マイクロソフトSurface値付け199ドル予想に日本電機メーカー蚊帳の外

何とも意欲的な値付けがなされそうです。 マイクロソフト主催のカンファレンスの出席者からの情報提供では 同社の波紋を呼ぶタブレット端末 Surface のWindows RT版の値段が199ドルだと言われている[※1] のです。 これはかなり意欲的な価格設定と伝えられた[K1] Googleの Nexus 7 と全く同じ価格です。 Googleとの関係を思えばマイクロソフトは敢えて この激戦が予想されるタブレット市場で 真っ向からぶつける可能性も高い筈です。

Googleの価格設定が意欲的とされたのは 敢えてアップル社のiPadを高級機に祭り上げてしまって 普及価格帯でシェアを握ってしまおうというもので、 これは米国ではアマゾン社のKindle Fireが先駆けて取った戦法で大きな成功もしています。 このKindleがFireか否かな判明してはいませんが 世界で最も売れている電子書籍リーダー と鳴り物入りで近日日本に上陸が予告されており[K2] 激しい商戦が日本にも展開されるものと思われます。 マイクロソフトは敢えてこのド真ん中に新端末を投下することになる訳で 三つ巴の争いは必須です。

更にはタブレット市場を切り開いたアップル社は現時点で一人勝ちの状況ですが、 一度開いたパンドラの匣は元に戻しようがなく、 只に高級機としてiPadが留まる施策を取るならば 嘗てのパソコン市場に於いてMacが踏んだ轍を繰り返す可能性無きにしもあらず、 普及機帯に向け iPad mini なる商品を用意されているとも噂されています。

タブレット市場は今や最重要視されているマーケットです。 なんとなればノートパソコンやライトPCの市場を代替するのではないかとされる タブレット市場に出遅れてはIT業界で覇を競う者達に取っては命取りになり兼ねないからです。 であればこそマイクロソフト社も形振り構わぬ姿勢が垣間見えるのです。

IBMのPC/AT互換機にOSを供給して基本ソフトウェア市場を制覇したマイクロソフト社は ソフトウェアにコアコンピタンスを置くソフトウェア企業でした。 紆余曲折は有ったものの其れでこそ表面上はハードウェアメーカーと蜜月関係を保ち IT業界の覇者たれていたのでした。

確かにゲーム機に於いてや[K3] マウスやキーボードなど周辺機器に於いてはハードウェアを提供して来ました。 しかしことPC本体はマイクロソフト社は製品を世に送り出してはいませんでした。 飽く迄ハードウェアメーカーの良き相棒として ハードウェアに搭載するOSを提供するに留まっていたのです。 この不文律にも見えた状況をマイクロソフトは自らかなぐり捨てて 今、自社製のハードウェア端末を世に問おうとしているのです。 かたむき通信の本記事に形振り構わぬと、 過去記事にマイクロソフト社の賭け[K4] とする所以です。

この状況にPC時代に好い関係を築いたハードウェアメーカーからは既に懸念の声が多く上がっています。 台湾メーカーなどがその中核をなすようです。 しかし残念なことに日本国内の電機メーカーからはその声すら上がって来るのを聞けません。 日本電機メーカーは主要なテレビ事業の失墜で青息吐息の状態でそれ処ではないのかも知れませんが、 これからの重要な市場をなすと思われる分野に於いてこの為体は正に憂慮すべき事態です。 苦境が伝わる内の一社、NEC社などはその株価は2012年8月19日現在も100円近辺を烏鷺着いた儘です。 その苦境を救う先鞭を告げるかに思われた同社のUltrabook分野の於ける意欲作 LaVie Z もこのままではその効果は半減してしまうものでしょう。

このNECは嘗て国内PC市場を寡占したガリバー企業であったのを思えば隔世の感が有ります。 このNECにはマイクロソフト社のビル・ゲイツ御大自ら営業に尽力したとも聞き及びます。 それがタブレット市場を見てみれば何ら日本電機メーカーは影響力を持てていません。 もっと言えば日本電機メーカーの存在はなくても構わないものとすらなっています。

タブレット市場は日本電機メーカーに厳しい決断を迫るものです。 思えばiPadの登場から数年、日本勢は何ら思わしい手を打てていなかったのでした。 その間、エコポイントに沸いたテレビ市場の反動に今は喘いでもいるのです。 今回のマイクロソフトSurfaceの値付け199ドルは 正しく鋭い刃を喉元に突きつけられたようなものです。 タブレットという分野は分水嶺として日本電機メーカーの今後を決める気がします。

追記 (2012年10月26日)
Windows8及びSurfaceの発売開始を受け Windows8が全世界でSurfaceが8ヶ国で本日発売 を配信しました。

追記 (2013年2月25日)
Windows8の発売よりちょうど4箇月して漸くSurfaceの日本発売の話題が上って来たのを受け Surface RT日本発売秒読み開始 を配信しました。

追記 (2018年7月12日)
嘗て、Microsoft社は据え置きゲーム機に於いても後発として参入しながらなかなか結果を出せず、 任天堂社やソニー社の後塵を拝するばかりでしたが、 圧倒的な企業体力を以て土俵際での驚異的な粘り腰を発揮し、 今や一定のファン層を獲得[K3] してビジネスとして成り立たせています。 本記事に初登場を紹介した Surface についても同様の粘り腰と言えるでしょう、 当初本命と見られた RT については明々白々な失敗を被りながらも、 僅かに光明の見られた Pro に傾注して、 艦これ と略称されるAdobe Flash対応のWebブラウザゲーム 艦隊これくしょん[※2] のヒットと言う追い風[※3] などもあり、遂には或る程度の市場を獲得し、 新製品が期待される迄にマーケットを至らせたのには、 Microsoft社の底力を感じさせられます。 またタブレットに特化したRTが受け入れられずOS的にオーバースペックと思われたProが主役の座を担うとは、 当のMicrosoft社も想定外だとは思いますが、 蓋を開けてみればエクセルやワードなどWindowsと同じソフトが走り、 更には上に挙げたWindows環境と同じブラウザが搭載され、 ライバルと目されるApple社がタブレットに特化した iPad ではFlash機能は基本的に拒絶される設計ですから、 デスクトップOSのWindowsとの同期こそライバルからの差別化となったのでした。

