Apple社の新特許ホームボタンとiPhoneの優位性

Apple社がiPhoneを発売以来携帯電話の形態が一変し iPhoneはスマートフォンの代表としての位置を確固たるものにしました。 しかし其れは後追いのスマートフォンとの競合の始まりでもありました。 検索エンジンの覇者Google社の提供するAndroidスマートフォンであり また近い将来のお目見得がMicrosoft社に約束されたWindowsフォンです。 ユーザーの満足を得るべく互いに充実を図るに一旦此の競争に敗れれば 嘗ては携帯電話市場を支配したものの今はMicrosoft社傘下にある ノキアNokia) であり所謂ガラケーで日本市場を支配した日本電機メーカーの如き凋落を招く処となります。

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Apple社は其の創立時よりハードウェアとソフトウェアと一体化した製品を提供して来ました。 此れがために一時はソフトウェアメーカーたるMicrosoft社であり続くGoogle社の後塵を拝す場面もありましたが 現在の局面に此の特性が有利に働いているであろう状況証拠としては Google社、Microsoft社と共にハードウェアに或る程度重心を寄せる 〔K1〕 方針、施策があります。 iPhoneが変えた世の中では高度な UIUser Interfaceユーザーインターフェイス) が求められ優位に立つにはハードウェアとソフトウェアの密に連携した開発が欠かせないからです。 此の点に於いてApple社がMicrosoft社及びGoogle社に比して有利であるのは明らかです。

現出された機能の一つはApple社が言う処の Force Touch感圧タッチ) です。 通常ボタンはボタン自体の物理的上下運動を有しボタン押下時、何某かの接続時には接触音と接触感を伴うものですが Apple社は此れをソフトウェアで擬似的に上下運動を伴わない平板の上に再現して見せました。 ソフトハード一体型開発を特性とし全面タッチスクリーンのiPhoneを以て世に問うた実に同社らしくもあり同社ならではの機能です。 当該機能は既にSpring Fowerdイベントで発表された Apple Watch 〔K2〕 や同社ノートPCのMacBook Pro13インチの2015年版に搭載され、15インチにも搭載が予定され、 来月WWDCで発表されるだろうiPhone6sにも搭載が噂されており、 近い将来Apple社製品全てに搭載が予測される機能で 今は単に手品の如き機能から驚きを以て伝えられるのみですが孰れ空気の様に当たり前に使われるものと思われますが UIの観点から鑑みるに実に重要な一歩をApple社は踏み出したものでしょう。 Force Touchなどソフトウェアとハードウェアの一体開発からのみ現出せる機能と言えます。

そして10日程以前、2015年5月14日付けで申請されたApple社の新特許がまた同社製品に新たなUIを齎すものと考えられます。 DEVICE, METHOD, AND GRAPHICAL USER INTERFACE FOR MANIPULATING USER INTERFACES BASED ON FINGERPRINT SENSOR INPUTS なる題目で公開された特許で2013年発売のiPhone5s以降に搭載されている Touch ID とApple社が呼ぶ処の 指紋認証センサー を利用して新たなUI機能を実現するものと考えられます。 ホームボタンと呼ぶ処のApple社製品には数少ない物理的スイッチを用いて 其の製品を操作する新しい手法が提供される訳です。

此の特許公開を受けた記事 〔※1〕 ではホームボタンの従来の機能、上記のTouch ID及び最も基本的なホーム画面に戻る機能、 長押しでSiriの起動、二度押しで開いているアプリの一覧などを挙げ、 此れに新特許を用いれば可能となる機能例を紹介しています。

