楽天koboを成功と見做せる2つの理由

騒いでいるのはせいぜい2000~3000人 との発言が物議を醸したのは、三木谷楽天社長が推進する新事業は電子書籍の尖兵となるべき koboコボ の日本に於ける船出に於いて[※1] でした。 インタビューに於いてkoboは出鼻を挫かれたのではないかとの質問に答える中で出て来たコメントです。 このようにインタビューアーが問うたのはネット上に 実際に入手されたkoboに対するかなりの批判が相次いだ[※2・3] からでした。

Today's latte, kobo. photo credit by yukop

その2011年9月4日の楽天に依るkobo社の買収より[K1] 様々に取り上げられながら鳴り物入りで登場したのは 日本語化やコンテンツの充実など考えれば思ったより早い時期で それは若しかしたら近日中に日本上陸が予想されるAmazon社の Kindleキンドル を慮ってのことだった[K2] のかも知れません。 スピードを重視するに因って幾許かの拙速振りが露呈したとも言えるでしょう、 それがネット上に多くの批判となって取り上げられ、 それを打ち消すのに楽天は懸命といった塩梅です。 その行為中にも批判が相次いだのが手厳しい批判の多く記入されたレビューの削除[※4] でした。

以上の如き一見苦境とも思える立場に立たされているかのようなkobo事業ですが、 ネット上の意見と現実世界が乖離するのはまだまだしばしば見られる現象にて 本当にkoboは駄目出しをされるべき事業なのだろうかと言う疑義も発せられます。

このkobo現象を面白い方向から見る記事がありました。 ビジネスジャーナルの2012年8月8日に記事 ユーザーのネガティブな書き込みで溢れた口コミサイトは突然閉鎖!?楽天「kobo」大不評に見る、電子書籍成功のヒント? がそれです。 電子書籍はこの数年、期待されつつ、旧来メディアには反発もありつつ、 取り上げられながらもなかなかに発進が容易でない難しさがあるのも分かって来ました。 電子書籍事業を成功に導くには何某かの障壁があり、 それを取り除くヒントがkoboの事象には内包されているのではないか、 という趣旨の記事になろうかと思います。

物事が世間一般に浸透するには 先ずアーリーアダプターが興味を示し、 アーリーマジョリティが次いでレイトマジョリティが参加し、 ラガードが知らず知らず採用するという段階を示す キャズム理論 なるものが有ります。 人々を新しいものへの飛び付き易さから分類しているのですね。

実は世に所謂アーリーアダプターと言われたがる人種は多く、別名 またお前らか と揶揄される状況である通り、 ひと通り新しいものには最初に飛び付きたがりますから余り参考になりません。 恐らくこの人種は本来のキャズム理論とはそれは異なるアーリーアダプターなので 何某か例えば擬アーリーアダプターなど、新分類が必要になるのかとも思われます。 例えばSNSなどネット上に逸早く新製品を入手して誇らしげに写真を投下するだけの人種でもあり、 取り分けアーリーマジョリティーの範となる様子も無い これらの真のアーリーアダプターとは区別すべき連中は ビジネス上からは逆に排除したい存在となるのもしばしばなのでしょう、 楽天三木谷代表の発言にはその雰囲気も穿ち見られるかに思います。

そしてキャズムを越え一般に普及するのに必要な人種の取り込みをこそ、 新製品は目指さねばならないのですが、 koboはどうやらその人々に届いた感があると言う見方をするのがビジネスジャーナル記事なのです。 ビジネス上の成功に必要な範疇の人々に届いたとなれば、 それを達成し得た楽天の手法には電子書籍成功への要素を内包していることになります。 それを記事は楽天プラットフォームの販売力と価格設定の訴求力であるとしています。 本記事ではこの成功に不可欠な要因を以てして実際にターゲット顧客に訴求し得た 事実を以てして楽天koboを成功と見做せる理由の1つに挙げたいと思います。

さてkoboがその出足、様々な問題を抱えていたのも確かです。 ビジネスジャーナルではこの問題を2つに切り分けています。 楽天側の問題とユーザー側の問題です。 楽天側に有る問題の解決は必須ですが、重要なのはユーザー側の問題です。 これらは実は電子書籍などに馴れない人々が苦情を発したものでもありました。 ビジネス上の成功に欠かせない人々から寄せられたクレームでもあると言う寸法です。

楽天はこれら真の顧客層及び擬アーリーアダプター層から寄せられたレビューを削除しました。 多くの批判が相次ぐ部分でもあります。 曰く、正気の沙汰とは思えない、暴挙である、情報の隠蔽、等々、見事な迄の悪し様な謂われ様です。 これまた三木谷氏の開き直りとも取れる発言も火に油を注ぐ結果となっている[※4] ようです。

ところでこのレビュー群は消したくなるほどのほぼクレームだらけのものとは言いながら 実は貴重なデータを内包するものと考えられます。 分析をすれば真のユーザー層たる人々の電子書籍へのイメージをも内包する 貴重なデータともなり得る筈なのです。 一般の人々が電子書籍をどのように考え、 従来の生活スタイルに適合し受け入れるためには 何をどう改善すればいいかの材料が其処には豊富に秘められているのです。

これまた穿って見れば楽天はこの如き貴重なデータを その当初として充分に集め切ったと見た処で、 その意図するものは失敗隠蔽ではなく、成功への道標の隠蔽を図ったたものとして レビューを削除したのではないかと言うことです。 貴重な成功へのデータと捉えられたときこれからAmazonとの大競争も予想される中、 誰が敵に塩を贈ったりするでしょう、そのような謂れはないのです。 この如き貴重なデータを得たことを以てして 楽天koboを成功と見做せる理由のもう1つに挙げたいと思います。

以上、今回のkobo騒動をその普及へ至る一歩として成功と見做す理由は以下2点にまとめられます。

  • 真のターゲット顧客に訴求し得た
  • 真のユーザー層たる人々貴重な顧客データを得た

これを活かして楽天は更なる快進撃を続けるのでしょうか。 黒船たるアマゾン社の尖兵Kindleは果たして如何なる仕様を以てそれに対峙するでしょうか。 また第3勢力の動向は如何なるものでしょうか。 電子書籍戦争は今、日本に戦端の幕が切って落とされ、火を吹き、 煙の立ち上り始めたばかりです。

使用写真
  1. Today's latte, kobo.( photo credit: yukop via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. Kobo Touchを2012年7月19日発売の今Rabooはどうなっているか(2012年7月3日)
  2. Kindle(キンドル)~アマゾンの電子書籍リーダー日本上陸予告(2012年6月26日)
参考URL(※)
  1. 細かいことで騒いでいるのは少数派ですよ 楽天・三木谷社長、Kobo騒動を語る(日経ビジネスDigital:2012年07月27日:2019年9月2日現在記事削除確認)
  2. koboがボコボコ...。不具合多発で楽天サポート強化中(GIZMODE:2012年7月24日)
  3. kobo Touch 不具合 原因 対策 まとめ(私のiPhone紹介場:2012年7月26日)
  4. ドタバタの楽天kobo「レビュー削除はAmazonもやってる」と三木谷社長(税金と保険の情報サイト:2012年8月2日:2019年9月2日現在記事削除確認)
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