歴史は繰り返すとは良く言ったもの、 かたむき通信に取り上げた YKK戦争 に巻き込まれる形で街から姿を消した昔懐かしい商店街の電器屋さんのように 今また別勢力に駆逐されつつある家電量販店[K1] が悲痛な叫び声を挙げています。 別勢力とは即ちアマゾンに代表されるドットコム企業であり 即ちネットショップの攻勢の前に悲鳴を上げているのです。
近年、顧客の購買行動として ショールーミング なるキーワードが登場しました。 家電量販店に実物を確認しておいて 購入についてはネットショップを利用する行動をそう呼びます。 去年2011年に元年と呼ばれるようにかなり普及を見たスマートフォンは 家電量販店々頭にて様々な情報を検索するのに容易です。 ネットに於いては価格の比較こそ得意とする処ですから 必然的に家電量販店は全国最安値との価格競争路強いられます。 即ちショールーミングとは嘗て家電量販店が街の電器屋さんを駆逐した 安売りの新しい手法とも言えるものと断じて良いでしょう。
ネット勢力の代表たるのがかたむき通信にも扱った値段比較サイトの
価格ドットコム
や
PCボンバー
などそれに参陣するネット小売の面々[K1]
であり、その旗手として厳然と存在するのが最大手のアマゾンです。
家電量販店が生き残りを賭け合従連衡を進めるのも
奇しくもヤマダ電機創業者が喝破しその基本方針ともされた お客さんに取って一番分かり易いサービスは価格である と言う主張の従来自軍の最強の部隊として機能していたものが 突然裏切って自らに襲い掛かる状況となっているのでした。 此処に嘗て街の電器屋連が家電量販店にその安売りを避難したように 今は家電量販店がネット勢力、特にその旗手たるアマゾンに 非難、中傷、誹謗の言を繰り出すものとなった様子が日系ビジネス記事[※1] に見て取れます。 此処にその主張はアマゾンの値付けが 不当廉売 に当たるとするものですが、その本質は嘗て自らが言われた処のものと変わらない 自らに不可能な価格付けへの不満であるには違いありません。 その是非は公取委などの介入する処となるでしょうし、 定型的な解釈も未だ為されず判定の難しいものですが、 いざ非と判断された際には家電量販店の凋落が加速するのは間違いありません。 謂わば家電量販店側は諸刃の剣を振り回しているとも言え、 その苦境が明白に窺い知れる所業とも取れます。
メーカーから価格主導権をも奪った家電量販店はその覇権を謳歌しましたが、 一旦奪い去った牙城を死守すべく合従連衡及び敵を非難するばかりではなく、 自らにも新施策を打っています。 それはかたむき通信に記した家電量販店上位3社の方策[K3] に如実に現れているものです。 業界首位にヤマダ電機は飽くなき拡大方針を貫きそれは土地分譲まで進みます。 業界2位のビックカメラは都市圏への強みを活かしユニクロなど他業種とのコラボを志向します。
そして第3位のエディオンが 地域密着型ビジネス に辿り着いたのは実に興味深い施策と言えます。 近年 でんかのヤマグチ やスーパーマーケットの 平和堂 に成功例を見るこの手法をエディオントップは 労働集約型のビジネスは廃らないしそれは自らがやる、 と力強く主張しますが、 それこそが家電量販店が嘗て窮地に追い遣った街の電器屋さんのビジネスモデルなのでした。
使用写真- ヤマダ電機 LABI-1 日本総本店 池袋( photo credit: kawanet via Flickr cc)
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