キナバル〜イモトアヤコさんの登頂プロジェクト番外編〜女芸人と目指した山

お笑いドキュメンタリー の真骨頂ともいうべき企画の特質が感動のオブラートに包まれずに剥き出しとなった抱腹絶倒奇譚、 一言で言えば斯うなるでしょうか。 日本テレビの人気謎解き冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ! らしさの溢れる好企画となったのは同番組2014年3月23日の放送分、 出演者同士が他出演者の痛みを知るべくして編まれた企画であるイッテQ!シャッフルスペシャルの第1弾、 女芸人が挑む!イッテQ!登山部 でした。 何と彼女達の目指す山は東南アジア最高峰の キナバルKinabalu) であったのです。

キナバルとはマレーシアはボルネオ島北部に位置する 東南アジア最高峰にて其の標高は4,095mの偉容を備え赤道直下、熱帯雨林を貫き聳えます。 キナバルとはWikipedia 〔※1〕 に中国の王子とその未亡人の伝説を襲ったともありますが有力なのは祖先の霊る山を意味する アキ・ナバルが訛りキナバルとなったとされる説にて 番組では後者を取り、現地語で 死者の地 を意味し聖地として19世紀前半迄は何人も立ち入ることはなかった山である、と説明されました。

Mount Kinabalu from below

目指せ!東南アジア最高峰 女芸人軍団キナバル登頂プロジェクト と題された本企画では普段は温泉同好会として世界を物見遊山と食べ物とアクティビティーを求め彷徨う 女芸人がイッテQ!の看板企画ともなったイモトさん担当するところの イッテQ!登山部のメンバーとして東南アジア最高峰のキナバル登頂を目指そうというものにて、 運動能力ゼロ、根性無し、デブ、と三拍子揃っていると自負する 女芸人軍団に東南アジア最高峰に挑戦させようと言う無茶な企画でもあります。

2014年は2月某日に森山中の大島親方と黒沢さん、いとうあさこさんにたんぽぽ川村さん と言う女芸人4名の訪れた部屋では揃って腕組みをしてサングラスを掛け厳しい面持ちをした ギタリスト布袋さんのような雰囲気を醸し出す天国じじいと 最早立派なアルピニストとなったイモトさんが待ち構えており 其の異様な雰囲気に面々は開けた扉を其のまま閉めたのでした。 4人が思わず避けんとして此の部屋に今回のプロジェクト発起となるイッテQ!登山部ミーティングがセッティングされていたのです。

天国じじい 〔KQ7〕 として有名になったのはイッテQ!登山部顧問の貫田宗男さん、 そしてイモトアヤコさんは何を隠そう今回のプロジェクト、 キナバル登山隊リーダーとしてプロジェクトの全容とキナバル山頂からご来光を拝むと言う目的を 女芸人軍団に伝えるべく待機していたのです。

ミーティングに天国じじいが宣うにはキナバルには階段が整備されているが 返ってそれが登山者にはきつさを齎し膝を痛め易く特に体重がある者には大変である、 としたのは今回参加の女芸人が自ら申し出る迄もなく、 奇跡的に誰も細くない…、 状況を慮ってのことでした。 また其の標高からして高山病も考慮せざるを得ぬのを示唆すれば 女芸人連からは偏頭痛や二日酔いとの違いの説明を求められるなどの頓珍漢、 ヘラヘラしている面々に思わずイモトさんから山は危険です! 舐めていれば落石どーん!滑落どーん!と渇が入ります。

兎も角も此の状況ではならじと2月上旬に催されたのが神奈川県丹沢山地でのキナバル事前演習でした。 しかし此れ迄の人生で登り坂を避け続けて来た女芸人の面々には 一般には標高600mを登るピクニックのような此のトレーニングにも 腰に故障を訴えたり涙を浮かべたり茫然自失と表情を失うなど、となっては 天国じじいも前途多難を思わせられてスタッフからコメントを求められるに苦笑いするしかありません。 女芸人達はしかし決して巫山戯などはおらず終止真摯な姿勢を保ち嘗てない程の辛い経験だろうのは目に見えて分かる、 のですが其の真剣さに返って見ている側の頬が溢れる、と言うより破壊されのは宜成る哉、 此の状況は以て後々彼女達の忸怩たる思いを醸成させるのです。

