エネルギー問題への意識が益々高まる本邦にては 原子力の代替を考えたときに其の筆頭として挙げられる太陽光発電はメディアに様々取り上げられ このかたむき通信にもそれは例外ではありません。 メガソーラーや再生可能エネルギーの固定価格買取制度など取り扱いましたし、 関連新技術も以下列挙の如く記事にしていました。
此れ等新技術に於いて代替エネルギーとしてのブレークスルーが齎されるためには 発電効率 及び 製造コスト の改善が必須となります。 此の後者に画期的な10万分の1と言われる桁違いの改善が伝えられたのが 大阪大学 産業科学研究所 の 能木雅也 材料学准教授率いるグループが開発した 太陽光発電する紙 です。
この研究に付いては阪大産研のメンバー 能木雅也氏、古賀大尚氏、辛川誠氏、菅沼勝昭氏の連名で 公益社団法人高分子学会 事務局にて2012年9月6日に催された 第61回高分子討論会 についての記者発表資料[※1] として公開され、メディアにも翌月には紹介[※2]されています。
紙に太陽電池を印刷する技術としてはこれに先立つこと丁度1年、 米国はマサチューセッツ工科大学にて既に発表[※3]されていました。 この際のエネルギー効率は1%と伝えられ、 此れに3倍するのが去年の阪大の成果発表で 紙ベースのものとしては世界最高水準の光電変換効率は3%と発表されています。
勿論此れもインパクトのあったのは確かですが、 しかし今回年も明けた2013年となって再びメディアに取上げられる処となったのはどうやらその製造コストにあるのでした。 それは正しく桁違い、驚愕の10万分の1と伝えられます。 去年の報道資料にはこの製造コストが見受けられませんので、 当初は発表に盛り込まれなかったこの情報が何某かのルートで漏れ伝え聞こえ、 新たなるニュースバリューを持って改めて毎日新聞に本日2013年2月17日、記事[※4] となされ拡散されたのだと思われます。
この製造コストの桁違いの低減は製造単価辺りの発電量が爆発的に増えることを意味しますし、 発電量を必要最低限のものとして一定に考える際、 即ち被災地等での需要に応えるものとしては使い捨ての可能性も出て来るものです。
太陽光発電する紙 と題された当初の記者発表向け資料[※1] には副題として セルロースナノファイバーシートへ印刷した導電性パターンとその応用 が掲げられています。 その内容には機械的にダウンサイズした紙の原料である木材パルプを利用して作られるセルロースナノファイバーは透明な紙となり、 其処に導電性材料を印刷するのですから太陽電池のみならず 電子回路やアンテナ配線を作成する技術も同時開発されれば孰れ ペーパースマートフォン も可能となると夢の未来図も開陳されるものです。
大阪大学産業科学研究所のプロジェクト研究のページを繰れば 今回中心人物となる能木氏は以下の 日本学術振興会 の3プロジェクトにリーダーとして記載されており、 今後の此れ等の研究成果にも期待が高まるものです。
使用写真- 太陽光発電する紙( photo credit:公益社団法人高分子学会:能木雅也、古賀大尚、辛川誠、菅沼勝)
- 太陽光発電する紙(公益社団法人高分子学会:2012年9月6日昭:2019年9月26日現在PDF削除確認)
- 大阪大学、太陽光で発電する紙を開発、軽くて折りたたみ可能(環境ビジネスオンライン:2012年10月1日)
- MIT、太陽電池を紙に印刷することに成功!(WIRED.jp:2011年9月7日)
- プロジェクト研究(大阪大学産業科学研究所)
- 紙の太陽電池:製造コスト10万分の1 阪大グループ開発(毎日新聞:2013年2月17日:2019年9月26日現在記事削除確認)