トヨタ車体コムス(COMS)発売後の超小型車の動静

超小型車を取り巻く動きが活発になってきました。 だんだんと情報が豊かになって来た感もありますが、 正直まだまだ曖昧模糊としている部分が多いようです。

超小型車の第1号車と見做されるのはかたむき通信2012年7月2日の記事 トヨタ車体から超小型車第1号コムス(COMS)発売、実質負担額59万8,000円から で伝えたトヨタ車体が同日発売した COMSコムス ですが、これは現在法規上は原付、即ち原動機付自転車としての括りとなると言う情報を リセマムの2012年7月3日の記事 超小型1人乗りEV「コムス」、車検と車庫証明は不要 が伝えます。

法規上は原動機付自転車のミニカーとなるため、以下列挙する処と記されます。

  • 一人乗り
  • 原動機の定格出力0.6kW以下
  • 車検と車庫証明は不要

処でかたむき通信2012年5月27日の 超小型車~約半世紀振りに自動車に新車両区分検討開始 に見られる超小型車のイメージとしては、以下列挙する処とされていました。

  • 1~2人程度
  • 125cc程度
  • 軽自動車より低価格で、維持費が割安であり、地域の手軽な移動に使える

乗員はコムスの場合1人乗り限定で2人は考えられていません。 また出力は コムス主要諸元 を見れば最高出力は 5kw となっています。 原付では道路交通法では50cc(0.6kW)以下、 道路運送車両法では125cc以下(1.0kW)と出力は規定されていますので 道路交通法を例に見てもEVのコムスの出力を内燃機関として単純換算すれば 約417ccとなって大きく逸脱します。

また運用では、運転には原付免許ではなく普通免許が必要となり 最高速度も原付を大きく上回る時速60km、 ヘルメットは不要だが、シートベルトは着用とされており、 此方は超小型車の枠に適当な印象を受けます。 かたむき通信7月2日の記事に於けるセブンイレブンの8月からのコムス利用は この運用基準に則してなされるものだと思われます。

以上から見ればどうにも既成事実を先に拵えて規格が追いかけている感があります。 コムスもコンセプトモデルとして企画されたものが 行政の意向に合わせ丁度良いと超小型車扱いされて そうとなれば規格イメージと整合しない部分があり、混乱に拍車を掛けているようです。 この解決に必要なのは国土交通省の情報開示に他ならないのですが どうにも昔ながらのプレスリリース便りで Webと言う媒体を持ちながら残念な仕儀となっています。 もう少しマスコミに頼らない速やかな情報発信が望まれます。

そうは言っても@ITのMONOist2012年6月27日の記事 超小型車の認定は軽自動車をベースに保安基準を緩和、地方公共団体が窓口に を見れば国土交通省は現在軽自動車をベースに、 道路運送車両法の基準緩和制度を利用して車両の認定取得を可能にするための 法整備を進めている最中にあり決して怠けている訳でないのは分かります。 思うに超小型車の素案をリークして見たら思う以上の反応が世論としてあり、 対応を急がざるを得なくなったようにも見えます。

自動車関係では行政が動くのは例えば馬力競争に関して見られるように 常に規制を強化する方向に見えましたから、 この超小型車は基本的にその反対の規制緩和の方向であり、 それも世の中の情勢に沿っていて賛意を受けているのかも知れません。 それが仕事の切迫として自らの首を絞めることにもなると言う 微笑ましい状況を招いてもいるんでしょうね。

MONOist記事には 2013年3月末までに新たな基準を策定 した後、地方公共団体を窓口にして認定申請を始める旨、記されます。 即ち現在 超小型車 という法規上の括りは無いにも関わらずそれと目されるコムスは既に発売され、 ついては行政もこれを推し進める方針から現行法で臨機に対応していると言った状況として好いでしょう。

トヨタ車体としては行政も推し進める超小型車に エコカーに於けるプリウスのような先行者利益を得んと コムスに結構な力が入っているようです。 レスポンスの2012年7月4日の記事 【トヨタ車体 コムス 発売】愛知県に2台寄贈、大村知事が試乗 ではコムスが2台、トヨタお膝元の愛知県に寄贈された背景を伝えます。 愛知県は2009年に経済産業省よりEV・プラグインハイブリッド自動車(PHV)の 本格普及に向けたモデル事業の実施地域に指定されているそうで、 今回の寄贈は愛知県の低炭素社会実現に向けた取り組みに貢献するためのものとされますが、 勿論コムスの大きなアピール機会ともなるでしょう。 寄贈したコムスは 愛・地球博記念公園(モリコロパーク) でスタッフ車両とされる予定ですので愛知近郊の方は出向けば 走るコムスを間近に見られるかも知れませんね。

従って既に世の中を走る仕儀となったコムスは厳密には超小型車とは言えないのですが、 孰れ超小型車が世の中に普及した時、雑誌やWebなどで特集が組まれる際には 超小型車誕生の端境期に産まれた車として魁的な扱いを受けるのかも知れません。 このかたむき通信もその際に端境期の混乱状況を伝える一助となれば幸いです。

さて超小型車の法整備について読売新聞が昨日2012年7月7日に 「超小型車」今秋にも公道へ…一部基準を緩和 (2019年5月31日現在記事削除確認)を伝えています。 記事に依れば国土交通省は超小型車普及促進のため 2012年今秋にも一部の地方自治体での公道走行を認める方針を固め、 走行能力や安全性能など超小型車の仕様を決めて公表されるとのことです。 コムスが既に発売されるも超小型車の法整備は秋を待つことが明らかになりました。

法整備に於いては車両走行の安全基準などを定める道路運送車両法の一部基準を緩和し、 地域住民や観光の足として超小型車の導入を希望する自治体に適用するとのことで 国交省の意向として先ずは自治体での活用を先行させたいようです。 厳密な意味での超小型車には我々はもう少しそれに乗れるのを待たねばならないようです。

2人乗りの超小型車の開発は出力や安全性、コストなどから 難易度が高いことも指摘されています。 自動車メーカーは此処が今迄積み上げてきた技術の見せ所、 行政のスピード感に負けずに是非とも頑張って欲しいと思います。

追記(2012年9月3日)

超小型車法制化端境期に於ける時期に販売されたトヨタ車体コムスの法制上準拠する ミニカー について 超小型車第1号と目されるコムスの現行の運用はミニカーに準拠 を配信しました。

追記(2019年11月13日)

二官庁を情報源とすると思われる報道記事を受け、 超小型車認定制度の国交省案へのパブリックコメント募集に規格概要を見る に超小型EVに関する対照的な国土交通省と経済産業省の姿勢について追記しました。

スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする