酒税法が新技術を育む皮肉~第3のビールが発泡酒を退け主役に立つ

パソコンなどでは古くはメーカーごとに独自の規格で 製品を出荷していましたが何時の頃からか PC-AT互換機が主流となり規格は統一、 部品の共通化が図られ価格競争に突入しました。 こうなるとブランドなどは意味がなくなり DOS-V機など、標準を打ち出したとも言えるIBM機さえ例外ではなく、 消費者の厳しい費用対効果の目に晒されることとなりました。

今、ビールの世界にも同じことが起こっているようです。 サントリーが第3のビールに注力、舵を切り 発泡酒からは撤退するニュースが各メディアに挙って取り上げられました。

大衆向けのお酒と言うのはその値段の殆んどは税金で決まります。 マイナビニュースのコラム マネーのトリビア の第25回の記事[※1][追] に詳しくある処です。 記事にある酒税法に拠る350ml缶に於ける税金額を以下列挙します。

  • ビール:77円
  • 発泡酒:62円若しくは47円
  • 第3のビール:28円

第3のビールの価格優位性は一目瞭然です。 この第3のビールとは酒税法に その他の発泡性酒類 とされる麦芽を主原料としない発泡酒を指すのでした。

サントリーは税金に因って価格制に優れることとなる第3のビールにシフトしたのですが、 これは図らずも消費者が麦芽云々より価格を重視していることの表れでしょう。 此処では消費者はビールを求めているのではなく 夏に涼を感じられ、咽喉越しの量を楽しめる体験を欲しているのだと思われます。 此処にパソコンなどと同じくビールと言うよりは発泡酒のコモディティ化が発生し ブランド等よりは値段が安い発泡酒が求められる現象となっているのだと思われます。

コモディティ化された業界では差別化が難しく価格競争となりますので スケールメリットを発揮出来る大メーカーのみの出番とも思い勝ちですが、 実は決して独擅場とはならないのはパソコンでも見られた処です。 大手電機メーカーの不採算、撤退もしばしば耳にしました。 大手飲料メーカーと言えど熾烈な過当競争の中に放り込まれるのです。

第3のビールに於いては原材料の開発が難しくもあります。 低価格に耐え、なお、消費者にビールたる体験を与える必要があります。 このような基礎的研究に近い運営は大手飲料メーカーにこそ強みがあります。 ここが恐らくパソコンとは異なる部分で 新原材料の開発、改良がメーカーを競争優位性に導くでしょう。

其処は既にビールは麦芽で作られるものと言う伝統的な常識の世界ではありません。 提供者の互いに鎬を削る切磋琢磨で ビール的体験を人々に齎す新たな世界が広げられます。 この新世界が酒税法と言う最も規制的な規制から齎されるのは皮肉なものだと思います。

財務省「平成29年度税制改正」消費課税に関する酒税改革の内ビール系飲料の税額適用予定グラフ

追記(2019年8月4日)

マイナビニュースのコラム第25回の記事の削除を確認しましたのでリンクを解除しました。 また350ml缶に於ける税金額が政府の税率格差をなくすという方針の下、 2020年10月から2026年にかけて段階的に一本化していくとの情報[※2] も齎されました。 上に財務省の消費課税[※3] に関する酒税改革の内ビール系飲料のグラフ画像を引用します。 此のグラフによれば、2026年10月にはビールも発泡酒も第3のビールも350㎖当たりの税額は全て 54.25円 に統一されます。 其れ以前に2023年10月には第3のビールの税額は値上がりして発泡酒と同額の350㎖当たり 46.99円 に統合されます。 従って値段だけで考えれば2023年10月迄は第3のビールが、2026年10月迄は第3のビール若しくは発泡酒がお得な勘定になりますが、 2026年10月以降は第3のビールも発泡酒も価格的な旨味は全くなくなりますので、 即席ラーメンが生麺のラーメンと異なるファンを生み出している如く、 其れこそ味的にビールと異なる旨味を引き出して行く以外に存在理由がなくなってしまいます。 然もなければ、 酒税法により消費者に選ばれた第3のビールが、 酒税法により其の立場を失う皮肉が生じてしまうことになるでしょう。

使用写真
  1. Chapter3 消費課税---平成29年度税制改正(財務省)
参考URL(※)
  1. 「発泡酒」「第3のビール」が「ビール」より安い理由って?(マイナビニュース:マネーのトリビア第25回)
  2. 2018年の酒税法改正!税率やビール・発泡酒は値上げ?(お金のカタチ:2018年5月15日)
  3. Chapter3 消費課税---平成29年度税制改正(財務省)
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