そんなSurfaceシリーズに新機種の登場が頃日、噂されていましたが、 昨日、漸く実機が登場し、 多くのネットメディアに取り上げられる処[※4・5・6・7] となっています。 新機種名は最近各所に目にする Go を伴うのは時代の波に乗らんとするMicrosoft社の野心を示すものでしょうか、 Surface Go と命名されています。 スペックの詳細は既に発表会で実機を手にして見て報じる処の各ネットメディアに譲りますが、 主要な処は以下に列挙して置きましょう。

  • CPU:インテル Pentium Gold 4415Y
  • メモリ・ストレージ:4GB/eMMC 64GB 若しくは 8GB/SSD 128GB
  • 重量:約521g
  • バッテリ駆動時間:約9時間
  • 外付け専用キーボード:Surface Goタイプカバー(新製品)

平野拓也 日本マイクロソフト社々長は、 発表会があるのは日本だけ と、日本市場を重要視している姿勢に言及[※8・9] しています。 加えてSurface新機種で去年、2017年の1.5倍の売上げを目指す、と鼻息も荒い様子ですが、 昇り調子のSurfaceシリーズへの同社の期待が現れてもいるでしょう。

処で気になる値段は発表以前、米国で399ドルの値付けが発表[※10] されれば、2018年7月現在、日本円にして約44,800円辺りが設定されるのではないか、と見られ、 格安に感じられ、価格破壊とも主張する程の予想が立てられていました。 しかし実際には一般向けモデルに於いての参考価格が4GBRAM/64GBモデルが税別6万4800円、 8GBRAM/128GBモデルが税別8万2800円と、 些か各メディアに落胆の色が伺えるのはまるで本記事の登場前の199ドル予想が裏切られたかの様子が伺えた Surface初期モデル登場時の焼き直しであるかの様でもあるのが面白く感じられます。 初期モデルに於いては199ドルの予想も其の際の日本での実際の販売価格は2013年2月25日の本ブログ記事[K6] に2013年3月1日、追記した様に 32GBモデルが4万9,800円、64GBモデルが5万7,800円でした。 此れに関しては日本市場の特殊性を鑑みた上で標準搭載した Microsoft Office の値段分が上乗せされている[※11] との発表会での質疑応答がありました。 Microsoft社の思惑に反して此の設定には、 何故日本市場だけ割高な対価を支払わねばならぬのかと、落胆の声[※12] も多く上がっている様です。 此の如きネガティブなネット及び市場の反応を市場に放たれた Surface Go は見事跳ね返して、 Microsoft社の思惑通り前年比5割増しの売り上げを果たして達成してみせられるでしょうか。

かたむき通信参照記事(K)
  1. GoogleがNexus 7を意欲的な価格設定で投入しタブレット市場は愈々激戦区に(2012年6月28日)
  2. Kindle(キンドル)~アマゾンの電子書籍リーダー日本上陸予告(2012年6月26日)
  3. マイクロソフトXbox SmartGlassの狙いはiOS AirPlayに見るアップルエコシステムでは?(2012年6月5日)
  4. マイクロソフトの賭けSurfaceがWindows8と同時10月26日発売決定(2012年7月30日)
  5. 株価初の100円割れNEC危機的評価~LaVie Zは復活の尖兵となり得るか(2012年7月21日)
  6. Surface RT日本発売秒読み開始(2013年2月25日)
参考URL(※)
  1. マイクロソフト Surface タブレット、Windows RT 版は199ドル・10月26日発売?(engadget日本版:2012年8月19日)
  2. 艦隊これくしょん-艦これ-(DMM GAMES公式ページ)
  3. 第5回 Surface Proで「艦これ」がはかどるぞ(ITmedia PC USER:2013年08月22日)
  4. わずか400ドル「Surface Go」の価格破壊、これはiPad Proキラーだ —— ユーザー目線で仕様を徹底比較(BUSINESS INSIDER JAPAN:2018年7月10日)
  5. 速報:Surface Go日本版発表。一般向けは6万4800円から、8月28日発売( Engadget 日本版:2018年7月11日)
  6. 10型2in1「Surface Go」、国内は7月12日予約、8月28日発売(PC Watch:2018年7月11日)
  7. 米マイクロソフト、新しいタブレット型PCを発表 iPadに対抗(CNN:2018年7月12日)
  8. MS、10インチの「Surface Go」日本でも8月28日より発売--一般向けは6万4800円から(CNET Japan:2018年7月11日)
  9. Surface Goの追加で国内のシリーズ売上を1.5倍にする、と日本マイクロソフト平野社長( PC Watch:2018年7月11日)
  10. Microsoft、10型で399ドルの「Surface Go」。日本でも近日発売。(PC Watch:2018年7月9日)
  11. 「Surface Go」日本で8月28日発売 6万4800円から LTEモデルは年内(ITmedia NEWS:2018年7月11日)
  12. MS「Surface Go」日本だけ高く(ASCII:2018年7月11日)
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