リンナイ炊飯器と釜炊き職人のほこ×たてご飯美味しさ対決

ガス器具と言えば思い出してしまうのが2006年に発覚した痛ましい パロマ の湯沸器死亡事故で、ガス器具のイメージ全般に与えるネガティブな影響もあった筈です。 それ以前にも安全性を謳う電気機器メーカー、電気会社の広報に押されて ガス器具が主流であったものから電気機器への置き換えが促進される状態にありましたが、 パロマの事故は其れに拍車を掛けてしまったものと思われます。 パロマの事業自体も縮退せざるを得ませんでしたが、 ガス器具業界はその状況に甘んじられはしないのは勿論でした。 業界首位、住宅設備業界にも良いポジションに喰い込む リンナイ株式会社 は挑戦を続けていました。 伸長の期待出来る海外市場を睨むのは当然ながら、国内市場にも飽くなき挑戦はなされていたのです。 そのプロジェクトは既に20年の歳月を閲し最強の炊飯器 直火匠 として結実していました。

Shiozawa station

この 直火匠じかびのたくみ を携えてリンナイの担当者氏が対決に赴いたのが新潟県南魚沼市塩沢の 築300年ほどの古民家を利用した店内に岩魚の囲炉裏焼きや山菜釜飯など 地元で採れた食材を楽しめる 釜めし・こめ太郎 でした。 人気番組 ほこ×たて の2013年3月3日の放映分の対決相手である 最強の釜炊き職人氏の経営するお店です。 此処に於いて米所南魚沼の米農家31人にどちらが美味いお米を炊けるのか判定を仰ごうと言うものでした。

釜炊き職人氏は米所にて美味しいお米の提供を商っているのですからその最強振りが覗えようと言うもの、 以て対するリンナイ炊飯器、直火匠はデータを重視、何時でも美味しいご飯の代名詞とも言える かにの穴 を再現する実力を擁しています。 対決には公平を期すため同じお米、お水を用います。 数日前に両者に事前準備の為、対決用のお米として手渡されたのは市販されている南魚沼産の産地限定しおざわコシヒカリ 天地米 でした。 職人氏はこの指定米香りの弱いのを見て釜に接する蓋の底面を 蒸気が逃げない様に鉋掛けして平面度を増すように調整します。 方やリンナイ側は米の含水率を13.3%と検出すれば炊飯時にベストな水の量をデータから弾き出したのでした。

此処に香りを重視する職人氏の言はリンナイ側にも同様でした。 長年の研究からご飯の美味しさの要素をリンナイは香りを含む次の3つに分類していたのです。

  • 直接還元糖:甘み
  • 香りの強さ:香り
  • 粘着力:粘り

此の3つの美味しさの要素の数値が直火匠では従来の炊飯器製品とは段違いの其れを示すのでした。 リンナイ側担当者が理論的には竈炊きを超えたと豪語する所以です。

一方の職人氏の炊いたご飯には余所では米を食べられないと言う五月蝿い地元民も納得のものです。 その美味しさの秘密は竈は勿論、特注で作った拘りのお釜にも有りました。 其の蓋は厚手の杉材にして上部の取っ手は兜の前立ての如くある巨大なものが備えられています。 釜の材質は熱の通りやすいアルミニウム、 研ぎ方にもお米にストレスを掛けないノウハウが詰まっているのでした。 使用済みの割り箸を種火に其の上に隙間を開けてハの字に薪を置き、 一度着火されれば炎は飯釜全体を包み込むように燃え上がります。 この火の強さも美味しさの秘密の一つなのでした。 言う迄もなく炊き上がりにはかにの穴が通っています。 かにの穴とは米と米の間を蒸気が通り抜けた跡で、火が全体に行き渡り甘さが増した証であると言います。

この昔ながらの伝統技術と最先端のハイテク技術との炊飯対決は 後から判定者にインタビューすれば僅かの差で選択したとされるも併しながら大差が生じました。 24対7で職人氏の勝利となったのでした。

此の一時を以てして、ともすればリンナイ側、即ちハイテク側を貶める輩が出勝ちなものですが、 判定者のインタビューのみならず其れは当たらぬ処なのは確かです。 50年前には家庭の炊飯器はガスで炊くものが当たり前でした。 しかし此の製品では火力は自分で調節する必要があり美味しく炊くのは決して簡単ではなく やがて便利な電機炊飯器に主役の地位を奪われるのは必然だったかも知れません。 此れに雄雄しく抵抗せんとしたのがリンナイ社だったのです。

担当者氏は技術の高さから世界各国で販売されているガス機器の製造会社、 愛知県名古屋市同社技術センターに所属し、ガス炊飯器を20年間開発して来ました。 協力者は東京ガス、大坂ガス、東邦ガスの大手3社、ガス会社とて電気に押される状況は看過出来なかったのです。 斯くて電機炊飯器に負けない新たなガス炊飯器の開発が始まりました。

担当者は、その会社の持っている一番強い処を伸ばすべきであり、 それがリンナイに取ってはガスの炎であった、と開陳します。 リンナイ社に取ってはガスを活かすこそ使命でした。 ガスの炎は1,200℃に達し、此れを炊飯に活かそうとし、 そして完成したのが直火匠であった訳です。 この製品にあっては嘗てガス炊飯器の弱点であった火力調整は 炊飯器が自動的に行うのです。

今回はリンナイ社には残念な結果に終わりましたが 担当者氏は更なる美味しいお米の炊ける炊飯器開発に決意を新たにしたでしょう。 どうもアナログを支持する向きに見当違いが多いのは此の担当者氏の如く 研究者も生粋の職人であって数十年の研鑽の末に製品を産み出している事実です。 奇しくもパネラーのオリエンタルラジオの藤森さんは 自分のおばあちゃんが長年の米作りをしており、 昔は竈で炊いていたのにいつの間にか炊飯器に変わっていて、 其の理由を尋ねれば炊飯器で炊いた方が美味しいと断言されたのだそうです。 勝者の如き釜炊き職人などは滅多に身近に居はしないのですから リンナイの炊飯器は一般には有り難い商品と言えるものに違い有りません。

使用写真
  1. Shiozawa station( photo credit: Manish Prabhune(マニッシュ) via Flickr cc
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