フランスに広まる弁当~曲げわっぱ弁当箱も人気

古くは印象派に影響を与えた浮世絵から、 現代では消せるボールペン フリクションボール[K1] の人気が爆発したようにフランスでは時折日本の文化、文物が大いに受け入れられるようです。 そしてまた一つ、 日本のお弁当文化がフランスで盛り上がりを見せていると言うのです。 それはBentoなる言葉がフランス語辞書に今年より掲載される程であると言います。

弁当文化の広まる切っ掛けとなったのは漫画であると言います。 正しく漫画も広くフランスに受け入れられている日本文化でした。 漫画の中のキャラクターたちが美味しそうにお弁当を頬張っているのを見て 羨ましく思った人達からこの文化は広まったとされています。

フランスには従来お弁当文化は見られないもので 昼食は外食に出掛けたり、持ち運ぶにはサンドイッチなどで済ませられ、 それもお店で購入するのが普通でした。 その中に蓋を開ければご飯とおかずが彩り良く整ったお弁当を 書き込む漫画の主人公がそれこそ頬っぺたにお弁当をつけている様は 珍しくもありながら大いに食欲をそそるものでもあったでしょう。

加えて日本料理への関心が高まっているのも、 お弁当文化の普及に一役買っているようです。 お寿司やお刺身、天麩羅に醤油など日本食の味そのものも受け入れられているようですが、 日本食は総じてヘルシーであると言う認識が後押しをしているようです。 更にはお弁当箱を持参する方には高級割烹ならぬ お弁当の定番、タコウインナまでおかずとして揃えられ、 可愛い調理法も大人気となっています。

これらがフランスに普及するのに貢献しているのがインターネットです。 今や情報は通い極東の地のものでさえ手軽に入手可能です。 情報さえ得られれば続く現物入手もネットショップと言う形態が実現してくれます。 その代表的なのサイトがフランスでお弁当箱を扱っている CASA BENTO (2019年11月14日現在ドメイン停止確認)でした。

このショップでは様々な材質や柄のお弁当箱を日本から輸入して フランス国内でネット販売しています。 日本でも良く見られるプラスチックや金属ばかりでなく 中には 曲げわっぱ も品揃えせられるのは、日本以上に日本的でもあるでしょう。 日本の職人の拘りの手作りで仕上げられた杉や檜の材の弁当箱は フランス人にとってとてもユニークでクールなもののようです。

実際、木と漆で作られたお弁当箱は味も段違いなのでした。 木は適度に水分を吸ってくれて食べる時にべちゃべちゃにならないし 従って炊いたご飯も傷みにくく、しかも持ち運ぶには軽量なのです。 そして塗られた漆の清清しい殺菌効果も悪いものである筈がありません。

曲げわっぱお弁当箱を拵えるの素材は薄い板状に成型された杉や檜などの木材で これを一昼夜水に浸し丸く曲げる直前に熱湯で1時間ほど煮て柔らかくします。 柔らかくなった板材をコロと呼ぶ型に合わせて曲げて行きます。 曲げて重ねる合わせの部分は段々先細りになるように成型されているようで 全体として均一の厚さが保たれるように削られているのは日本の職人の拘りでしょうか。

そしてこの合わせた部分を接合するのがどうやら職人の秘伝の技のようで 様々な方法が漏れ伝えられます。 桜や樺のを薄く削り出したものを糸宜しく平たい針で縫うのは最も伝統的で古い手法でしょうが、 この木の糸が切れてしまうと接合が崩れてしまいます。 昔のように身近に直してくれる職人さんもいませんから 今では此処は化学的な接着剤が用いられているようですが、 秘伝の自然な接着剤を用いる職人さんも居るようです。 たとえばギターのネックに於いては指板を接着するのには膠を用いますが、 これは動物性蛋白質ですので高温や湿気には弱く溶けてしまいますので お弁当箱には不適切なようです。 今では接合部の桜や樺などの縫い目はデザイン的な要素ともなっているようです。

小判型のお弁当箱への成型がなったら今度は耐久性を高めるための漆塗りです。 塗っては乾燥させてを繰り返すこと幾回か、 こうして木材の柾目も美しい小判型の曲げわっぱお弁当箱が出来上がるのでした。 一つの弁当箱が出来るまでに掛かる時間は従って約2週間ほどとなるのです。

こんな如何にも日本らしいお弁当箱が遠いフランス料理のお膝元で大評判なのは ちょっと不思議な感じがしますね。 ネットショップなどの活躍に依ってフランスの人々に渡ったお弁当箱には サンドイッチやビスケット、フルーツなども入れられるのはフランスならではで 拵えた日本の職人さんも吃驚です。 それでも漆の光沢も鮮やかな中に浮き上がる美しい杉や檜の柾目は 洋の東西問わずフランス人の心も捉えて離さないようです。

かたむき通信参照記事(K)
  1. 消せるボールペン フリクションボールは過去の失敗を踏まえたPILOTの大ヒット商品(2012年7月10日)
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