Googleの検索エンジンのアルゴリズムに大変動が起きています。 それは従来の考え方を根本的に覆すものでもあります。
この傾向は何も今に始まったものではないのは確かです。 その誕生からGoogleは検索エンジンをユーザーオリエンテッド、 利用者主体に改善を続けて来たのは明らかです。 そしてYahoo!に代表される登録型検索エンジンから 遥かに利便性を増したのは日本に於いては当のYahoo!ジャパン自体が Googleの検索エンジンを用いていることからも明らかでしょう。
そして頃日には確かに大変動と称して構わない変化がありました。 ペンギンアップデート であり パンダアップデート でしたし、他にも EMDアップデートにエマニュエルアップデート、 トップヘビー(ページレイアウト)アップデートと枚挙に暇がありません。 多くのホームページやブログの運営者を一喜一憂させた処です。
そして先週末2012年11月17日にGoogleから公式な告知が無いながらも 確実にアルゴリズムアップデートはありました。 その影響はパンダアップデートに似通ったものでしたが、 パンダアップデートは他日、1~2週間後の実施が正式にアナウンスされる処であって どうやらGoogle内部では明確に峻別されるアップデートである印象があります。
これを此処に敢えて名付ければ
Googleの検索結果にはその初期からオーソリティと言う概念がありました。 オーソリティ、日本語にすれば即ち 権威 であって屡々用いる斯界の権威、などとそっくり同じ意味で インターネットに於いて信頼にたるべきサイトは孰れであるかが 検索結果には以て影響がありました。 Googleはリンクを辿ってインターネットの情報をクロール、泳ぎ回り採取します。 この起点となるのは疑いなくオーソリティを有したサイトです。 現時点でそれば孰れであるか、また起点の概念が用いられているかは判然しませんが、 嘗てそれはページランクも高いYahoo!であったのは折に触れ言及された処で 従って検索エンジンがロボットに移行して後も Yahoo!カテゴリに登録されることは重要なことと考えられて来たのです。
このオーソリティの高いとされるサイトは 従来パンダアップデート、ペンギンアップデートなど、 近年の大変動の影響を受けずに済んで来たような印象があります。 しかし遂に異変が見られたのが2012年11月17日の オーソリティアップデート でした。 この異変を伝えてくれるのがアルファブロガー、人気ブロガー、 そしてプロブロガーとして名高い以下の2ブロガーの2記事です。
後者は検索エンジンからのトラフィック流入が減じたのにはっきり言及していますが 前者はその明示は有りません。 しかし前者にもその文章を見れば検索エンジン経由のアクセス数に かなりネガティブな反応があったものと見られます。 両者は代表的なものですが他にも多くのブロガーが今回の検索エンジン経由のトラフィックに 大きな変動のあったのを伝える記事を書いているのが散見されます。
方面を変えてアルゴリズムの変動を見てみれば
WEBコンサルの中山陽平氏の配信した2012年11月22日の記事[※1]
には他の一流処のSEO専門家と同様にGoogleが近日パンダアップデートを催す旨、
また同時に11月17日のアップデートはそれに該当しない旨、記されますが、
11月17日のアップデートを
リストを見れば中には日本でもお馴染みのマカフィーやショックウェイブ、 そしてUSA TODAYなども含まれ、 ベライゾンなどは40%ものトラフィックを失っているのが見て取れます。 従ってブログ記事も大変動と捉えアルゴリズムアップデートに命名までしているのです。 これは日本のトップブロガーのアクセス減と併せて実に示唆深いように思います。 即ち其れ等サイトに蓄積されたオーソリティが失われているのではないかと考えられるのです。
オーソリティに関して言えば確立された人気ブロガーの記事は Googleから高く評価されていたような印象があります。 しかしそれは決して検索者に有益な状態であったとは言えないように思われるのです。 なんとなれば専門家でもない人気ブロガーの記事が検索上位に表示されるのは正直迷惑でしかなく 更に誤解を恐れず言えばそれは スパム認定 されてもおかしくないものだとも考えられるのです。
オーソリティに関して言えば大手報道メディアのWebサイトも その内容は屡々訝しいものが含まれるのは、 書いている記者が必ずしも伝えるべき内容についてその道の専門家ではないことに因ります。 新聞記事などは偶々引越しや大掃除などで畳の下に敷かれた一昔前の記事を見れば 度々可笑しな内容になっているように感じる向きも少なくはないでしょう。 これを検索エンジン運営側が統計的に見た時に 顧客満足度が低いような結果が齎されたのではないかと推測します。 従ってこそオーソリティを従来のものから大きく異なる具合に変貌せしめ それが11月17日のアルゴリズムアップデートとして現出し、 多くの従来オーソリティが高いと判定されていたWebサイトに 多大な影響を及ぼしたのではないかと考えられるのです。
従来は検索エンジン対策には同ドメイン内に記事数の多い方が有利であると考えられて来ました。 記事数を増せば増すほど検索エンジンを受け入れる窓口が増え、 安定したトラフィックを獲得出来ると考えられて来ました。 従ってブログが有利なのは蓄積型のメディアであることにも依ったのでした。 記事数を重ねればそれが安定アクセスを稼ぐ手法となり得た[※3] のです。 ブログ記事は内容はどうでも毎日でも配信すべきであると謂われた所以です。 しかし11月17日のアップデートの影響を見れば其れは過去の言と謂わざるを得ません。
若しこの推測が的を得たものならば 従来の人気ブロガーはその拠って立つ足下を掬われるものとなります。 多くの記事を資産として来たその記事群が敗戦国の国債の如く、 倒産企業の株式の如く一夜にして紙切れに化さないと言う保証は全くなくなりました。
実際に大手メディアの速報記事や 月間100万PVを誇ると言うブログ記事に感心させられることは殆ど有りませんでした。 その記事は検索ボリュームの多いと思われるiPhoneなどのガジェットを逸早く取り上げるなどして 話題に乗ってオーソリティで押し切るような感が強く、 決して専門的とは言い難いものであったように思います。 これ等記事が長期に渡って検索結果の上位表示を締めるとすれば 決して検索者に有益なものとはならない、と検索エンジンは判断したのではないかと推測されます。
以上の考察が或る程度正しい方向を向いているならば これ迄アクセスを稼いで来たWebサイトはかなり面倒な状態に陥るでしょう。 凡そGoogleに支配されていたパラダイム中に在ってはその影響は 自らの与り知らぬ処で血肉となって体内に染み込んでもいるでしょう。 特にアクセスを稼いでいるWebサイト運営者は知らず知らずに所謂SEO、 言ってみればGoogleの意向に沿う運営を行っていたに違いありません。 これの方向転換は至って困難です。 しかもこの事態は恐らくは序章に過ぎず、 近来のアルゴリズムアップデートを顧みれば Googleの齎す大変動は此れから本格化するのではないかとも思われるのです。
この事態はWebサイト運営に従来成功して来た向きには背筋の凍るものですが、 検索者に有益なのは論を俟ちません。 速報は速報としてその役目を終えれば検索結果に深く沈み、 代わりに専門家、と言えば御幣がありますが検索者に価値の高い情報を齎す、 即ちオーソリティの高いWebサイトが表示されることとなるでしょう。 其処にこそGoogleの目的はあるのでしょう。
去年2011年をスマホ元年と称し、人々は何時でも至って普通に空気のように 情報を摂取するようになりました。 インターネットは日本に於いてはかなり成熟の度合いを増して来たのです。 参加人口が飽和状態に達したと言っても良いでしょう。 なればアクセス数は緩やかに頭打ちに向かうのが道理です。 此れからはこのパイを分け合うにあたりGoogleは新方針を打ち出したように思います。 それはApple、Microsoftなどの覇を競い合う勢力や Facebook、Twitterなどの新興勢力との競争に必要不可欠なのだと思われます。 此処にこそ従来の考え方を根本的に覆さねばならない事態は惹起したのです。
本記事は勿論Googleの内部を知るものではありませんので憶測に過ぎません。 ただ現今の状況を鑑みればかなり蓋然性の高い内容だとも考えています。
使用写真- Google Logo in Building43( photo credit: Robert Scoble via Flickr cc)
- Googleがパンダアップデートを日本語に適用~変わるSEO対策(2012年7月18日)
- Googleの著作権問題への取り組み~エマニュエルアップデート(2012年8月12日)
- 【メモ】12年11月下旬、Google大規模アップデートか?(Pony Update?)(WEB戦略ラウンドナップ:2012年11月22日)
- Update-Bell: Googles Pony update is shaking the SERPs « Searchmetrics SEO Blog(:2012年11月21日)
- 検索エンジンからブログを見に来てくれる人の傾向(Acenumber Technical Issues:2011年6月5日)