曲がり角の家電量販店~YKK戦争も今は昔、忍び寄るネットの影

現在の家電量販店の合従連衡を象徴すべき 株式会社ビックカメラ株式会社コジマ の連携は Acenumber Technical Issues に今年2012年5月に伝え[※1] ました。 今や家電量販店に於いては生き残りに様々な方策を以て望み、 ある者は資本力を強め、ある者はスケールメリットを求める、 連携、買収がその大きな一つの手法となっています。

家電品は昔懐かしい街の電気屋さんから買うものと決まっていた頃から 1980年代には家電量販店がだんだんとその勢力を伸ばし始め その後30年間伸び続ける業界となるのでした。 北関東で狼煙を上げたのは 群馬のヤマダ電機、栃木のコジマ電気、茨城のケーズデンキにて、それら頭文字を取って YKK戦争 とも呼ばれる安売り合戦が繰り広げられました。

ヤマダ電機店舗外観(2019年2月9日撮影)
ヤマダ電機店舗外観(2019年2月9日撮影)

その影にいつの間にやら街の電気屋さんは駆逐され余り見掛けないものとなりましたが、 今、その街の電気屋さんを追い遣った家電量販店が分岐点、曲がり角に来ているのです。 家電量販店は今、生き残りを賭けた厳しい競争の渦中にあります。 この大きな転換点は人気テレビ番組にも取り上げられる処となりました。 テレビ東京の ガイアの夜明け の2012年9月25日放映分です。

Acenumber Technical Issues ブログにも家電量販店業界のシェアランキングを 4位のビックカメラと5位のコジマを単純計算に足して順位を以下の如く再構成[※1] しました。

  1. ヤマダ電機:2兆0,161億円:35.1%
  2. ビックカメラ+コジマ:1兆0,273億円:17.9%
  3. エディオン:8,200億円:14.3%
  4. ケーズホールディングス:6,486億円:11.3%
  5. 上新電機:3,856億円:6.7%

2000年頃数多く有った家電量販店は今、 合従連衡が続き幾つかの勢力に纏まりつつあるのでした。 まさに戦国時代さながらのこの様子をガイアの夜明けでは更に細かく紹介しています。

上記ランキング首位の 株式会社ヤマダ電機 に於いてはダイクマ、サトームセンなど21社もの企業を買収しており、 また他方九州で圧倒的シェアを有していたベスト電器もサクラヤを買収していました。 このベスト電器をヤマダ電機が買収した案件はかたむき通信に伝えた[※1] 7月中旬当初、否定される処でしたが今や確りベスト電器はヤマダ電機傘下に収まっています。 記事にした如く正しく周辺状況から妥当だった通りの結果となったのでした。 これを以てヤマダ電機のシェアは更に高まったのでした。

そして Acenumber Technical Issues に合併買収で2位に繰り上がったビック、コジマ連合に於いて、 業界トップの座をヤマダに奪われて久しいコジマは 実はその3年前から他社との提携を模索しておりビックカメラが好適と判断、 都会型店舗のビックカメラにも地方展開の喧しいコジマとの連携はメリットがあるとして 合意がなされたのでした。 またビックカメラはコジマの以前にソフマップを買収しています。

第3位の 株式会社エディオン は固よりその母体自体がデオデオとエイデンの合併であり、 更には石丸電気をも買収しています。 以上見ただけでも業界の再編の凄まじさが垣間見えようと言うものです。

この大きな再編を伴う生き残り競争を招いているのは 高齢化、人口減でシュリンクする市場にもあるのですが、それだけではないのです。 相手は今迄のYKK戦争のようにリアル店舗だけではないのでした。

家電量販店の敵が家電量販店のみにないのは Acenumber Technical Issues ブログに記しました[※1] し、かたむき通信にもネット小売最大手のアマゾン社の脅威を伝えた処[K1] です。 そしてこれだけネットが普及した現在、そこからの脅威は勿論アマゾンだけではないのが、 ガイアの夜明けに紹介されました。 テレビに紹介されずともネットに親しく接しているユーザーなら 一度はそのWebサイトを見たこともあるでしょう。 価格ドットコム です。

価格ドットコムとは上手い名前を付けたもので検索エンジンに 価格 と問えば最上位にそのURLを返してくれると言う、 価格を調べたいと思った人が訪れるに相応しい、 何ともネット次代に即したサイトとなっています。 このサイトは正しく価格のサイト、 様々な商品が様々な店から販売されるその販売価格を比較出来るサイトなのでした。

この価格ドットコムには様々な企業、店舗がその商品販売価格を提示しているのですが、 中にも異彩を放つ店舗がガイアの夜明けに紹介されました。 株式会社アベルネット の運営する PCボンバー です。

アベルネットは設立が平成10年4月20日と10年余りの社歴にも関わらず、 PCボンバーに依って今や従業員80名、年商264億円を計上する 勢いのある企業となっています。 PCボンバーが価格ドットコムに異彩を放つのは最安値常連店として其処に在るからでした。 それもその筈、当該社に於いて最も重要なセクションは 常に価格ドットコムの最安値を監視する部署であるのです。

拡大の一途を辿った家電量販店とはまた一味違う運営方針がPCボンバーにはあります。 その監視セクションもある秋葉原の一角の小さな古びたビルの1階は その狭さにも関わらず倉庫として機能しています。 此処に重要なのは回転率です。 PCボンバーでは人気の売れ筋の商品の売れ線の色に限り仕入れているのです。 狭い倉庫に山と詰まれたこの商品は従って1日~2日ではけてしまうと言います。 これは大きな倉庫では管理コストが高いためで、 これを省き低価格を達成する一つの要因としているのでした。 更には現金仕入れに徹底した仕入れコストの削減で 価格ドットコム最安値を常時維持出来ているのです。

奇しくもヤマダ電機の創業者であり、現会長の 山田昇 氏は お客さんに取って一番分かり易いサービスは価格である と喝破します。 この言葉通りPCボンバーを擁すアベルネットは200億円を越える年商を達成しているのでした。

ガイアの夜明けのインタビューに或る男性は 家電量販店には申し訳ないが買わずに現物を確かめるだけ と答えます。 そして彼と同様今や顧客は現物確認を家電量販店でして後、 それを買うのは価格ドットコムなどのネットで調べて、 即ちPCボンバーなどで購買行動に及ぶのでした。 読者にも思い当たる節は多いでしょう。 量販店は今や展示場扱いとされているのです。

家電量販店は生き残りを賭けた競争に懸命です。 そしてその厳しさを更に増す大きな要因はネットとの相克にあるのです。

追記(2012年9月28日)

ビックカメラとユニクロの共同店舗 ビックロ の開店を受け ビックロと家電量販店上位3社の方策 を配信しました。

かたむき通信参照記事(K)
  1. 家電量販店業界再編に影を落とすAmazonコムの脅威(2012年7月16日)
  2. ヤマダ電機のベスト電器買収、連結子会社化について肯定はなくとも周辺状況から極めて妥当(2012年7月12日)
参考URL(※)
  1. エディオン対ビックコジマ連合~家電量販店の敵は家電量販店か?(Acenumber Technical Issues:2012年5月12日)
  2. 10周年企画「ニッポンの生きる道」第6弾 縮小市場をどう生き残る!~家電量販店の新たな挑戦~(テレビ東京/ガイアの夜明けバックナンバー:2019年10月17日現在記事削除確認)
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