腕時計ファンなら注目せざるを得ない世界最大の腕時計及び宝飾品の展示会である バーゼル・ワールド2014 (BASELWORLD Watch and Jewellery Show 2014、フェアとも)[※1] は今年で第42回となり例年同様一週間程の期間、 2014年3月27日から4月3日を以て開催されました。 かたむき通信には去年のバーゼルワールド2013に於いて スウォッチ・システム51を紹介[K1] した処ですが、開催から数ヶ月も経って今年も遠く離れた日本にも ネットや雑誌などを通して出向けない向きにも租借された上での有用な情報の得られる時期となりました。
世界一の腕時計のお祭りですから日本に限らず世界中の大手メディアに取り上げられもし 其の一つのウォールストリートジャーナルに CHRISTOPHER TENNANT 氏の文責で A Simpler Time for Men's Watches[※2] なる題目でバーゼルワールド2014から伺える当世腕時計事情と言った内容が寄稿されていました。 此処に於いて一部の機械式腕時計ファンにはなかなか手厳しい意見が述べられているようです、 と言うのは時代の流れとして複雑機構が疎んじられ、シンプルに傾いていると言うのです。
其れ等の主張は
此処等辺は名前を挙げずとも暗に近年の腕時計大型化の立役者、
此れ等に見られるバーゼルワールド2014で現れた
複雑からシンプルへの回帰志向の兆しを代表するかの如く記事中にも最初に紹介されるのが
そして此れと同時に登場したのが 5年毎に発表、提供されるアポロ月着陸記念、 オメガ・スピードマスター・アポロ11号45周年限定モデル (SPEEDMASTER APOLLO 11 45THANNIVERSARY LIMITED EDITION)[※3] です。
アポロ11号が1969年7月21日に月面着陸してより今年で45年を数え、
夏先には上に埋め込んだ動画が随分とシェアされたりもしました。
シェアしたメディアの一つであるCNet記事[※4]
に依れば其の効果は兎も角、月面上のアームストロング船長の心音にインスパイアされ、
勿論其の由来は唯に月面着陸を手前勝手に記念したにあらずして、
実際にニール・アームストロング船長に続いて月面歩行した
さてバーゼルワールド2014に見られ各メーカーの重要人物の言に聞いても複雑からシンプルへの流れがあるとした時、 オメガスピードマスターアポロ11号45周年モデルは其の流れに或る面では棹差しているとも見られます、 と言うのもスピードマスターコレクションの嚆矢、 スピードマスタークロノグラフが誕生したのが1957年、 其れより精度、堅牢さ、視認性、使用性、信頼性で高評価を以て 而して1965年3月1日にNASAよりスペースウォッチとしての承認を受け[※5] 1969年の人類初の月面着陸に伴うことと相成ったのでしたから 復古と言う意味では57年とクォーツショック以前迄、半世紀以上を遡る訳です。
他方、見た目に於いてはバーゼルワールド2014に見られたシンプルさへの傾倒が見られるかと言うと首肯し難い部分が有ります。
なんとなれば固よりクロノグラフは複雑機構に数えられる場合も有るのでしたし、
エレガント且つシンプルと称される三針に有らずしてスモールセコンドを備えた多軸機構であり、
またWSJ記事に半ば揶揄されている
処でWSJの記事[※2] では筆者のCHRISTOPHER TENNANT氏は 最終的な件で複雑機構のファンであることをカミングアウトした上で 複雑機構の存続は如何に成されるべきかとの論を展開し、 其処には機械式腕時計のレーゾンデートルが隠されているとも思われる塩梅です。 ライト兄弟が空中飛行を夢想に留めなかったと一般だと言う訳でしょう。 そして最後に同じくWSJで腕時計記者として活動するMichael Clerizo氏の言を引いています。
Sure, simple is beautiful, but I'll keep my world of complications and sheer wonder.
確かにシンプル・イズ・ビューティフルだ、 だけど私は我が複雑で全く不思議な世界に在り続けるだろうね、 と言う訳ですからなかなかに複雑式機会時計の愛好家は病膏肓に入っては如何ともし難く 世がシンプルに傾こうとも我関せずの姿勢を崩さぬように伺えますが、 さてご同様ご諸氏の目には此のオメガ社のアポロ11号45周年限定モデルは如何なるべくに映ずるのでしょうか。 そして腕時計界の傾向は此の侭WSJ記事に主張された如く複雑機構からエレガント且つシンプルへと復古するのでしょうか。
1,969本の世界限定モデルとされたのは勿論アポロ11号月面着陸の西暦年を襲ってのこと、 針及びインデックス、ベゼルはアポロが正しく大気圏に突入し燃えさかる様子を髣髴させる 18Kオメガセドナ™ゴールド 製、ブラウンのコーティングを施したナイロン製ファブリックストラップは 第二次世界大戦以降1950年代の終わりからイギリス軍に支給された時計の NATOストラップ にインスパイアされたデザインであるとされます。 搭載の キャリバー1861 はパワーリザーブ48時間の月面で使用された有名な手巻きクロノグラフ・ムーブメントをロジウムプレート仕上げしたもの、 ケース径は42mm、5気圧の防水仕様とされています。 日本への入荷予定は2014年夏、もう直ぐ目の前迄やって来ています。
追記(2014年9月18日)
2014年9月中旬を以て正式に販売開始されネットショップAmazonジャパンでも9月18日に並行輸入品の取り扱いが開始されました。
使用写真- Baselworld 2014( photo credit: Kevin Kyburz via Flickr cc)
- Buzz Aldrin salutes the U.S. Flag( photo credit: NASA Goddard Space Flight Center via Flickr cc)
- SPEEDMASTER APOLLO 11 45THANNIVERSARY LIMITED EDITION(オメガ公式Baselworld 2014特設サイトより:2020年4月12日現在記事削除確認)
(上の写真は45周年モデルではなく前回の月面着陸35周年記念限定モデル)
- スウォッチ・システム51バーゼルワールド2013に登場す(2013年8月25日)
- リシャール・ミルの超高級腕時計に採用されるカーボンナノチューブ素材(2013年9月14日)
- オメガ・コーアクシャル・キャリバー8508発表~抜きん出た超高耐磁ムーブメント(2013年1月21日)
- Baselworld 2014 – The World Watch and Jewellery Show(バーゼルワールド公式サイト)
- A Simpler Time for Men's Watches(WSJ:2014年7月25日)
- SPEEDMASTER APOLLO 11 45THANNIVERSARY LIMITED EDITION(オメガ・ウォッチ: Baselworld 2014:2020年4月12日現在記事削除確認)
- Astronaut's lunar heartbeat lives on in Lennon cover(CNET:2014年6月20日)
- オメガ・ウォッチ: スピードマスターの歴史(オメガ社公式サイト:2020年4月12日現在記事削除確認)