さかなクン再発見のクニマスが変える野生絶滅の意味

テレビ東京の人気番組TVチャンピオンで世に出た さかなクン は今や東京海洋大学客員准教授である処か、 世紀の大発見の当事者となったのは一昨年の2010年ですから記憶に新しくあります。 国鱒クニマス の再発見です。

クニマス は秋田県の田沢湖の固有種とされ、 ダム建設などにより1940年に絶滅、 70年間その生存が確認されることは有りませんでした。 ところが遠く離れた富士五湖の一つ西湖に2010年、 さかなクンが見出した種こそクニマスであったのです。

さかなクンは京都大学 中坊徹次 教授の依頼でクニマスのイラストを起こす参考にと西湖から近縁種のヒメマスを取り寄せた際、 この驚愕の事実に気付き中坊教授に連絡、教授の研究グループが科学的に分析した結果クニマスと断定、 マスコミに大きく取り上げられるものとなったのでした。 この大事件には天皇陛下の玉言まで賜る結果ともなりました。 そして山梨県水産技術センターにより今年2012年人工繁殖される処ともなっています。

今となってみれば1935年に人工孵化の研究のため日本各地に クニマスを送った事実が残されており、 また西湖地元ではヒメマスの変種の クロマス としてしばしばヒメマスに混じり捕獲されお馴染みの種でもあったと言います。 発見とは誰もが見ているものの中にあるものなのかも知れません。

この再発見から凡そ2年を経たこの度、 このクニマスが今回環境省がそのレッドリストに於ける分類で 従来絶滅種であったものを野生絶滅種に見直す方針[※1] が伝えられました。 クニマスは長年に渡り捕獲例が無かったため、 環境省が1991年に絶滅種に指定していたのです。

かたむき通信には環境省のレッドリストに関して 以下の如く扱ってきました。

此処にクニマスもトキと同じく望ましい方向で 環境省レッドリストが見直される模様であるのが伝えられたのです。

なお分類に於いては自然は固より人間様の事情に合わせてくれる訳ではありませんから、 実際に合わせて分類を調整して行く必要があります。 クニマスは確かに西湖で逞しく野生として生き延びて来たのでしたが、 環境省はこれを絶滅危惧Ⅰ類ではなく野生絶滅に分類する方針であると伝えられます。 従来野生絶滅種とは飼育・栽培下のみにて存続する野生では見られない種が指定されて来ました。 しかしこれからは本来の生息地以外に移され野生化しているのが再発見された種も含めるように、 クニマスに於いて改められることとなるそうです。

追記1(2013年2月3日)

環境省が絶滅のおそれのある野生生物の種のリストであるレッドリストの第4次版に於いて汽水及び淡水魚類の取りまとめを公表したのを受け ニホンウナギとクニマスの方向逆転と気になるドジョウ~環境省第4次レッドリスト汽水・淡水魚類取りまとめ公表 を配信しました。

追記2(2020年8月2日)

本日2020年二度目の土用丑の日に、環境省とIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストの相違と、 食文化と種の保存について2012年9月13日の記事 絶滅危惧種とは~食文化と種の保存 に追記しました。

参考URL(※)
  1. クニマス、絶滅指定から「野生絶滅」に 環境省(日本経済新聞:2012年9月23日)
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