薄型ムーブメントを複雑機構と位置付けるピアジェと第85回アカデミー賞授賞式

式典としての華やかさで言えばアカデミー賞の授賞式が 世界でも筆頭に挙げられて然るべきなのは異論のそうそうない筈です。 字義の通り綺羅星の如きハリウッドのスター達が参集するのですからそれも尤もであり、 受賞の作品以外にも何事に付け注目の的となるのは無論で 名立たる俳優、女優の一挙手一投足から発言、ファッションにも世間の耳目は集まります。 当然ながらその手首に嵌められた腕時計とて例外ではないのでした。

セレブ向けに高級腕時計を提供するメーカーとなれば このアカデミー賞授賞式が広報、宣伝の場として最適であるのは見逃せません。 意図的であるにせよ、偶然であるにせよ、 スターの手に光る腕時計が自社のものであれば告知しない方法はないのです。 2013年2月24日に催された第85回アカデミー賞授賞式に ピアジェ (Piaget)は此の手法に則ってホームページ上に記事[※1・2] を上げています。

Academy Award Winner

ピアジェに名を挙げられるのは先ず レ・ミゼラブルLes Misérables) で主演男優賞にノミネートされた ヒュー・マイケル・ジャックマンHugh Michael Jackman) 氏で嵌めていた機種はホワイトゴールドの極薄43mm アルティプラノAltiplano) でした。 このモデル[※3] に搭載される自動巻き式ムーブメント 1208P は厚み2.35mmと世界最薄、 更にはモデル自体の厚みも僅か5.25mmと、 実に2つの世界最薄、ダブルレコードを樹立したモデルでもあるとピアジェの主張する処の機種です。 氏の連れ立った伴侶の デボラ=リー・ファーネス(Deborra-Lee Furness) 夫人もアルティプラノでしたがサイズは40mmと僅かに小振りで ホワイトゴールドにはダイヤモンドがあしらわれていました。

世界にひとつのプレイブックSilver Linings Playbook) に主演した クリス・タッカーChris Tucker) 氏はホワイトゴールド38mmのアルティプラノにダイヤルにはパヴェダイヤモンドがあしらわれ ピアジェにその夜一際輝き最高の煌きを放っていたと言わしめました。

オスカープレゼンターでは マーク・アラン・ラファロMark Alan Ruffalo) 氏がローズゴールドの ポール・ラッドPaul Rudd) 氏と カイル・マクラクランKyle MacLachlan) 氏がホワイトゴールドのクラシカルなゴールドの38mmアルティプラノを腕に飾っていたと記されます。

腕時計ではありませんが宝飾をも営むピアジェでは授賞式に其のジュエルアクセサリーを ロレイン・トゥーサントLorraine Toussaint)、 ポーラ・パットンPaula Patton) や文豪 アーネスト・ヘミングウェイErnest Hemingway) の曾孫である ドリー・ヘミングウェイDolly Hemingway) などが紹介されています。

そして特筆されたのがもうひとりのプレゼンターである- ジェイミー・フォックスJamie Foxx) 氏であり、彼が伴ったご息女の コリーヌ・ビショップCorinne Bishop) 嬢でした。 氏はピアジェの旧知の友であり、この日の二人の装いには密に助力したとも明言されます。 ご令嬢はアクセサリーに於いてでしたが、氏の手首には勿論、 滑らかでシックなマットグレーのアリゲーターのベルトに依ってホワイトゴールド製のピアジェ プロトコールProtocoleXXL が巻かれていました。 此れ以上望めない広報宣伝となる場に於いて ピアジェは氏が納得した上での最も氏を引き立てる機種を選定したのでしょうし、 恐らくはピアジェの顧客と目論むセレブ達の興味を惹き付けた筈です。

