デジタルデータの保存期間を数億年単位で可能にする技術

古来人間はどのようにして情報を伝達して来たか考えてみれば 口伝であったり伝統芸のような技の伝承であったりしました。 これは人があってこその情報伝達でした。

比較的新しいものとして文字が開発され この技術を用いれば粘土板に刻まれ木簡、紙に書かれたその情報は 人間の手を介さずとも数千年の長きを、 空間的な距離を飛び越えて情報の伝達が可能となりました。

此処100年ほどではデジタルデータが登場し その記録密度は粘土板や紙の比ではなく 小指の先程の小さな面積に新聞紙何枚分もの情報が詰め込まれるようになりました。 そして情報伝達の技術も発展、インターネットが登場し、 一瞬にして情報は世界中に配信される処のものとなりましたが、 しかしその記録情報の保存に於いては極めて長期に保存出来る手法は皆無でした。 実は紙などが軽々超え得る100年を超える手法は存在しませんでした。

デジタルデータを長期保存する需要は普段は意識に上りませんが 人類の歴史を見れば恐らくは必須であるのでしょう。 アーカイブたる国立国会図書館を鑑みればそれは明白です。 然るに今回 株式会社日立製作所 が研究を立ち上げ、京都大学工学部と協力するなどして 或る程度目処が立った処で発表、公開された旨、 同社の2012年9月24日付けのプレスリリース 〔※1〕 に配信されています。

その手法は石英ガラスにレーザー光で刻印するものです。 現代版の粘土板と言って良いのかも知れません。 従ってその読み出しには書物を読む程ではないにしろ或る程度の簡便性が求められ 市販の光学顕微鏡でも可能な方法も考案されています。

現在この開発された技術を用いて石英ガラスに4層記録を行った結果は 記録密度はCD上回り、また保存期間は数億年以上と目されるものとされています。 驚くべきことに1000℃で2時間の加熱試験を施しても情報に劣化は無く読み出し可能であり、 火災等を考えれば一般的長期保存の条件をクリアしたものです。

この開発された技術についてはASCII.jp×デジタルに 開発者のインタビュー記事が掲載 〔※2〕 されており、技術も図解入りで簡単に説明されています。 開発者は本来半導体メモリの研究に従事しており、 恒久的データ保存を新しい研究テーマとして2007年に取り組み始め 2009年には最初の発表を行い、そして今回の技術を開発したものとしています。

情報の記録時には短時間にエネルギーを集中させるべく 数GWに及ぶピークパワーが必要となり、 これは普通のBlu-rayで使われているレーザーが数百mWであることを考えると 非常な高出力で特殊な装置が必要となりますが、 情報密度がCD並みをクリアしていることから 国立国会図書館などでは採用が考慮されても良いレベルでしょう。 更には日立は記録密度を向上させるべく研究を進める旨言及しており インタビューにも先ずはDVD並みの記録密度の実現が考えられていますので、 需要は一層高まるものと思われます。

追記 (2014年10月21日)
本記事で2012年に石英ガラスにレーザー光で刻印する技術を紹介した際には其の記録密度はCDに相当する4層に留まるものでした。 其の翌年2013年にはDVD相当の26層記録が実現されていましたが、 2014年10月20日此れが100層に達した旨 〔※3〕 報告されました。 継続的な京都大学工学部の三浦清貴研究室と日立製作所の共同研究に依る成果で100層の記録密度はBlu-ray Discに相当します。 データの保存寿命は3億年ともされ此の長寿命を活かして九州工業大学と鹿児島大学の共同開発になる宇宙船はやぶさ2相乗り小型副ペイロード しんえん2 に遠い未来へのメッセージを刻印した石英ガラスを搭載する旨、日立のニュースリリース 〔※4〕 に記述されています。

使用写真
  1. Assyrien( photo credit: Groume via Flickr cc
参考URL(※)
  1. 石英ガラスの内部にCD並み容量のデジタルデータを記録・再生する技術を開発(日立:2012年9月24日)
  2. 保存期間は3億年? 最強のメディアの正体を日立製作所に聞く(ASCII.jp:2012年11月19日)
  3. 3億年のデータ保存が可能 石英ガラスに100層記録、容量BD並みに(ITmedia ニュース:2014年10月20日)
  4. 石英ガラスの内部にブルーレイディスク™並みの記録密度でデジタルデータの記録・再生に成功~100層記録による大容量化と3億年のデータ保存寿命の両立が可能に(日立:2014年10月20日)
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