春陽堂茶月倒産~寿司ロボットに見る激戦回転寿司・宅配寿司

外食産業が厳しい状況にあるのは漏れ伝え聞く処です。 一時は隆盛を誇った外食企業が次の時代の波に乗り遅れ凋落するのも珍しい話ではありません。 寿司、中華、ピザ・パスタ、弁当・惣菜、カレーなど様々に多角化し平成4年(1992年)決算では360億円を超える売上を計上し 一大外食チェーンとしての存在感を示した 株式会社春陽堂 及び、平成16年(2004年)に 宅配寿司 事業運営に会社分割した 株式会社茶月 と共に2月8日に大阪地裁より破産手続き開始決定を受けました。 負債は2社合計で77億円(東京商工リサーチ[※1] )から79億円(帝国データバンク[※2] )ほどと伝えられます。

At 回転寿司 海鮮三崎港 photo credit by mersy
At 回転寿司 海鮮三崎港 photo credit by mersy

春陽堂の創業は昭和21年(1946年)と戦後間も無く、 グリル、喫茶、洋菓子などの製造、販売を主業務としていたと聞けばその洋風味を些か意外な感じもあるのは 最も広く知られるのが和風の印象の強い宅配寿司の茶月であるからかも知れません。 春陽堂はほぼ持株会社の様相を呈していたようです。

外食産業が全体的に難しい状況にあるのは勿論、 宅配寿司、回転寿司に限って見てみても 例えばGoogleで検索してみればその検索結果には地図が添えられ、 その地図には最寄の店舗が数多ポイント表示されるのを見ても競争が激しいのが分かります。 長い寿司の歴史の中にも江戸時代にこの形態が取られたという 握り寿司 は当時は庶民の味だったとは言え漸次洗練さを増し、 寿司職人の技術は愈々高まり庶民の口からは遠ざかるものとなっていたものが 何故このような状況になったのでしょうか。

それにはどうやら寿司ロボットの存在が強く影響している様です。 下に寿司ロボットのデモをGigazineが配信する動画を共有します。

1時間に3300個のスシを握れる鈴茂器工の「超小型シャリ玉ロボット」

1時間に3,300個のシャリを握り出すとは 一般的な寿司職人では時間600箇、達者な職人でも680箇程が限界[※3] とされればネタは別になるとしても驚きのスピードであるのは間違いありません。 庶民に縁遠い高級寿司店ならいざ知らず、 宅配寿司、回転寿司には欠かせない新兵器と言えるでしょう。

その寿司ロボットが開発されたのが1981年、上の動画のロボットも製作する 鈴茂器工株式会社 が嚆矢を放ちました。 1970年の減反政策を受けて米作の為に何か出来ないかと考えたのが寿司ロボット開発の始まりで その以前は食品加工機を手掛ける企業で菓子類などの製造機械も製作していたとなれば 今回の倒産企業となった春陽堂と時代背景の重なる部分も大きいように感じられます。

寿司ロボットは爾来時代の要請を受けてまるで寿司職人がその技術と洗練さを増して行ったように その握り出すシャリ玉は庶民の口を満足させるものへと成長を遂げました。 例え米離れが言われようと長年米を主食として来た日本人に米は欠かせないものであるのは後から考えてみれば当たり前でした。 そして高嶺の花と化した寿司が廉く食べられるものとなれば 寿司ロボットは受け容れられない筈もなかったのです。

この如き成長産業には新しく参入者もあるのは無論、 鈴茂社以外にも 株式会社トップ もあり、意外な処では音響機器で有名な 株式会社オーディオテクニカオーテック ブランドで参入してもいるのでした。 競争が益々品質を上げ、コストを下げて行くのは論を俟ちません。

しかし寿司ロボットの成長は回転寿司、宅配寿司への参入障壁を下げるものでもあったのです。 育成の難しく時間も掛かる寿司職人に頼らず暖簾を掲げられるその存在は大きかったでしょう。 斯くてGoogleマップに宅配寿司も回転寿司も星の如く散りばめられる状況が作り上げられたのでした。

今回の倒産事案についてはその原因を様々言われていますが、 寿司ロボットの成長と普及もその大きな一因となっていると思われます。

使用写真
  1. At 回転寿司 海鮮三崎港( photo credit: mersy via Flickr cc
参考URL(※)
  1. (株)春陽堂と(株)茶月~持ち帰り寿司「茶月」で有名~(東京商工リサーチ:2013年2月13日)
  2. 宅配寿司「茶月」運営【続報】株式会社春陽堂など2社破産手続き開始決定受ける 負債78億5800万円(帝国データバンク:2013年2月13日:2020年2月24日現在記事削除確認)
  3. 「1皿=80円」時代見据える すしロボット革新(日本経済新聞:2010年11月9日)
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