斯様な尽力を重ねて今やピアジェはセレブ女性宝飾企業としても名を馳せるのでしたが その始まりは農場の片隅の時計工房でした。 スイス腕時計のメッカ、ジュネーブから広がりを見せた腕時計生産の地、ジュラ山脈の小さな集落に ジョルジュ・エドワール・ピアジェGeorges-Edouard Piaget) と言う名の男性が生を享けたのも運命だったのかも知れません。 ジョルジュは1874年に開いた時計工房こそピアジェの創成であり、 今も猶、工房の構えられるその地の名を ラ・コート・オ・フェLa Côte-aux-Fées) 、フランス語で妖精の丘と称するのも女性をも魅惑することを運命付けられたかの感が有ります。

1988年以来、 リシュモンRichemont) グループの傘下にあるピアジェですが、 其の今に連なる根本姿勢が具体的に形となって現れたのは 1957年キャリバー 9P と1960年キャリバー 12P の開発でした。 前者は手巻きの厚さ2mm、後者は自動巻きの厚さ2.3mmと共に世界最薄のムーブメントでした。 此の時期にピアジェの現在に連なるアイデンティティーが確立されたのです。 従って今のアカデミー賞授賞式に登場したアルティプラノにも 極薄 であり 最薄 と言う形容詞が面目躍如と踊るのでした。

ピアジェは創業者ジョルジュの腕が買われて腕時計メーカーからの依頼が漸次弥増し その創業期に名を挙げたことからも薄型ともに技術力の高さをも基本哲学として有します。 余りにも宝飾品が功成り名遂げた為に腕時計機構の技術力が見過ごされ勝ちですが、 マニュファクチュールとしても骨太の方針が貫かれ、其の現われが最薄の追及でもあるのでした。 21世紀になっても勿論其れに揺らぎはなく、 2002年には遂にピアジェとして初のトゥールビヨンムーブメントでもあり、 複雑機構でありながら其の厚さが僅か3.5mmと言うキャリバー 600P を開発したのでした。

薄さに対する執念とも言うべき此れ等の追及に関して 第85回アカデミー賞授賞式に先立つこと1週間、GQ JAPANが興味深い記事[※4] を配信しています。 記者氏が同社をラ・コート・オ・フェに訪った際、 案内役の45年に渡りピアジェに勤務する生き字引とも言える イブ・ボルナン 氏の言に其れは集約されます。 以下に引用しましょう。

ここではトゥールビヨンや永久カレンダーのような グランドコンプリケーションも製作していますが、 薄型ムーブメントも同じ複雑機構と位置づけています。

薄型ムーブメントはピアジェのピアジェたる由縁であり、 其れが60年代の宝飾腕時計を同社に可能にさせ、 更にはその宝飾腕時計がクォーツショックを越えマニュファクチュールとして存続せしめたとあれば、 今のピアジェの在り方も実に得心の行くものです。 此れに依って連綿と受け継がれしめた哲学と技術がキャリバー 1208Pを生み、それを搭載したダブルレコード樹立のアルティプラノモデルをして今、 アカデミー授賞式にヒュー・ジャックマン氏を大いに引き立てるのでした。 この極薄ムーブメント1208Pを組み込むのはピアジェにも7人に限られた熟練時計師であり、 その様子がGQ記事に伝えられています。

アルティプラノには1208Pの他にも430Pや450Pなどの極薄ムーブメントが搭載され ピアジェの哲学を顕現する主力モデルとなって、アカデミー賞授賞式にクリス・タッカー氏[※5] など、スター達の腕を飾り存在感を示しています。 薄型ムーブメントはピアジェの中核技術であると共に魂と言っても過言ではないのです。

使用写真
  1. Academy Award Winner( photo credit: Dave_B_ via Flickr cc
参考URL(※)
  1. 第85回アカデミー賞授賞式におけるハリウッドスターとピアジェの共演~記録的な数のスターがピアジェのウォッチとジュエリーをまとい、レッドカーペットに輝かしく登場。(ピアジェ:2013年2月24日)
  2. 2013年オスカー~ピアジェはハリウッドを背負う男性にとって究極のオスカーウォッチとなりました。(ピアジェ:2013年2月24日)
  3. Altiplano G0A35130(ピアジェ)
  4. 薄さに込められた矜持──ピアジェ(GQ JAPAN:2013年2月18日)
  5. Altiplano G0A36129(ピアジェ)
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