SoftCASとTVチューナー、Tvtest、Tvrock~拡大するB-CAS問題

デジタルテレビ放送視聴に於ける B-CAS問題は拡大する一方の感があります。 かたむき通信にも2012年5月19日の記事 B-CASカード書き換え問題は新しいiTunesを齎すか? にその一端を伝えました。

デジタルテレビ放送視聴に制限を掛ける手法としてのB-CASシステムに対して その制限を外す手法が先ずは BLACK-CASカード として、次には B-CASカード書き換え として現れてきた状況でしたが、 それから程無くして SoftCAS なる手法が現れたのが2012年5月も終旬の23日の状況です。

B-CASシステムとは簡単に言えばB-CASカードを鍵として機能させるものです。 BLACK-CASカードは合鍵でしたし、 B-CASカード書き換えは鍵を幾つもの錠前に対応させるものでした。 今回のSoftCASは名前の表す通り、ソフトウェア的な合鍵になります。

デジタル放送対応のテレビではB-CASカードを物理的な鍵として 各番組の扉を開けられるように細工されています。 ではソフトウェア的な鍵とは何処に用いるのでしょうか?

パソコンは通常モニターを備えています。 そのモニターは見た目がテレビ受像機ですが、 テレビ番組を受信する機能を標準では備えていません。 テレビのように見えるものはテレビとして使いたくなるのが人情と言うものでしょう。 大凡パソコンはソフトウェア的な様々なことを解決するのもですから、 それは簡単なことでした。 従来からパソコンをテレビ受像機に用いる機能を後付する人は多かったのです。 この機能を実現するものが TVチューナー でした。

時代はデジタル受像機の時代となったとは言え需要は変わりません。 TVチューナーから受け取った信号を番組として人が見る形にするソフトウェアも用意されました。

  • Tvtest
  • Tvrock

上記などを主とするソフトウェアです。 ここでも勿論、デジタル時代のTVチューナーもB-CASシステムを必要としました。 同じくB-CASは鍵として機能しているのですが、 此処ではそれをソフトウェアで代替出来る条件が揃ったのでした。 其処に登場したのがSoftCASと言う訳なのですが、 此処にはその手法を詳細に記載することは避けたいと思います。

この手法は法的にどのような扱いを受けるのでしょうか? それは未だ明確ではないようです。 諸手を上げて歓迎する声もあれば、 明らかに違法であると言う声もネット上には多く見受けられもするようです。 管轄官庁である総務省は動き出していると言われますが かたむき通信2012年5月18日の記事 遂に消費者庁が大臣自らコンプガチャ規制に正式見解、違法が明確になる に見られるコンプガチャに於ける消費者庁のように明確な言及はないようです。 しかしこのような状況下では出来れば読者は慎重に行動を決めた方が良いでしょう。

このように管轄官庁が現実の後手に回るのは致し方のない処ですが、 未だBLACK-CASカードの対応に追われる中にB-CASカード書き換えの出現で驚きを隠せない処、 追い討ちを掛けるようにSoftCASが現れたのでは 対応と言うより些か思考停止に追い込まれるような事態なのではないでしょうか。 これに因って拙速に応答することなく利用者と同様、 管轄官庁にも慎重な対応を願いたく思います。

当該問題は権益と言うものについて複雑で根深い問題を含むものだと思います。 かたむき通信5月19日の記事ではその主たるシステムが歪なことに起因するのではないかとしました。 なんとなればアップル社の iTunes の登場で音楽業界に蔓延った類似する問題もかなり好い方向に向かったからです。 このプロジェクトを中心となって協力に推し進めた故スティーブ・ジョブズ氏は評伝 スティーブ・ジョブズ Iスティーブ・ジョブズ II の中で、人々は好き好んで法を犯そうとしているのではなく、 そうせざるを得なく追い込まれているのだ、 と喝破しています。

無論コンテンツ製作者も対価を受け取らなければやっていけません。 しかし、人は納得いく対価については支払う筈であろうことは 海賊版が入れ乱れていた音楽業界にiTunesが齎した体系によってひとつ証明されたと言えるでしょう。 コンテンツ製作者に対価が渡ることに人々は吝かでないのです。 恐らく現在、デジタルテレビ受信に於いては コンテンツ製作者に渡る以上の対価が別の処に流れていると感じさせられているのでしょう。

音楽業界に混乱が招かれていた時期に於いても矢張り難しい問題でした。 当時は海賊版の蔓延にファイル共有ソフトが使われました。 このソフトウェアの一つであるWinny(ウィニー)製作者の 金子勇 氏は当初著作権法違反の幇助の罪に問われました。 一審の地裁では有罪、高裁では無罪、これを検察が上告したものを 最高裁は棄却し無罪が確定しました。 これを一つの前例と鑑みても当該問題は簡単な問題でないことは明らかです。 それでも早期の、しかし慎重な解決が望まれます。

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