海賊版と知りながらパソコンや携帯電話に取り込むダウンロードを行った際には 2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されることとなりそうです。 これは日本の音楽業界の強い要望を受けて自公両党が議員提案するとされる法案のことですが、 これを聞いて音楽を楽しむ利用者一般はどのように受け取るでしょうか?
このニュースは毎日新聞2012年5月24日の朝刊に掲載され、 ネット上には毎日JPの クローズアップ2012:違法ダウンロード罰則案、国会提出へ ワンクリックで犯罪? (2019年3月24日現在記事削除確認) にページが用意されています。
音楽や映像の海賊版のダウンロードではなくアップロードについては 既に1990年代に違法となっていて10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が適用されます。 今回のダウンロードについては判断が難しい処で、 2010年の著作権法改正では違法とされ、民事上の責任を問われることになりましたが、 罰則は規定されませんでした。 またその翌年の2011年後半には音楽業界の意向を代弁する自公両党が 私的違法ダウンロード防止法案で罰則を科そうと準備しましたが見送られもしていました。 その判断の難しい由縁です。
そして今回CDの売れ行き不振は違法ダウンロードにあると信じて疑わない 音楽業界団体は又もや手元の有名人を動かし懇意の議員に働きかけて 己の取り分を掠め取る連中にはどうしても刑罰を与える必要があると 罰則法案の成立に向け動き出したという寸法です。
折りしも本かたむき通信では拡大するB-CAS問題に於いて 以下列挙する処の記事を配信し、音楽業界に革命を齎した スティーブ・ジョブズ氏に例を求めました。
氏はその物故後、グラミー賞にて特別功労賞に相当する Grammy Trustees Award を贈られています。 氏はその生前、音楽CDを売ろうとしたことは一度もありませんでした。
また昨日2012年5月23日には AKB48総選挙と政治選挙の相違を前田敦子さんの卒業から見てみる なる記事を配信しAKB48の総選挙と政治選挙を比較したばかりですが、 当のAKB48の発売するCDは凄まじい売上を見せています。 総選挙に於ける投票権の封入など一人に何枚も買わせしむるAKB商法として 批判の対象となることも屡ですが、 売るための工夫であるには違いありません。 今時付加価値のない商品が売れるのは仄聞にして聞いた試しがありません。
矢張りこの法案提出に関してはネット上には批判的な意見が多く見受けられる感じがします。 それらは文化審議会の著作権分科会小委員会委員を務めたジャーナリストの 津田大介氏の毎日新聞のインタビューに応えた意見に凡そ代表されるようです。 以下引用します。
前回の法改正を議論した小委員会には、 ダウンロードに刑罰を科すのはバランスを欠いていると考える人が多かった。 レコード協会が(違法化を)周知していない状況で、 一部の業界の意見を受けて法律を変えることに懸念と憤りを覚える。
最早音楽のみをパッケージした物理的CD販売というものは 売買システムとしては歪なものなのかも知れません。 歪なシステムを強要しても速やかに運営されることはないでしょう。 反発を招くだけです。 違法化は既に済んでいるのに治まらないとしたら よくよく自らの乗っかっているシステムに問題がないか考えて見るべきなのです。