著作権者の権利を守るよりは団体としての既得権を守る方に御執心ではないかと訝しく思われる 音楽著作権管理事業者はなかなかに一般には目立たぬ政治的舞台での活動は活発なようです。 このように当該事業者を穿った見方をしてしまうのも、 今迄かたむき通信に伝えた違法ダウンロード刑罰化問題[K1~k5] やコピーガード問題[K6] などの経緯あってこそなのでした。
公正取引委員会は独占禁止法第8条の4 独占的状態に対する措置 の規定の適切な運用を図るために独占的状態にある事業分野を明らかにし公表しています。 音楽著作権管理においては現在この独占的状態に該当するとされているのです。 このガイドラインは逐次時代を鑑み改定されていますし、 異見申し立ても可能となっているのですが、 音楽著作権管理事業者が今回申し立てた意見を公正取引委員会(以下、公取委)で吟味検討、 却下されるに至ったのです。
公取委は2012年8月29日に 「独占的状態の定義規定のうち事業分野に関する考え方について」の一部改定について を配信[※1] 、平成22年の調査の結果などから独占的状態ガイドラインの一部改定を行うに当たっては 平成24年6月14日に改定案を公表、7月13日を期限にパブリックコメントを求めていたのものに 4件の意見提出がありこれを含み取りまとめた内容となっています。 この4件の内1件が音楽著作権管理事業者の意見であったのでした。
音楽著作権管理事業者が音楽著作権管理業を 独占状態とされる認定から外すべき理由として挙げたのは以下となっています。
- 「音楽著作権管理」という役務の需要者と供給額
- 「同種の役務」の範囲
今回公取委が配信した資料の内、別紙2として含まれる 昭和52年11月29日に公正取引委員会事務局から公表された 独占的状態の定義規定のうち事業分野に関する考え方について の項目1として 用語の定義 が用意されその(2) 役務の場合 に 同種の役務 について触れられ、また項目2として 市場構造要件 が用意され、そこには 国内総供給価額要件 について言及されています。 これ等定義に音楽著作権管理は該当していないのが理由として挙げられているのでした。
この意見に対しての公取委の回答は先ず、 1番の供給額について同委員会が行った平成22年の国内総供給価額及び 事業分野占拠率に関する出荷集中度調査の結果を鑑みた際には、 著作物使用料として算出される音楽著作権管理業の国内総供給価額は950億円を超えるとしています。 また2番の同種の役務に関しては公取委の回答の後半部を以下に引用しましょう。
音楽著作権管理は,著作権者からみれば,適法かつ簡易迅速な手続を通じて, 多数の利用者からの使用料の分配を受けることを可能とするものであり, 利用者からみれば,利用形態に応じ, 音楽著作権に係る一の権利や複数の権利を適法かつ簡易迅速な手続を通じて, 適正な使用料で音楽著作権を利用することを可能とするものです。 このことが音楽著作権管理の機能であり, この適正な使用料で利用することが可能となることによりもたらされる満足, 経済的効用が利用者にとっての効用であり,支分権によって異なるものではないと考えます。
この遣り取りを見れば明らかに音楽著作権管理事業者は、 利用者の立場を考慮から外している のが明らかで己の権利を主張したいが余り、正しく語るに落ちたと言えるでしょう。 これでこそ利用者にコピーをさせないがためには音質の悪化も構わずと言った姿勢[K6] が一貫して貫かれる異常な事態となっていると思われます。 この我が儘とも言える音楽著作権管理事業者の主張を 公取委が窘めるものとなっているのはなかなか面白い構図に感じられます。
音楽著作権管理事業者は決してその分野の主となる権限者ではありません。 主権限者は著作権者であり、その利用者です。 音楽著作権管理事業者は飽く迄脇役として その間を円滑に運用するべき役割に徹するべきでしょう。
かたむき通信参照記事(K)- 違法ダウンロードに刑罰を!~音楽業界団体の強い意向を自民公明両党が代弁(2012年5月24日)
- 違法ダウンロードでCDが売れないと言う主張は刑事罰法制化を必須とするほど本当のことなのか?(2012年6月10日)
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- 第180回国会にてDVDリッピング違法化及び違法ダウンロード刑罰化を含む著作権法改正可決10月1日より施行(2012年6月21日)
- CCCD(レーベルゲートCD)を以て音楽業界が音楽に対して如何に非道を為したか(2012年6月20日)
- 「独占的状態の定義規定のうち事業分野に関する考え方について」の一部改定について(公正取引委員会:2012年8月29日/2018年11月13日改訂:PDFファイル)