エレキギターはアメリカ人の大らかさで出来ている

エレキギターの創始者は諸説はあるでしょうがトドメは Leo Fenderレオ・フェンダー にさすでしょう。 現在の フェンダー 社の創設者でもあります。

このレオ・フェンダーが広く普及せしめたエレキギターは見れば見るほど不思議な楽器です。 とても音程に細かい奏者には受け入れられるとは思えない、 何とも大胆不敵な作り方をされた楽器です。 恐らく欧州ならば受け入れられなかったのではないでしょうか。

フェンダーギターの従来にない発想と言うべきか、 神をも恐れぬその所業、先ず何よりはネックジョイントがボルトオン(笑)。 面倒臭ぇ、螺子ねじで留めちめぇ!とばかりに 本来は実に繊細な作業が要求されるボディとネックの接合部はボルト留めされています。

この構造あってこそ Eric Claptonエリック・クラプトン の愛器 ブラッキーブラウニー も生まれ得たという寸法です。 ボルトオンネックはその大らかさが実に分かり易い部分です。

其れに対して些か分かり難い大らかさは指盤です。 しかしヴァイオリニストが一度エレキギターを手に取れば直ぐにも其の不自然さに気付くでしょう。 若しかしたらこんなものではまともに弾ける訳がないとクレームが付くかも知れません。 なんとなればヴァイオリンには付いている指盤のテーパーがエレキギターにはないのでした。

ヴァイオリンの指盤の表面を見てみれば丸みを帯びているのが分かります。 ヴァイオリンのネックはボディ接合部からヘッドへ向かうに連れ細くなっています。 そして指盤表面の丸みもネックの細さに添うようにきつくなっているのが分かるでしょう。 実はこれは円錐形の一部をなしているのでした。 円錐形では底から頂点に向かうに連れて断面の半径は小さくなります。 ヴァイオリンの指盤の表面の丸みも同じくヘッドに近いほど半径が小さくなる理屈です。

処でエレキギターの指盤も丸みを帯びています。 そしてその丸みは何処まで行っても同じ丸みなのでした。 ボディに近い部分もヘッドに近い部分もその丸みの半径は同じです。 エレキギターの指盤は言って見れば円筒形の一部なのです。

ヴァイオリンとエレキギターの指盤の構造の相違は弦を張ればはっきりします。 円錐形に弦を張るのをイメージするのは簡単でしょう。 処が円筒形に弦を張ろうとした時それは円筒形に対し斜めに渡すことになるのでした。 イメージがし難く、違和感と言うよりは気持ち悪さが感じられるのではないでしょうか。 これに於いて押弦した際に音程が安定する筈もありません。 エレキギターはここでも音程には無頓着な作りとなっているのでした。

理由は簡単です。 この如き構造にすれば1枚の刃物で指盤の表面を一気にガーっと削れば済むからです。 何とも大胆不敵(笑)。 ここでも、えぇぃ、面倒臭ぇ、そんなこたぁ構っちゃられるけぇ、 と言ったまるで生粋の江戸っ子のような威勢の良い啖呵が聞こえてきそうです。 そして受け取る奏者は細かい事ぁ四の五の言うな、 丸みが付いてりゃそれでオッケー、と言った訳です。

これは恐らくは当時のアメリカの奏者には細かいピッチよりも 音量が何よりも優先されたのではないか、と思われます。 時には音楽家に取って音量は音程に優先する、とも考えるのです。

進取性に富んだ気質と時代背景とを持つ新大陸アメリカでこそ多くの奏者により この大らかな作りのエレキギターは広められたのだと思います。 こうして作られた大らかなエレキギターは大らかな演奏者に大いに受け入れられました。 エレキギターはアメリカ人の大らかさで出来ています。

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