一例に挙げられたホームボタンの長押しでホーム画面に検索機能を表示するのはSiriからどれ程便利になるのか疑義が発生しますが、 また挙げられる指紋センサー読み取りで縦横を判別した方向にロックする機能などは成る程と思わせられます。 中にも分かり易いのがゲームアプリ内でホームボタンの指紋読み取り機能が使用可能になると言うものです。 即ちホームボタン上の指の動きを初期型iPhoneのようにオン・オフの2値ではなく複雑な動きを読み取れる機能がゲームに利用出来るとなれば ホームボタンをコントローラーとして働かせられることが容易に思い浮かびます。 ホームボタンが十字キーやアナログスティックであるかの様に使えるのです。 スマートフォン上に分かり易い処ではRPGなどのキャラクター移動には ゲーム開発会社が多大な苦労を取っていたのはゲームプレイヤーには周知ではないでしょうか。 画面上に十字キーを描画する手法が代表的でドラクエなどにも採用されていますが どうしてもゲーム専用機に比較して操作感が劣るのは多く言われて来た処です。 アップル社の新特許を利用した機能が実機に搭載されれば此の問題の一足飛びの解決が予測されます。

Apple社が把握する処、スマートフォンに於いてはゲームの潜在的利用が多いようで 今年々初にもホームボタンをジョイスティック化するApple社の特許 〔※1〕 が伝えられもしました。 Appleの思惑がどうあれゲーム開発者が此れを利用しない手はありませんし、 ホームボタンと言う購入時に必要欠くべからざる少ないハードボタンとして別売りオプションを再購入する必要もなく使用可能となれば ゲームのみならず思いも依らぬ利便をサードパーティがアプリとして開発、提供する可能性が実に高く思われます。

iPhoneはUIに一際気を使って来たApple社が其の姿勢を具現化したUIの塊とも言うべき製品として登場し、 而して得られた直感的な操作性は多くのファンを獲得し今のスマートフォンの代表たる位置を獲得し、 今尚先行者利益を享受する処でもあります。 Apple社の共同創業者であり一度は籍を抜きながら破綻寸前の同社に復帰してiPhoneを含む一連の製品で以て建て直し世界一企業 〔K3〕 足らしめた スティーブ・ジョブズSteve Jobs) 氏の晩年に終始連れ添っていたのが今同社製品に大きな影響力を持つ ジョナサン・アイブJonathan Ive) 氏です。 ジョブズ氏以上にUIに拘る様子が伺えるアイブ氏の伝記 ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー を読めばデザイン哲学として ミニマリズムminimalism) を大切にしているのが伝わって来ます。 主張するデザインではなくデザインは機能と一体化してユーザーの意識から消えるものであらねばならないのです。 然ればこそiPhoneは前面の大部分を画面が覆うデザインとして登場したのでした。 新しいUIを追加しつつデザイン上の変化は皆無であるのは氏のデザイン哲学の具現でもあるでしょう。

豊かなUI機能を追加しつつ尚且つデザイン的にミニマルを保ちたい、此の相反する問題を解決する今回のApple社の申請特許は 奇しくも十字キーの本家、任天堂の宮元茂 〔K4〕 氏の言う アイデアとは複数の問題を一気に解決するものである 〔※3〕 なる定義を地で行くかに見えます。 世に派手に喧伝される様子もありませんし、Force Touchと同じく一気に其の効果が現れるものでもなく、 ソフトウェアの充実と共に一般の理解が得られていくでしょう今回の新機能UIは iPhoneへ搭載されればForce Touchと両輪となってGoogle社やMicrosoft社へボディー・ブローの様に次第次第に効いていくでしょう。 来月WWDCに発表されるだろうiPhone6sへの搭載は難しいものではあるでしょうが早い時期の提供を望みたいものです。

使用写真
  1. apple( photo credit: Ed Platt via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. ネクサス7登場~ハードウェア市場に舵を切る巨大ソフトウェア企業(2012年9月25日)
  2. Apple Watch登場前夜関係各界喧騒す(2015年2月28日)
  3. アップル社によるマイクロソフト社時価総額世界一記録の更新を見る(2012年8月21日)
  4. 任天堂スーパーマリオの生みの親宮本茂専務にスペイン皇太子賞が贈られる(2012年5月26日)
参考URL(※)
  1. Apple patent for iPhone home button(Business Insider:2015年5月14日)
  2. Apple Invents a Home Button that Doubles as a Gaming Joystick(Patently Apple:2015年1月15日)
  3. アイデアというのはなにか?(HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN:1101.com:2007年8月31日)
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