Wright Flyer~英国復興の中心BREMONT(ブレモン)の新機械式腕時計

兎角腕時計生産の中心地と言えばスイスが取り上げられ勝ちなのは尤もでもありますし致し方のない処、 しかし其の昔、宗教改革の以前は時計生産に於いてフランス、ドイツ、イタリアに後れを取る2流国でしたし、 懐中時計から腕時計に世の要請から生産が切り替わった第1次世界大戦以降は アメリカ、イギリスと並び称される処でもあったのでした。 しかしいつの間にか腕時計生産に於いてスイスに劣らぬ活躍を見せていたアメリカ及びイギリスは撤退をし、 クォーツショックも乗り越えたスイスの今や独壇場となっているのは周知です。

其の様な状況下2002年に新興機械式腕時計メーカーとして名乗りを上げたのが今や英国腕時計生産の復興の中心ともなっていると自負する Bremont Watch Company (以下BREMONTブレモン社)でした。 創業者は NICKニック) と GILESジャイルス) の ENGLISH(イングリッシュ) 兄弟であってブレモン姓でない由来は ブレモン社公式のWebサイト〔※1〕 に日本語版の用意され記載されてもいます。

公式Webサイトに拠ればブレモン社名の由来は 20世紀末、兄弟を乗せてフランス上空を飛行していた複葉機のエンジンが不調となり 已む無く不時着し大いに世話になった農地々主の名、 Antonie Bremont(アントニー・ブレモン) を襲っているとされています。 イギリスの出自ながらフランス風の社名は其処にこそ有りました。

Bremont Chronometer Logo

そして誇らしくも社名ロゴには高精度時計の代名詞たる Chronometer(クロノメーター)が添えられ、 同社の製造するクラッシクレンジの腕時計は全てが COSC-certified〔※2〕 と言いますから、スイスクロノメーター検定協会(Contrôle Officiel Suisse des Chronomètres:C.O.S.C.) の認定を受けた逸品と言えます。

2002年創業のブレモン社が初の腕時計を世に送り出したのが2007年とは 拘り抜いた一本を世に提供したいが為であろうと忖度させるのはなかなか クロノメーターを腕に巻く同社潜在顧客としての機械式腕時計ファンの琴線に触れる黎明期の挿話を用意しているようです。

そしてもう一つ社名ロゴに添えられるのがプロペラです。 同社のそして同社の沿革を超えた創業者兄弟と父親との歴史を語る上で欠かせないのが飛行機であるのを物語ります。 ブレモンの命名挿話にも登場した如く飛行機は同社と切っても切れぬ関係にて アイデンティティを表しつつ社名ロゴにはプロペラが刻印されているのでした。

従って同社が2014年6月23日に発表した新製品が ライトフライヤーWright Flyer) であったのは必然だったでしょう。 ライトフライヤー号がライト兄弟が初飛行を行った機体であるのは世に広く知られる処です。

1903年に人類初の飛行を成し遂げたライトフライヤー号は現在 ワシントンDCのスミソニアン博物館に安置されてあります。 フレーム自体は長い間此の状況下にあるも羽を覆った素材其の物は然にあらず、 其の当のモスリン生地はライト兄弟一族の管理下に長い間あり大切に保存されてきました。 ライトフライヤー号はオハイオ州デイトンに保管されましたが1913年のマイアミ川洪水で堤防が決壊して ライト兄弟の修理等経て1925年には生地全体を交換し、 オリジナルの生地はライト兄弟兄オービルの死後、家族に依って大事に保管されて来たものとされています。

腕時計足るブレモンライトフライヤーにはオービル家に貴重なモスリン生地の一切れを貰い受け、 ローターの一部に設けられた夫々一本一本のスペースに此の本物の生地が埋め込まれるのです。 従ってブレモンライトフライヤーのリミテッドエディションと呼ばれる腕時計は必然的に限定とならざるを得ないのであって、 限定本数は現時点で公式サイト上にステンレススチールが300本、 ローズゴールドが100本、ホワイトゴールドが50本とされています。 切れはローターの一部に極小部埋め込まれますのでライト家から送られた一切れの生地を分配した結果、 450本に適用出来たものかも知れませんし未だ余り生地が有る哉否哉は 残念ながら部外者の知り得る処ではありませんが孰れ其々が貴重な一切れであるのに違いないでしょう。 今回其の生地の内300切れがブレモン社に提供されたとする情報がありますが、 ステンレススチール製ケースの提供数と一致し、此れを勘違いして流されたものかの知れません。

機械式腕時計ファンに取っては欠かせない情報にムーブメント詳細があるでしょう。 ライトフライヤーのムーブメントはブレモン社初の内製として見て良いのかは少々厳密性に欠けるかも知れませんが 今回オリジナルにデザインも開発もイギリス国内で実施されたことを示すように01のナンバリングが冠され BWC/01 と命名されています。 自動巻きは50時間以上のパワーリザーブであり、25石、33.4mm径であるともされています。 振動数は28,800bphとあれば時間当たり28,800回の鼓動を打ちますから1秒間当たりに換算すれば8振動、 一般的にはハイビートに分類される数値を示しています。

ムーブメントは裏蓋から覗き見られる構造にてローターには 1903年人類史上初めて大空を闊歩したライトフライヤー号の一部も搭載され、 即ち所有者は何時でもケースを裏返せば歴史を掌に収めているのを実感出来るのです。 構造体にプロペラの意匠を凝らしているのもブレモンならではでしょう。 此れでは周りに訝しがられながらも時刻を確かめずして 引っ繰り返してケース裏側ばかり覗き込んでいる事態も招き兼ねない構造が施されているのです、 とは言っても機械式腕時計ファンには見慣れた構図やも知れず、 此処等当たりもブレモン社の巧みな作戦が功を奏す蓋然性は高いと考えます。

イギリスでブレモン社を創業した兄弟がアメリカのライト兄弟を敬愛しているだろうことは 同社の沿革を見れば創造に難くありません。 人類初の空中飛行を達成したライトフライヤー号の名を襲ったブレモン腕時計ライトフライヤーは 腕時計生産に於いて凋落したイギリス、アメリカの両国が、フランスの援助も受け、 確と手を結んで復興の狼煙を上げる、そんな希少な一本となるのかも知れません。

機械式腕時計も良いけれどスイス製を有り難がっているばかりでは些か釈然としない向きには 新規なブランドを求める際にブレモンを選択肢の一つに加えてみるのも一興ではないでしょうか。 そしてブレモン社にも渾身のニュープロダクトであるライトフライヤーを手にした向きは 表のダイヤルより裏蓋を繁く見つめていることになるのかも知れません。

使用写真
  1. Bremont Chronometers(ブレモン社公式ホームページ)
  2. The Bremont Wright Flyer Limited Edition(YouTube:2014年7月23日)
参考URL(※)
  1. Bremont Chronometers
  2. About us | BREMONT HERITAGE(Bremont Chronometers)
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