万全たる準備、とは言い兼ねますが、2月19日、日本を出発したイッテQ!キナバル登山隊の一行を 機内から望めるボルネオ島上空の雲を突き抜け聳えるキナバル峰が迎えました。 翌20日は登山前日に登山部始動の宣言を高らかに謳うイモトさんを前に 女芸人一行からは早くもネガティブな発言が次々に止め処無く発せられます。 イモトさんが今回挑戦する山、あれよキナバル!と指差せば 雲の上にあるじゃん!、と返し、折角の安全祈願には地味だと、 特別に誂えられたユニフォームTシャツにもセンスが無い、と文句を付け出す始末。 愈々翌21日は登山当日となるも未だ一歩も踏み出していないにも関わらずたんぽぽ川村さんは不安で泣き出し一行の出鼻を挫きます。

此の状況下、登山直前に顧問の天国じじいから全員登頂の目標と共に或る作戦が伝えられます。 目標達成の為の秘策とは ゆっくり登る でした。 此の作戦には番組MCの内村さん始めスタジオは大爆笑ですが、 現地女芸人はシンプルで力強い解決法だと其々に至極納得の様子だったのでした。 丹沢演習で女芸人の休息が異様に長いのを案じた天国じじいは 休憩は10分以内と規定し遅くとも着実に進む作戦を取ったのでした。 其の為に装備は極力軽くすべしと催された持ち物検査で発覚したのが 皆の頭からはてなマークの飛び出す黒沢さんのカステラ一斤持参、 さても此れに類じたものは全て没収されたのは当然。

チームとしてはイッテQ!登山部として相変わらず安全を考えたメンバーの選定として 日本屈指の山岳ガイド奥田 仁一まさかず さんがあり、女芸人達にそんな回数実家にも帰っていないと言わしめる2,000回にも及ぶ キナバル登山を閲する東南アジア最高峰を知り尽くした現地ガイドの皆さんが同行します。 登山計画は期間を2日を掛け 初日は標高1,866mの登山口から標高3,300mの山小屋迄を6時間掛けて登り 其処で仮眠を取って真夜中に出発し山頂でご来光を拝もうと言う目論見です。

午前9時15分、気温が20℃を指す中、愈々一行は出発し、 熱帯雨林の中、前半の階段で整備されたルートを行きます。 早速黒沢さんが高山病の兆候をアピールするも 本当のところを知らないのでどうしても何処か頓珍漢なので笑いを誘われてしまいつつも ご本人は傍目にお構い無くネガティブなオーラを漂わせ続け、 今や立派なアルピニストのイモトさんの意気さえ挫きます。 やがて一時間も登った午前10時28分に標高1,981mの第1休憩ポイントに到着するなり 誰が忠告しようとも聞く耳持たず地面に大の字に横たわり愚痴を吐き、 イモトさん自らの予想を遥かに超える此の女芸人一行の不甲斐無さに イッテQ!温泉同好会担当スタッフにいつものロケの様子を尋ねれば此れはまだ良い方であって、 奥底では受け流しつつ表向きでは受け止めてあげる のが付合い方の骨法と言う、含蓄深い処方箋を与えられました。 彼女達の言ってることをまともに受けてしまっては負のオーラに此方側がやられてしまうのです。 登るに連れ目に入る絶景にも目もくれずただただ愚痴を溢し負のオーラを発し へたり込む黒沢さんに連れの一行は山とは何の関係もない 昼飯とかロースとビーフとか散らし寿司とか肉ご飯など 食欲を満たす単語を連発して何とか腰を上げさせます。 スタートから4時間も経とうと言う午後1時15分も未だ標高は2,440mと山小屋迄半分の道のりも満たしていません。

