ホンダの超小型車への本気

掛け声は勇ましかったのですがなかなか具体的な姿を現して来なかったのが かたむき通信にも幾度か扱った超小型車の話題です。 最初に超小型車を取り扱ったのが今年2012年の5月[K1] でしたが以来、政府、国土交通省など行政機関が旗を振れども 其処は具体化するのに政治的にも経済的にも技術的にも数々の問題があるのでしょう、 現在超小型車と目され市販されているのはトヨタ車体のCOMSにとどまります[K2] し、それさえも法的には超小型車ではなくミニカーの扱いで[K3] 法制化ももう一つ踏み込まれない感があります。

しかし具体的な製品が登場するとグッと現実感が高まってくるものです。 今回そう思わせてくれたのが 本田技研工業株式会社マイクロコミュータープロトタイプ であり、同社からはプレスリリース[※1] が配信されています。 以下に気になる画像を引用します。

Variable Design Platform(本田技研工業株式会社プレスリリース)

此の図にも見えるように Variable Design Platform なるシステムが採用されているのが目新しい処でしょうか。 これがプロトタイプの設計コンセプトなのだと同リリースは説明しています。 このシステムに依って同一車体を様々な形態に変更可能で 宅配、子育て支援、カーシェアリング、通勤、高齢者仕様、公用 といったさまざまな用途での利用が可能となり、 従って来年2013年に検証するに便宜が図られるものとなっています。 恐らくは検証に止まらず市販の際にはコストダウンのためにも このシステムは活かされるような気がし、 現段階で上手い仕組みを考案したものだと思わされます。

ホンダではマイクロコミューターのコンセプトモデルを 2011年の東京モーターショーで公開しており、 2012年6月18日に東京霞が関の国土交通省駐車場を用いた試乗会が催された際にも登場していましたが、 其処では未だ走行不能な状態[K4] でした。 これが此処に来て進化しての登場と相成った訳です。

各法規に準拠する予定で決定では有りませんが、 プロトタイプ主要諸元としては現時点では以下のように発表されています。

  • サイズ(全長×全幅×全高):2,500 × 1,250 × 1,445(mm)
  • 最高速度:80km/h
  • 最大航続走行距離:60km程度
  • 充電時間:3時間未満
  • バッテリー:リチウムイオン
  • 最高出力:15kW

緒言にもある通り超小型車としては定番の電力で走行する Electric Vehicle、EVで、この蓄電装置を家庭用蓄電池としても機能させる Honda Smart Home System なるシステムへの利用も検証されるとされています。 充電に於いてはルーフに設けた太陽電池の利用の検証もされるそうで 走行補助の動力源となるのは勿論、 災害時などにはきっと強い味方となってくれるのではないでしょうか。

そして最後に注目したいのが個人所有のiPadやAndroid、マイクロソフトのSurfaceなどの 所謂タブレット端末をメーター表示、ナビゲーション、オーディオ、バックモニターなどの機能に 応用する予定であるとされる部分です。 汎用性のあるタブレット端末の利用として好適なのではないでしょうか。 これならば同時にハードウェア的なインターフェース部分のコストを抑えられますし、 尚且つグレードアップにはソフトウェアをバージョンアップすれば好いと言う寸法です。

Variable Design Platformと言い、 Honda Smart Home Systemと言い、 タブレット端末の利用と言い、 かなり練り込まれた印象があり、 今回発表のマイクロコミュータープロトタイプは ホンダの超小型車への本気が覗えるようなプロトタイプと言えそうです。

追記(2019年12月10日)

超小型EVに関する対照的な国土交通省と経済産業省の姿勢について2012年11月24日の記事 超小型車認定制度の国交省案へのパブリックコメント募集に規格概要を見る に二官庁を情報源とすると思われる報道記事を受け追記した所ですが、 政府側の都合は如何あれ、メーカー側としては本カテゴリーに於いては倦まず弛まず開発は継続されている様子が、 本記事に紹介した本田技研のマイクロコミュータープロトタイプの情報を追い掛けるだけでも伺われます。

本記事配信後には2013年の6月4日[※2] 及び7月18日[※3] と相次ぐニュースリリースに熊本県、宮古島市、さいたま市の三地域との社会実験プロジェクトを実施する旨、発表しました。 此の時、プロジェクトに使用される超小型EVは マイクロコミュータープロトタイプ β と、機体名の末尾には開発が進んだのを明示すべく文字が添えられています。

そして超小型電気自動車 MC-βエム・シー・ベータ が発表されたのが2013年11月19日でした。 以降は此の簡略化された名称の超小型EV機体が主役となって社会実験プロジェクトは推進されて行きます。 以下、MC-βの主要諸元と、上に記したマイクロコミュータープロトタイプの比較表になります。

マイクロ
コミューター
プロトタイプ
MC-βエム・シー・ベータ
乗車定員-2名
サイズ
(全長×全幅×全高)
2,500 × 1,250 × 1,445(mm)2,495 × 1,280 × 1,545(mm)
最高速度80km/h70km/h程度
モーター出力最高出力15kW定格6kW/最大11kW
バッテリーリチウムイオンリチウムイオン
最大航続
走行距離
60km程度80km程度
充電時間3時間未満3時間以下(200V)
7時間以下(100V)

興味深いのは最高速度が引き下げられ、最大航続走行距離が伸びた項目でしょう。 開発は実用化を睨んで進められたのが分かります。 2014年になると此のMC-βを含む各社の超小型EVの試乗情報なども見られ 超小型車カテゴリーは電気自動車に限られる感さえ窺える様相を呈してきました。 ホンダの社会実験プロジェクトも、 2013年11月22日に熊本県、 2014年1月20日にさいたま市、 2014年1月28日に宮古島市と各地域で随時開始される運びとなりました。

しかし煮え切らない政治側の姿勢では何時迄も発売の目途は立つ筈もなく、 各営利一私企業が開発を継続するのは困難であろうのは容易に想像出来ます。 ホンダの三地域に於ける社会実験プロジェクト、実証実験も2016年3月を以て終了とされたのでした。

ただ、ホンダのWebサイトには未だ公式に MC-β のページが残されており、 何時でも実践投入可能である様子が伺え、頼もしくも期待を抱かされます。

かたむき通信参照記事(K)
  1. 超小型車~約半世紀振りに自動車に新車両区分検討開始2012年5月27日
  2. トヨタ車体から超小型車第1号コムス(COMS)発売、実質負担額59万8,000円から(2012年7月2日)
  3. 超小型車第1号と目されるコムスの現行の運用はミニカーに準拠(2012年9月3日)
  4. 新設超小型車の波紋~試乗可能車はトヨタがコムス、日産がニューモビリティコンセプトを用意(2012年6月23日)
参考URL(※)
  1. 超小型EV「マイクロコミュータープロトタイプ」を公開 ~2013年より「Variable Design Platform」を採用した車両で実証実験を開始~(本田技研工業株式会社:2012年11月13日)
  2. 超小型EV「マイクロコミュータープロトタイプβ」を使った社会実験に向け熊本県および宮古島市とMOUを締結(本田技研工業株式会社:2013年6月4日)
  3. 超小型EV「マイクロコミュータープロトタイプβ」を使った社会実験プロジェクトをさいたま市と共同で開始(本田技研工業株式会社:2013年7月18日)
  4. 日産、トヨタ、ホンダを乗り比べ! 新感覚「超小型モビリティ」の“今”をレポート(価格.comマガジン:2014年9月22日)
スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする