国力の減退著しい本邦には矢張り国内電機メーカーの凋落が 一因として大きく影響しているのは否めず、 従って其れ等企業の経営陣の経営責任には只に一営利企業のそれに止まらぬ重さがあります。
エネルギーに関して古来人類の大きな争点でありました。 電気と言う新エネルギーの登場以来その蓄積も必然的に耳目を集めるのでしたが、 なかなかに不易流動と言っても良いような形を成さない蓄電技術は難しいものでもありました。 一時は世界に覇を唱えた日本電機メーカーに於いてもその研究は綿々と為されたのでした。 それが今不況の波をまともに受けてはその事業を手放す必要があると言うのが 世間一般に尤もと受け入れられるのも若しかしたら国力衰退の一兆なのかも知れません。
これが白日の元に晒されたのがかたむき通信に取り扱った ソニー社への当該事業の売却提案[K1] でした。 中国資本、台湾資本への売却が打診された苦境の渦中のソニー社が 何処ぞの怪しげな経営コンサルタントが言いそうな選択と集中とやらを受けて 渡りに舟と直ぐに飛び乗らなかったのは何時か世界に冠たる企業であった最後の矜持なのでしょうか。
現在、日本の営々と築き上げて来た技術の海外流出が喧しく言われます。 已まぬ已まれぬ事情も其処にはあるのは確かです。 そうであるからと言ってその尻馬に乗って何でもかんでも相手構わず売り飛ばしてしまうのは 如何にも貧すれば鈍ず、の感が強く有ります。
以上がかたむき通信のみに見られる所見になかったのが、 各メディアの揃って伝える処に明らかになりました。 産業革新機構が出資してソニー及び日産、NECなどの リチウムイオン電池事業を統合しようと言う動きが見られるのでした。 以下に幾つか2013年1月25日の当該報道を列挙しましょう。
孰れの伝える処からもソニー社の当該事業の周辺の不穏な動きに 関係者が敏感に反応する様が浮かび上がって来るようです。 今更言う迄もないリチウムイオン電池事業、延いては蓄電池事業の有望性[K1] を尻目に軽々しい経営判断とやらで其の場凌ぎに手放されるのを みすみす見過ごしては置けない有識者の息遣いが聞こえます。 此処に至って自分可愛さの民間経営よりは遥に 巷間罵詈雑言を浴びせられるお役人の方が国を憂えているのかも知れません。 未だ関係者筋からの情報として伝えられる予断に過ぎませんが、 当たらずとも遠からぬ折衝が水面下に進んでいるものとされます。
しかし此処に問題であるのが出資元と囁かれる官民ファンド 株式会社産業革新機構[追] の成り立ちです。 出資能力に問題は有りませんが8,000億円の政府保証を保持すると言うことは 政府筋の影響下にあることをも、従って国民の強い監視下にあることをも意味します。 投ぜられるのは税金ともなるのでした。
産業革新機構の近い救済事例としてはかたむき通信に幾度か扱った ルネサス の事例[K2] が昨年2012年末12月10日に成立したばかりでした。 この事案に対しては多くの批判も出る処で、 官主導に対する先行きが不安視されるものでもあります。
国を憂うるのと経営とはまた別問題なのは言う迄もありません。 更に言えば商売に於いて無名性の官僚氏では責任の伴う役割の負担は難しくもあるでしょう。 電機メーカーからの出向も未だ合意の難しい3社の思惑が入り混じっては 此方も成功からは遠ざかるものだと考えられます。 此処に於いてはJALをV字回復せしめた名宰相 稲盛和夫 氏[K3] のような強い個人が必要とされるのかも知れません。 合意のなった折には人事が注目されます。
追記(2020年2月8日)
2018年9月、根拠法である産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の改正法の施行に伴い、 株式会社産業革新機構 は 株式会社産業革新投資機構(JIC JAPAN INVESTMENT CORPORATION) に改組され、同社事業は同社から新設分割する形で発足した 株式会社INCJ に委譲[※1] されました。 株式会社INCJ の全株式は、 株式会社産業革新投資機構 が保有するものとなっています。
使用写真- Full of Sparks( photo credit: jurvetson via Flickr cc)
- 格下げソニーに悪魔の囁き~有望電池事業の売却提案(2012年11月28日)
- ルネサスのリストラが進み存在価値を認められNEC逆救済の可能性も(2012年10月15日)
- 稲盛和夫氏主導JALの奇跡のV字回復再上場とLCCスカイマークの挑発的サービスコンセプト(2012年7月4日)
- 株式会社INCJとは(株式会社INCJ)