スマートウォッチとBluetooth 4.0の深い関係

スマートウォッチがだんだんと世に現れ出し、 スマートフォンの王者iPhoneを擁するアップル社も此の流れに棹差す以外なかろうと かたむき通信にものしたのは去年2012年12月29日の記事[K1] でした。 当記事では既に世に送り出されているスマートウォッチを幾つか紹介もしたように ウェアラブルコンピュータとしてその機能を便利に利用する人々も ガジェットファンには増えて来ているのです。

Bluetooth Logo Rune photo credit by IntelFreePres
Bluetooth Logo Rune photo credit by IntelFreePress

スマートウォッチの多くはスマートフォンとの連携機能を持ちます。 特にiPhoneとの連携はアップルファンからも期待されるもので それを売りにするカシオ計算機の腕時計 GB-6900 シリーズも記事[K2] にしました。 この記事の中にも取り上げたのが多くのスマートウォッチの登場を促進せしめる Bluetoothブルートゥース 4.0 であり、このBluetoothの規格のバージョンが3から4に上がったことと スマートウォッチには深い関係があるのでした。

BluetoothとはIT機器の近距離に於ける無線で通信する方法の規格です。 これを聞けば些か疑問が生ずるのではないでしょうか? 無線通信と言えば 無線LAN赤外線通信 もある、それと如何違うのか、なる疑問です。 実はその疑問がこの規格の普及を妨げる大きな要因の一つでした。 この両者の合間にあってBluetoothはその位置付けが曖昧なものとなっていたのです。

例えば無線LANと言えば明確に事務所内などで それぞれのパソコンや周辺機器を無線で繋ぐものとしてイメージ出来ますし 赤外線通信と言えば携帯電話同士をくっ付けあって電話番号などを交換し合うなど 此方も利用イメージは明確です。 一方Bluetoothではマウスやキーボード、ヘッドセットなどが利用されることが多くなりましたが、 どれも一般には有線での利用が主で所謂数寄者が使うもの、と言う印象が未だあり、 これがBluetooth使用の決定的イメージと言うものは未だ醸成されていないのではないでしょうか。

このBluetoothの登場はそのバージョン1.0の発表されたのが1999年7月26日、 当初は近距離通信はこの企画を持って実現されるものと想定されていましたが、 通信速度がネックとなってどうにも普及が進みませんでした。 そうこうしている内に低価格化した無線LAN関連機器と普及した Wi-Fi規格を以てその利用を目論む機器が代替されていったのです。 今ではスマートフォンにもゲーム機にもWi-Fiが搭載されているのは当たり前になっており、 果てはデジカメやビデオカメラも撮った其の場でサーバーに映像が保管されるような仕組みが Wi-Fiで以て提供され始めています。[※1] 言ってみればBluetoothの活躍の場は パソコン周辺機器やヘッドセットに限られて来てもいるのでした。

このような状況下にBluetoothのバージョンとして主流となっていたのが 2007年3月28日に策定されたバージョン 2.1+EDR (Enhanced Data Rate)でした。 そして2009年4月21日にバージョンを3として高速化が図られるも それ程利用される様相を呈しは残念ながらしませんでした。

そして2009年12月17日に策定されたのが Bluetooth 4.0 であり3から方針を180°とも言う程転換され大きく変貌したものになっていたのです。 最も注目すべきはその対称型通信時の速度でしょう。 3では24Mbps迄高められたそれは4.0では1.0Mbpsに抑えられています。 バージョンが上がっているにも関わらず通信速度は落ちているのです。 この高速通信を犠牲にして迄高められた機能が 省電力 でした。 2012年11月18日の記事にも省電力通信技術 BLE に言及しましたがこのBluetooth 4.0の別名ともなるBLEは実に Bluetooth Low Energy の略なのでした。

この決定は見事な割切りとなって Bluetoothの位置づけと言うものが実に明確になったものと考えます。 高速で大容量を遣り取りする無線LANとの棲み分けも明らかでしょう。 この高い省電力性能こそスマートウォッチが求めていたものでした。 現在でもスマートフォンの電池の持たなさに不満を抱く向きは多くあります。 加えてスマートウォッチが帰宅するたびに充電を義務付けられるのでは堪ったものではありません。 これを以てこそカシオ計算機のGB-6900シリーズは 1日のBluetoothの接続時間を12時間と想定した場合、 たった一つのボタン電池の寿命を2年もの長きに延ばし得た[※2] のです。

言わばBluetoothはバージョン4.0を以て初めてそのキーワードを 省電力 にその利用イメージは 待ち受け と明確な役割を担う場を得て、 これからスマートウォッチと共に成長、普及することが期待されるのだと考えます。

但し現時点で注意しないといけないのは2009年末に策定され 既にまるまる3年を閲していると言うものの バージョン4.0への対応機種が未だ少ないことで iPhoneに於いても新機種でないと新バージョンへの対応はなされていませんので 勇んで最新式の省電力スマートウォッチを入手したものの 手持ちのスマートフォンと連携出来ないことのないよう事前の確認は必須です。

追記(2013年2月24日)

Apple社製スマートウォッチの可能性について Appleの腕時計型コンピュータの特許取得で現実味を帯びるiWacth を配信しました。

追記(2019年2月6日)

本記事ではBluetooth 4.0を紹介するものでしたが既に六年を経て、 2019年1月28日、 Bluetooth 5.1 規格に於ける direction finding feature (方向探知機能)が公表されると同時にメーカー向けに提供が開始された旨、 ITmediaが伝えて[※3] います。 記事では此の方向探知機能を用いればセンチメートル単位で搭載アイテムの位置を確認可能であり、 またGPSが届かないインドア施設での位置情報システムにも利用出来るもの、としています。

さて、今回追記にてバージョン5.1を紹介する処となったのでしたが、 本記事に紹介したバージョン 4.0からBluetoothはどのような変遷を辿ったのでしょうか、 其れはバージョンで言えば 4.0、 4.1、 4.2、 5.0、 となるもので、 ヒトリアル の2018年5月22日の記事[※4] など見ると簡潔にまとめられていて分かり易くあります。 本記事に4.0は省電力機能たる Bluetooth Low Energy が実装された旨、記しましたが、此れが4.1になって4.0の問題点を解決すべく 通信の品質向上自動再接続ネット直接接続 が追加、 また4.1から4.2へのバージョンアップで 転送速度向上と其れの齎す省電力化 が追加され、例えば2016年に発売されて今尚人気機種のiPhone7などは Bluetooth 4.2が搭載されているそうです。 そして4.2から5.0に於いては通信範囲と転送速度が主な変更点とされ 通信範囲は10mから100mへ広がり、 転送速度は最大2倍になり、通信速度も約2倍となったとのことで、 此方は2017年発売のiPhone8に搭載[※5] されています。 因みに此のバージョン 5.0は2016年6月16日に発表[※6] され、 同年2016年12月8日にリリース[※7] されています。

使用写真
  1. Bluetooth Logo Rune( photo credit: IntelFreePress via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. Apple純正スマートウォッチ(iWatch)の可能性(2012年12月29日)
  2. G-SHOCKがiPhoneに対応したGB-6900AAのレビュー記事まとめ(2012年11月18日)
参考URL(※)
  1. いままでとどう違う? 「Bluetooth 4.0」(朝日新聞デジタル:斎藤・西田のデジタルトレンド・チェック:2012年4月5日)
  2. MEDIASと連携するG-SHOCK『GB-6900』開発者インタビュー(週アス+:2012年3月15日)
  3. Bluetooth 5.1ではcm単位の方向探知が可能に(ITmedia NEWS:2019年1月29日)
  4. Bluetooth5.0、4.2、4.1、4.0の違いとバージョンの互換性を解説!知らないと損する?!(ヒトリアル:2018年5月22日)
  5. iPhone 8 - 仕様(Apple日本公式)
  6. 「Bluetooth 5」正式発表 4倍遠くに2倍速く、2017年初頭までにリリースへ( ITmedia NEWS:2016年6月17日)
  7. Bluetooth 5 Now Available(Bluetooth Technology Website:2016年12月7日)
かたむき通信 iWatch 関連記事一覧
  1. Apple純正スマートウォッチ(iWatch?)の可能性(2012年12月29日)
  2. 第6世代iPod nanoをスラップ腕時計にするリストバンド(2013年1月12日)
  3. スマートウォッチとBluetooth4.0の深い関係(2013年1月28日)
  4. Appleの腕時計型コンピュータの特許取得で現実味を帯びるiWacth(2013年2月24日)
  5. iWatchがアップルに依って漸次全世界的に商標登録され高まる期待(2013年7月4日)
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