超小型車認定制度の国交省案へのパブリックコメント募集に規格概要を見る

約半世紀振りの新車両区分[K1] ともなれば、 自動車メーカーのそれぞれの思惑も入り混じり世間の注目度も高く、 凡そ登場する新車体は電気自動車、所謂EVともあって その新しく開かれる巨大市場に国内は言うに及ばず海外の リチウムイオン電池メーカーも既に自動車メーカーからの受注を受けんと鎬を削るのが 超小型車 にて、一昨日2012年11月22日には国交省から 超小型モビリティの認定制度 の法制化スケジュールを来年2013年1月の公布施行を睨んだ パブリックコメントの募集受付が開始[※1]されました。 かたむき通信に今秋冬にも法制化の動きか、と伝えたものから 少し遅れは発生したもののメーカーなど巻き込んでのことと考えれば かなり速やかな動きとなったように思います。

超小型モビリティ導入に向けたガイドライン1(国土交通省)
超小型モビリティ導入に向けたガイドライン1(国土交通省)

パブリックコメントが募集されるに際し、 超小型車とは何ぞや、と問えば国交省が今年2012年6月の時点で公開したガイドライン[※2] には此のような図が挿入されています。 かたむき通信には何度か伝えたトヨタ車体の COMSコムス[K2〜4] は既に市販され公道走行するに上図に示される通り 原付二輪・四輪 のミニカー区分で見做されている[K4] のでした。

国交省などの意向を受けた各メーカーは東京モーターショー2011には 下の図の如き試作車を出品、展示してもいます。

超小型モビリティ導入に向けたガイドライン2(国土交通省)
超小型モビリティ導入に向けたガイドライン2(国土交通省)

6月には国交省駐車場で試乗会なども開かれ実際に走行する試作車も数台あり[K5] その内のトヨタ車体のCOMSは既にミニカーとして市販され、 未だ走行不能だったホンダのマイクロコミューターコンセプトは今月11月13日には マイクロコミュータープロトタイプ へと進化発展し公開[K6] されると言う具合に愈々現実味を帯びてきていた 超小型車新車両区分であったのです。

今回国交省がこの超小型車の認定制度案に対するパブリックコメントを 募集するに当たって公開した資料2種[※3・4] が実際に一般がこの条件に用いるものではなく認定制度の為の走行条件とはなりますが、 この半世紀振りの新車両区分に準じ、 その性質を一層鮮明に浮き上がらせる材料となるのは間違いないでしょう。

超小型モビリティの認定制度について[※3] の第2項 超小型モビリティ認定制度の概要 にはⅠの(1)が 対象とする超小型モビリティ なる題目ですので正しく超小型車の規格そのものと言え、 それは以下となっています。

  • 長さ・幅・高さ:軽自動車の規格内
  • 乗車定員:大人2人または大人1人と子供2人
  • 定格出力:8kW以下(内燃機関の場合は125cc以下)
  • 運行場所:高速道路等(最高速度60km/h超の道路)を運行せず、地方公共団体等によって交通の安全と円滑が図られている場所

高速道路の走行不可なのは勿論で、 また乗車定員も従来言われていた処と同様に思いますが、 その大きさは軽自動車と同じ車格であれば些か意外な気もします。 軽自動車は一応横幅1.48mと決められていますが、 超小型車に於いては基準緩和の条件として二輪自動車の基準を適用出来る 相応の車幅を1.3mとしていますから実質これが最大幅となるのかも知れません。

思ったより大きな車格を有しながら高速道路走行は不可で そのためまた破壊試験が免除される部分もあるのですが、 従って定格出力も低く抑えられており、 その面ではまた一般道に於ける普通自動車との兼ね合いで物議を醸す要因ともなるかも知れませんが、 其処等辺りがパブリックコメントに求められているのでしょう。 自動車メーカー等の専門家的関係者のみならず 一般のユーザーも公募に応じるのが望まれる処です。

超小型モビリティ導入に向けたガイドライン3(国土交通省)
超小型モビリティ導入に向けたガイドライン3(国土交通省)

此の図は国交相の6月に配信したガイドラインに示される 超小型モビリティの利活用が想定される場面ですが、一昨日配信の資料 保安基準の主な取扱い・考え方[※4] にも 超小型モビリティの導入による社会的効果 の図として流用されるものです。 さて国交省の目論見通り超小型車が現今の問題を有する交通社会に一石を投じ 図の如き理想郷のような穏やかな交通社会が実現されるか、 または国内外リチウム電池メーカーの草刈場と化すのか、 の重要な局面に多くの意見が有用に利用されて欲しいように思います。

追記(2019年11月13日)

頃日、超小型車に関して、正式の発表としては未だ見られませんので、 恐らくは二官庁から世情を伺うためのメディアへのリーク情報と思われる報道が立て続けに齎されました。 国土交通省からのもの[※5] と、経済産業省からのもの[※6] です。 前者、国交省に関しては、現状公道走行可能な超小型車はトヨタ社の COMSコムス[K2〜4] しか見られず、此の主たる理由として、 超小型車を認証する枠組みが車両区分に見られないと言う、 本記事に紹介した様にパブリックコメントを募集したにも関わらず、 其れから9年を経て未だに煮え切らない国土交通省の姿勢が挙げられています。 此れに対する後者の経産省に関しては、 超小型車購入時に最大で10万円程度となる補助金支給を検討していると言うものです。 経産省が様々な社会問題解決の糸口となる可能性を超小型EVに見出し、 延いては経済成長に繋がり得る可能性を見出しているのに対して、 実運用を担う国交省が渋い態度を崩さない此の続け様の対照的な二情報は、 意地悪な見方をすれば、 漸く重い腰を上げ、車両区分の枠組みの検討に入った国交省のリーク情報に対する、 経済の行き詰まりに藁をも掴む思いの経産省が敏感に反応して発破を掛けるが如きリーク情報の様でもあり、 縦割り行政の対立構造が滲み出る様にも感じられるものです。

使用図写真(3点とも)
  1. 超小型モビリティ導入に向けたガイドライン(国土交通省:2012年6月:PDFファイル)
かたむき通信参照記事(K)
  1. 超小型車~約半世紀振りに自動車に新車両区分検討開始(2012年5月27日)
  2. トヨタ車体から超小型車第1号コムス(COMS)発売、実質負担額59万8,000円から(2012年7月2日)
  3. トヨタ車体コムス(COMS)発売後の超小型車の動静(2012年7月8日)
  4. 超小型車第1号と目されるコムスの現行の運用はミニカーに準拠(2012年9月3日)
  5. 新設超小型車の波紋~試乗可能車はトヨタがコムス、日産がニューモビリティコンセプトを用意(2012年6月23日)
  6. ホンダの超小型車への本気~マイクロコミュータープロトタイプ公開(2012年11月13日)
参考URL(※)
  1. 報道発表資料:超小型モビリティの認定制度の策定に係る意見募集について(国土交通省:2012年11月22日)
  2. 超小型モビリティ導入に向けたガイドライン(国土交通省:2012年6月:PDFファイル)
  3. 超小型モビリティの認定制度について(国土交通省:2012年11月22日:PDFファイル)
  4. 保安基準の主な取扱い・考え方(国土交通省:2012年11月22日:PDFファイル)
  5. 各メーカー開発に勤しむも実現できたのはコムスのみ!超小型EVが普及しないワケ(WEB CARTOPWEB CARTOP:2019年11月6日)
  6. 超小型EV購入に補助金 新移動手段、最大10万円も(共同通信:2019年11月9日)
スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする