ハヤブサVS織田信長~オセロ最強プログラムほこ×たて対決

囲碁や将棋、チェスなどの情報が互いにオープンである完全情報ゲームで、 賽の目などのランダムな要素を介しない確定ゲームに於いては プレイヤーとしてのコンピュータの発達は目覚しく、 一手の分岐数の多寡から囲碁ではまだまだなものの チェスに於いては既に人間を凌駕し、 将棋に於いてもかなり人間に迫る強さを持った打ち手となりつつある 〔※1〕 のでした。

上記に挙げたゲームよりは一手の分岐の少ないオセロでも勿論、 人間に迫り上回るコンピュータプログラムの出現は必然で、 それは既にサービスとして一般に開放されてもいます。 人間は時間が空けば相手を探す労を被らずとも 直ちにオセロ対戦が可能となっています。

コンピュータが対戦するのは人間ばかりではありません。 高度に発達したプログラムを作り上げた人物であれば 我がプログラムが他のプログラムに比してどれ程のレベルにあるのか量りたくなるのが人情というもの、 そして他に抜きん出るものと信じるのも心血を注いで作り上げたものなれば当然のこと、 斯くて最強のオセロプログラムを主張し合う コンピュータプログラム同士の対決が出来するのでした。 この対決がお馴染みの人気テレビ番組 ほこ×たて の2013年2月17日放映分で実現したのです。

この日の放映では以下の対決が用意され 最強オセロプログラム対決はこれ等5番勝負のトリとして位置付けられました。

  • 絶対滑らず転ばない靴 VS 絶対に滑らせるスケートリンク
  • 絶対泣く女優 VS 絶対笑わせる芸人
  • 絶対に落とすコーティング剤 VS 絶対に落ちない塗料
  • 日本の45歳 VS アメリカ11歳(400m女子リレー対決)
  • 最強コンピュータ VS 最強コンピュータ

方や1969年生まれで現在東京都は港区、 BTD STUDIO株式会社 の技術部に所属するプログラマー氏の作り上げたオセロプログラムの名は ハヤブサ(HAYABUSA) 、独学でプログラミング技術を習得し、 携帯電話用のゲームを製作する傍ら生み出した このプログラムの強さの秘密はオンラインゲームにありました。 同社がオンラインに提供するオセロゲームには1日約5万人もの利用者があります。 その中から特に上級者のテクニックデータを収集してプログラムに反映してこそ 最善の一手を繰り出せるのでした。

方や1983年生まれと未だ20代、専門学校で勉強し現在は東京都新宿区、 株式会社ジー・モード で研究開発を担うプログラマー氏は 同社の提供するオンラインオセロゲーム あつまれ!!天才オセロ の開発者です。 このゲームは歴史上の人物が敵キャラクターとして登場する対戦型オセロゲームで 各キャラクターがユーザーに合わせて其々レベルを有する中にも 最強の最早勝たせない積もりで作ったと言うプログラムは神レベルと謳う 織田信長 です。 計算能力が高く、何万通りもある打ち筋から最善の一手を選択出来るオセロプログラムとして 挑戦するものを寄せ付けません。

両者の実力差を事前に測るためにオセロ自慢の番組スタッフがどちらとも100戦した処、 孰れも100敗と完敗を喫し、共に最高に取った石は8つと言う有様でした。 その内完封こそハヤブサでは17回、織田信長では完封26回、となったものの 此れでは些か実力差は計り兼ね此れだけでは拮抗するものとしか言い得ないでしょう。

対決のルールはたった1回勝負に決められ、 勿論取った石の多い方が勝者となります。 先手後手は両者の話し合いで決定することとされましたが、 囲碁に於いては確実に有利不利の見られるこの先行後攻問題は コミ として解決されるものですが、 オセロでは過去のデータから見て先手後手の差は見られないとのことだそうです。

先攻後攻の知見を齎してくれたのはこの対決の見届け人とも言える 解説を任されたオセロ世界選手権に3度優勝している 村上健 九段にて九段は現在日本に6人しかいないのだそうです。 決戦の地は将棋のタイトル戦も行われる格式を誇る 鶴巻温泉元湯陣屋 で行われました。

話し合いの結果、先手ハヤブサ、後手織田信長、に決定され、勝負は開始されました。 膨大なデータを武器とするハヤブサ対、高い計算能力を武器とする織田信長の対決が始まったのです。 プログラムの産みの親である両プログラマーは 己のプログラムの指し示す通りの手を粛々と実際の盤面上に打ち込みます。 この盤面を通して互いのプログラムに相手の手を示し、己の一手を求めるのです。

通常オセロでは角を取るのが有利とされるのは広く知られる処ではないでしょうか。 しかしもう一歩踏み込めば意外な定石があるのを村上九段が教示します。 序盤では数を取り過ぎないことが重要であり、常に相手より少なくなるように心掛けるのだそうで、 ちょっと素人には意外な感じのするものです。 石を多く取って相手の手を狭めるのは高等テクニックとなるのだそうです。

静かながらも息詰まる熱戦が続きます。 そして41手目、ハヤブサのプログラマー氏が不安げに 次は角を打たれてしまう…と呟きながら打った一手が 角から対角線に一つ入ったものでした。 しかしこの悪手にも見える一手を村上九段は手放しで褒めるのでした。 詰まりプログラマー氏もその最善手の分からないその一手をプログラム、ハヤブサは打ったのでした。

村上九段の解説する処に依れば ハヤブサは下の列を捨てて右上に黒しか打てない陣地を作り出した、と言うのです。 最早角を取るだけでは勝てないレベルであるのは明白な高次元の展開です。 白織田信長はジリジリと黒ハヤブサに誘導され押されている感じの盤面になって行きます。 驚くことに黒ハヤブサは左下角を取ったものの再び左上角を白に与えてしまいます。 しかし白織田信長は角を3つ押さえるも終盤でパスが頻発するのでした。 劣勢は明らかです。

そして遂に勝負は付きました。 35石対29石で黒ハヤブサの勝利です。 見事な熱戦を両者は繰り広げてくれました。

そして織田信長の名誉のためにも此の後エキジビジョンマッチで先手後手を入れ替え 行われた勝負の行方を記さねばならないでしょう。 33石VS31石で織田信長は勝利したのでした。 正しく両者拮抗するオセロ最強プログラムであった訳です。

今回の対決を見ればコンピュータプログラム同士の対決は 充分エンターテインメントとして成り立つような思いを持たされました。 勿論、上級者、今回は村上九段の解説あってこその面白さではありますが、 見る者に期待を抱かせる次の一手には人にもコンピュータにも差別はないのかも知れません。 いっそ根源的な対決劇を見る気さえ起させるものでした。 世のプログラマー氏には一層の研鑽を積み最強のゲームプログラムを創造、披露し、 人間同士の心理戦を伴うものとは又別の対決を以て見る者を楽しませて欲しいものです。

使用写真
  1. Sota won the Othello game.( photo credit: sota-k via Flickr cc
参考URL(※)
  1. 閃け!棋士に挑むコンピュータ~将棋界に舞い降りたアトム(はなまるチェック!:2011年8月25日)

追記 (2013年2月20日)
同日放映の5番勝負の内、第3番 絶対に落とすコーティング剤 VS 絶対に落ちない塗料 についても記事 コーティング剤ナノグラスコート対塗料染めQ~極小世界のほこ×たて対決 にして配信しました。

追記 (2013年9月27日)
ほこ×たての2013年9月22日放送分に於いて オセロ最強プログラム対決第2弾が実施されたのを受け ザ・オセロ対ハヤブサ~読み対大局観の勝負 を配信しました。

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