標高が2,500mともなれば既に空気は平地の7割程しか有りません。 上からは高山病を患ったと思われる登山者が背負われて下山する場面も有りました。 熱帯雨林特有のスコールにも遭い足場が一層悪いものとなれば 通常の人さえ息も絶え絶えになる其の環境にアルピニスト・イモトさんならぬ 女芸人さん達は良く耐えてはいるのは重々承知しつつも 動く気力さえ無くしながら無駄口だけは増える一方の其の様子を見せられては どうしても笑いが込み上げて来るのは、登山てこんなに笑えるものなのかね?、と言う内村さんや スタジオの番組レギュラー陣ばかりではないでしょう。 隠れ肥満で筋力も皆無のたんぽぽ川村さんが 鼻水や涎など体中から粘液を漏らすほど股関節に痛みを覚え 何とか癒そうと調整の体操をする様子は脇から抱えるイモトさんと大島親方と合わせ どうしてもラインダンスにしか見えなくなってしまうのも可笑しげで、 其の横では一瞥もせずダントツの負のオーラを相変わらず黒沢さんが撒き散らすのも破顔を禁じ得ません。 イモトさんも遂に泣き笑いしながら、 何なんだよおめえら!ふざけんじゃねぇよ! と皆が皆先輩に当たる女芸人達に言い切ってしまう其の様子も併せ、 スタジオで面白さを絶賛されるも 黒沢さんはそうじゃない、此処まで来るのに本当につらかったんだと強く主張、 岩がごろんごろんしてたんだ、などと皆に其の辛さを訴え掛けるのですが 思い切り笑顔の内村さんに全然伝わらない、と一蹴されてしまうのも悲しき哉。

スタートから6時間ほど経った午後3時半には予定では既に山小屋に付いている筈が 漸く標高2,960mの第2休憩ポイントに着いた処、 先ずは内村さんから差し入れのカップラーメンを啜り込み英気を養う面々、 登山で食すカップ麺の最強さを実感したのは登山者としての楽しみの一つの会得に思わせられます。 更に進んで標高3,000mともなると鬱蒼と茂っていたジャングルも眼下となり視界が開けます。 そして上に目を転じれば愈々キナバル山頂が間近に迫って見え雲海に沈み行く太陽も目に鮮やかに映じれば 登山部一行のテンションは否が応でも上がるのでした、 が折角の絶景を見る余裕もなく座り込む黒沢さんがまたまた笑いを誘います。 運転技術育成の為の水の撒かれた路面では意図的に限界値が下げられる環境が作り出されるように 駄目人間達が集まれば安全な環境で感動的な極限の世界が生まれるのだと言わんばかりに 中島みゆきさんがBGMに流れ、闇の忍び寄る中、山小屋を目指し、 遂に午後7時半、標高3,272.2mのラバンラタ小屋に到着した登山部でした。 そりゃ10時間以上も登山道にあればどんな屈強な人物だって参ってしまうでしょうから 番組曰く駄目人間達の喜びが一入なのは言う迄もないでしょう。 涙で顔のくしゃくしゃになった此処が一行の感動のピークでもありました。 中腹の山小屋に山頂に匹敵する達成感を味わったのです。

しかし同時に此処でイッテQ!登山部顧問天国じじいが情に流されず決断をくだしました。 矢張り負のオーラの一際目立つ黒沢さんとたんぽぽ川村さんは山頂アタックには参加させぬ下山の決定です。 登山隊として成功させる判断はアルピニストで固められた専門家軍団でも女芸人軍団でも変わりのない厳しいものでした。 望めども資格の無い者に挑戦は許されません。 此処迄散々愚痴を吐いて来た二人もいざ登頂チャレンジの禁止を申し渡されると相当な悔しさで泣き出しましたが 命の危険もあれば諦めさせざるを得ません。 愈々諦念の二人は自らの代わりにご来光を拝ませて欲しいと山頂アタックを試みるイモトさん、あさこさん、大島親方の女芸人仲間に たんぽぽ川村さんは自らの分身、こけしの晴美を 黒沢さんはどうしてか未だ持っていたカステラを託したのでした。

