一部事業としてある音楽ビジネスについては批判の喧しい ソニー株式会社 である[K1・2] もののそのプロダクトに於いてはウルトラブック[K3] やヘッドマウントディスプレイ[K4] 、カメラ[K5] などにも充実した製品が見られ、戦略的にもオリンパスとの提携を図る[K6・7] などして医療機器事業にも展開し意欲的にも見えるのですが、 一度失墜した評判を回復するのは困難も伴うようです。
矢張りその一番の原因は事業の大きな部分を占めていたテレビ分野の凋落でしょう。 此処に家電メーカーの両雄たるソニーとパナソニック迄が大幅な赤字を余儀なくされ 遂には呉越同舟とも謂える有機ELテレビ事業に提携が図られた[K8] のでした。 この状況は株価にも反映され投資化連からは批判も高まり従って クソ株の如き言われ方[K9] も甘受せざるを得なかったのです。
この流れの中にこの両社はまた同時に不名誉を蒙ることとなりました。 格付け会社に格付けが大幅に下げられてしまったのです。 一方では ムーディーズ に因ってソニーの格付けはBaa2からBaa3に[※1] 、また一方では フィッチ・レーティングス に因ってソニーは3段階、パナソニックは2段階下げられ、共に投機的水準[※2] と屈辱的な段階に格付けられてしまいました。
これを以てネットには半ば揶揄として ソニーの身売り説が流布し面白可笑しくその先が宛がわれますが、 無論未だそのような話しの有る筈もありません。 しかしこと事業部単位で言えばこれも強ち穿った見方ではなくなるのです。 それは 電池事業 に於いて[※3] でした。 複数の投資銀行の提案にはリストラの一環としての電池事業売却がソニーになされているとされます。 かたむき通信にカテゴリーとして 倒産 を扱う際には度々デリバティブ取引などに金融筋に影が見え隠れしますが、 これと同質のものとして宜しかろうとも思われる様相を呈しているのでした。
しかし電池事業はいま最も可能性の有る分野の一つであると言えます。 なんとなれば来年にも自動車と言う巨大市場に於いて半世紀振りに新車両区分 超小型車 が立ち上がらんとしており[K10] 、自動車メーカーの提供するそれは殆どが EV(電気自動車)であると見られるからです。 更にはハイブリッドより電気的に純粋なこのEV群は5倍もの電池容量を必要とすると見られ、 従って今国内外問わずこの新市場にリチウムイオン電池メーカーが 鵜の目鷹の目で自動車メーカーとの提携に鎬を削り合っている[K11] のでした。
ソニーの電池事業の買い手候補に挙げられるのは中国のBYDや 台湾の鴻海精密工業とされています。 鴻海精密について言えば弱肉強食のビジネスの世界で致し方ないとは言え 此方もテレビ事業の凋落で苦境に喘ぐシャープの足許を見て[K12] 虎の子の IGZO液晶 を狙わんとする企業[K13] でもあったのでした。 この提案は最早ソニーに取っては悪魔の囁きとも言えるものでしょう。
技術のソニーとして世界を席巻した昔日の面影が確かに漸次失われるソニーではあります。 しかし未だ同社はフォーチュン誌の世界売上ランキングでは87位[K14] 、またインターブランド社の2012年版世界ベストブランドランキング100では40位[K15] 、と言う堂々たる国際企業でもあるのです。 創業者の一人 盛田昭夫 氏は現在株価世界一を誇るアップル社の創業者の スティーブ・ジョブズ 氏も、家電量販店を駆逐せんとする勢いのネット小売世界最大手のアマゾン社[K16] の創業者の ジェフ・ベゾス 氏も尊敬する経営者として名を挙げている、 そのDNAを受け継ぐ矜持を以てこの難関に当たって欲しく思うのです。
使用写真- Sony Headquarters( photo credit: switchstyle via Flickr cc)
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