パンを焼くトースターやホットサンドメーカーではどちらにしろ焼け目が付くのですから、 どうせなら人気キャラクターにしてしまおうというアイデア商品が 象印から発売されました。 その人気キャラクターはディズニーアニメでお馴染みの くまのプーさん 、食の細いお子さんだってこれならお箸も進むでしょう。 お母さんの強い味方になってくれそうな新製品群のシリーズ名は プーさんの朝ごはんシリーズ といい以下の4種類が品揃え[※1] されています。
この内の電子ケトル以外は プーさんなどのキャラクター柄が焼いた食パンの焼き目としてつく寸法です。 この他にも マイコン炊飯ジャー や マイコン沸騰電動ポット にもプーさん柄があしらわれた商品を象印は用意しています。 どうせならプーさんで揃えてしまいたくなってしまいそうですね。 斯くもキャラクター商品は強いと言う訳です。
ソニーも同社随一のブランド商品 ウォークマン にキャラクター商品を品揃えし、限定3939台を色違い3種類で計11,817台、 予約販売受付を開始すると同時に即日完売となったのが 初音ミク生誕5周年記念モデル[※2] です。
初音ミク
はヤマハ開発の音声合成技術
このようなキャラクター人気にあやかる商売は古くからある手法で 今はゲーム会社として確固たる地位を築いた任天堂も かつては発売するトランプにディズニーキャラクターをプリントして随分売ったものでした。
確かに象印もソニーも購買欲を擽る上手いアイデアで 実際にソニーは1万台ものウォークマンを売り切っているのですから ビジネス的な成功が齎されたとも言えます。 これを決して否定するものではありませんが、 しかしこの方向性には疑義を発せざるを得ません。 必要なのはこうした近視眼的ヒットではないような気がするのであって、 それは象印やソニーのみならず、日本メーカーに総体的に言えることだろうと思うのです。
もう少し踏み込んで言えば、 象印に取って必要なのはトースターの創造であり、 ソニーに取って必要なのはウォークマンを想像し得た同社先達の意思を継ぐことでしょう。 実際、ソニーに学んだ故スティーブ・ジョブズ氏率いるアップル社は新しいウォークマンである iPod を想像し得たのでした。
高度成長期の日本は世界から模倣ばかりと揶揄されながら その影では実はさまざまな創造をなし得ていたのでした。 ソニーなどはその代表たる存在でトランジスタラジオからトリニトロン、VTR、ウォークマンと その創造物は枚挙に暇が有りません。 今先達の意思を継ぐこと適わねば同社は先達の遺産で喰う羽目になりますし、 それとていつ迄も続けられるものではありません。
21世紀に正しく間に合ったのがトヨタのプリウス、即ちハイブリッドカーでした。 10数年を経て今、世界中の自動車メーカーがその技術を使うにしろ、 使わないにしろ意識せざるを無い中心軸として存在しています。 そしてトヨタは世界一の販売台数を達成したまま、 この技術を以て手薄な欧州に切り込まん[K1] としています。
恐らく日本メーカーに必要なのは目の前に聳える絶壁を攀じ登り新たな地平に立つことなのです。 これはかつてなし得たものですし、今もトヨタはなし得ています。 日本メーカーの創造性の可能性は低いものではありません。 ただ少し何かがずれている、ほんの少し狂っているだけなのです。 特に凋落が著しいハイテク関連の日本メーカーには 意を決し巻き返しを図って貰いたいものです。
かたむき通信参照記事(K)- トヨタがBMWとの提携でHV勢として対ディーゼルに有効な一石(2012年7月30日)
- 「くまのプーさん」柄のトーストが焼ける 象印が調理家電4種を発売(はてなブックマークニュース:2012年8月6火)
- 初音ミク生誕5周年ウォークマン、発表当日に3939台×3種がほぼ完売(インターネットWatch:2012年8月3日)