] は未だ已まぬようです。

追記 4(2019年6月10日)

予想通り、NOTTV放送事業は失敗し、2016年6月30日付けで放送を終了しました。 此の事業終了に因る停波はマルチメディア放送及び地上波デジタルテレビジョン放送の両者に於いて初の廃止と言う不名誉な記録ともなりました。 運営グループ企業のmmbiは同年7月1日にドコモが吸収合併した為に、 寡占通信事業者として得た潤沢な資金を今回も盛大に燃やした結果となりました。 事業停止の為、webサイトも現在では閲覧不能となっています。

使用写真
  1. NTT DoCoMo Booth( photo credit: David Poon via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. NTTドコモがタワーレコードを子会社化しEコマース事業進出を目論む(2012年6月11日)
  2. NTTドコモが通販事業本格進出で目指すアマゾンコムとの企業体質の比較(2012年7月13日)
  3. ドコモ800億円の下方修正はiPhone5の所為にあらず(2012年10月27日)
参考URL(※)
  1. もっとTVとNOTTV、似ているのは名前だけ?Acenumber Technical Issues:2012年4月6日)
  2. <インタビュー・時の人>mmbi 代表取締役社長 二木治成(BCNランキング:2011年12月28日)
  3. 御礼 10万契約突破!!(NOTTV:2012年7月30日)[追4]
  4. ドコモ、重大事故5件について再発防止策や対策を公表(ケータイWatch:2012年3月30日)
  5. NTTドコモがspモード障害の経過報告、「ソフト更新時にテーブルのデータが違う値に」(日経BP ITpro:2012年7月27日)
  6. ドコモ、一部ユーザーで通信障害(ケータイWatch:2012年8月2日)
  7. ドコモの国際ローミングで通信障害、現在は回復(ケータイWatch:2012年8月3日)
  8. 株式会社mmbi 決算公告(サイバーエージェント研究会:2015年6月25日)
  9. もはや電波の無駄遣い、NOTTVまたも大赤字(すまほん!!:2015年6月28日)
  10. 「NOTTV」契約者数が100万を突破(mmbiからのお知らせ:2013年6月3日)[追4]
  11. 2015年3月末現在の「NOTTV」契約者数について(mmbiからのお知らせ:2015年4月10日)[追4]
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