特別天然記念物指定60周年マリモ保護に阿寒湖の世界遺産目指す

ユネスコの認定する世界遺産のリストに登録されることはそれはそれは困難を極めるそうです。 世界遺産の本義が遺産の言葉通り人類の遺産として構成に保全し置くべきものであることに拠ります。 そしてその登録理由に於いては世界一であることが要請されます。

北海道の阿寒湖は一度世界遺産への登録を請うて却下された過去があります。 それは2003年、世界最大規模のカルデラ地形として 阿寒・屈斜路・摩周 をセットで訴求して最終段階迄残るものの カルデラはイエローストーンなどが登録済み、 とされたものでした。 アメリカのイエローストーンは1972年に世界遺産リスト登録としては第1号の12件の一つで 先進国では最も遅い世界遺産条約批准国である日本は締約国となったのが125番目の1992年6月30日であり 当時リストには登録されていませんでした。

しかし今また阿寒湖を単独で世界自然遺産に登録するべく運動が盛り上がりを見せています。 それは阿寒湖に生育する マリモ(毬藻) が1921年(大正10年)に国の天然記念物に、 そして1952年(昭和意27年)に国の特別天然記念物に指定されてからは ちょうど60周年を迎ることを契機にしています。

マリモは日本では1897年に川上瀧彌氏により阿寒湖の尻駒別湾で発見され その球状をなす形から毬(まり)藻と言う和名が与えられたのでした。 そして阿寒湖のマリモはまた特別なマリモでもあったのです。 それは単に球状をなすマリモが生育する少ない地域の一つであるだけでなく 30cmに達せんとする大きさも別格でした。

この巨大なマリモの生育条件を満たすことを以てすれば 阿寒湖の世界自然遺産への登録の可能性が高まるのではないかと考えられているのです。 毎日.jpの2012年6月3日の記事 阿寒湖のマリモ:世界遺産へ動き活発化 しかし登録へは長い道のり (2019年4月20日現在記事削除確認)には釧路市教委マリモ研究室の若菜勇学芸員の言としての 地形、湧水(ゆうすい)、波浪など、阿寒湖自体が巨大な球状マリモを生むための精密装置と言える を再度申請するための科学的根拠の土台にせんとする様子が覗えます。

また毎日.jp記事には冒頭には、阿寒湖単独の再申請の切っ掛けとなった 若菜学芸員の昨秋発表した研究成果が記されます。 それは 北半球各地に生息するマリモは、日本起源の可能性が高い と言うことなのです。

マリモは日本では、北海道及び本州の東北地方から関西地方の湖沼に点在して分布し、 日本国外では、ヨーロッパ北部、ロシア、北アメリカ等に分布するのですが、 大きな球状の集合体を形成するのは極めて珍しく日本では阿寒湖ともう一つ青森県の小川原湖に、 また国外では、アイスランドのミーヴァトン湖やエストニアのオイツ湖などに限られるようなのです。 そしてこのミーヴァトン湖のマリモは遺伝子研究によって実は阿寒湖のものとの類似性が認められ 渡り鳥によって運ばれたのではないかと考えられて来ているのです。

昔はもっと多くのマリモの分布が見られました。 しかし今、御多分に漏れず環境悪化により生育地は年々減少の一途を辿っているのでした。 そしてこれが阿寒湖が世界自然遺産に登録されて欲しいと思う重要な要因でもあります。

阿寒湖のマリモは特別天然記念物であると共に 絶滅危惧I類即ち、環境省レッドリストに記載される 日本の絶滅のおそれのある野生生物の一つなのです。 そして阿寒湖のマリモが特別天然記念物に指定された60年前、 北海道新聞Web2012年5月21日の記事 マリモ保護 世界的価値認め発信を (2019年4月20日現在記事削除確認)では戦前4箇所あった内の群生地が2つ消えたのはこの時期の前後であると言及しています。 即ち特別天然記念物に指定されていなければ今阿寒湖のマリモは絶滅していたのかも知れません。

世界遺産に登録されるには厳しい条件があると前記しました。 その条件の一つに推薦時点で国内法等によって既に保護や管理の枠組みが策定されている必要があるのです。 これは登録後にも将来に渡り世界遺産として継承されるに相応しい状態を継続していかなければならないからです。 そのためには登録物件の周囲に緩衝地域が設けられるのも屡であるとされます。 これは逆に貴重な生命、マリモの保全に繋がる条件ともなり得ます。

世界遺産に登録される、と言うことは国を挙げての保全が義務付けられる旨みがあるのです。 しかし同時に世界遺産に登録されれば観光地としての価値が上がることも間違いありません。 それどころか経済的効果を慮った観光地化が先に立つ世界遺産登録の要望も多いと言われます。 これは今世界遺産の意義として問題ともなっている部分です。

北の心の開拓記釧路編[小松正明ブログ]さんの2012年6月4日の記事 マリモの阿寒湖を世界自然遺産に には上記した世界遺産に対する状況が凝縮されているかのようです。 矢張り観光目的地は地元の方としては見逃せない部分です。

世界遺産登録の為には高いハードルを越えながら まだまだ長い道のりを行かねばなりません。 そのためには地元の方々の尽力が欠かせません。 そして孰れ世界遺産として登録された際には その情熱はきっと観光地化された際の問題も上手く乗り越え、 世界遺産地元として運営せしめることでしょう。 そうなれば阿寒湖のマリモも未来に引き継がれていくに違いありません。

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