黒沢さんと川村さんの思いを背負い一行は日付も変わった23日の午前2時に山小屋を出発、 日の出の午前6:00迄に山頂の ローズピークLow's Peak を目指します。 勿論4,000m超えの高峰ですから厳しい本格的登山であるのは言う迄もなく、 大島親方は立ちはだかる絶壁にうろたえたりもし、天国じじいは其れに苛つき、あさこババアは放っておかれたりもします。 そんなこんなで矢張りペースは上がりません。 午前5時50分、空が白み始めるも山頂は未だ遠くご来光を拝むのは山頂にはなく中途とならざるを得なくなりました。 標高3,929m、サンキュー肉とゲンの好い数字の記された立て札が立つ 8kmポイントがご来光スポットとの天国じじいの調べで以て一行は其処から上る太陽に臨むことにしました。 しかし此処にお笑いドキュメンタリーの面目躍如、笑いの神様が降りて来ます。 日の出の方向に立つ岩が邪魔になってご来光が拝めぬ仕儀と相成ったのです。 ご来光を諦め出立する中に己のペースの遅さを棚に上げて 大島親方が幾度も舌を打ち申し訳なさそうにする天国じじいを非難すればまた此れがスタジオの笑いを誘うのでした。

それでも一行は一歩一歩着実に進みます。 そして遂に22日午前7時48分、 こけしの晴美とカステラを携えたイモトさん、あさこさん、大島親方は 三人揃って最後の一歩を進め TAMAN KINABALU LOW'S PEAK(4095.2m) と刻まれた立て札の立つ山頂を踏み締めました。

三人は山小屋の達成感を超えるでしょう途轍もない達成感に包まれたのです。 揃ってご褒美のおかかのお握りを頬張った際には大島親方など感動の余り泣きじゃくりました。 勿論イッテQ特製カレンダーの為の撮影も忘れられず 此の山頂で旗を掲げ持った三人の写真は2月を飾るとのことです。

スタジオに今回の模様のVTRに編集されて紹介される前には いとうあさこさんは地獄絵図と称し イモトさんは自らはハイキング程に過ぎない此の登山も女芸人を引率するガイド役となれば 彼のマナスル挑戦より厳しいものと断言したにも関わらず 紹介VTRの仕上がりは此の上ない面白さとして出来すれば内村さん始めスタジオの面々の抱腹絶倒する様に 紹介ビデオは意図的にコミカルに編集されたものとして不満を託ち、遣る瀬無い表情を露わにします。 衷心からお笑い処ではない想像を絶する苦労に死ぬほど大変だったのだとの主張も空回り、 何やら腑に落ちぬ面持ちの侭、やり場のない怒りを女芸人諸君は封印するしかありませんでした。

さてさてお笑いドキュメンタリーに於いて普段石崎D勤めるお笑い担当を 流石プロフェッショナルの女芸人軍団は、ご本人達自身は不本意に思いながらでしょうが、 見事代わって遣り遂げてくれました。 女芸人の皆さん、此の勢いで次は富士山は如何でしょう?

使用写真
  1. Mount Kinabalu from below( photo credit: Lincoln via Flickr cc
参考URL(※)
  1. キナバル山(Wikipedia)
世界の果てまでイッテQ!登頂プロジェクトシリーズ(KQ)
  1. キリマンジャロ(Kilimanjaro)(2012年10月3日)
  2. モンブラン(Mont Blanc)(2012年10月7日)
  3. アコンカグア(Acon Cafua)(2012年10月28日)
  4. マッターホルン(Matterhorn)(2012年11月17日)
  5. 槍穂高縦走(夏山合宿)祝角谷師匠復活(2013年9月29日)
  6. マナスル(Manaslu)(2013年11月13日)
  7. 天国じじい(2014年1月8日)
  8. キナバル(Kinabalu)(2014年3月27日)
  9. マッキンリー(McKinley)デナリ(Denali)(2015年9月4日)
スポンサー
スポンサー