マリア・シャラポワ選手全仏オープンテニス初優勝~史上10人目生涯グランドスラム達成

テニスに於ける生涯グランドスラムとは、 以下列挙する処の4大大会をすべて制覇することです。

  • 全豪オープン
  • 全仏オープン
  • ウィンブルドン
  • 全米オープン

これ等の大会一つ一つがとても重要な大会で 一つにでも勝つことは極めて名誉なことですから 選手は何としても勝たんとしてコンディションを合わせて来ます。 しかもテニスコートの条件はそれぞれ異なりますから 選手は特に自分の得意な大会があり其処に的を絞ります。 従ってこれ等全てに勝つのは極めて困難なことです。 女子に於いては史上9人しか達成していません。

そして昨日2012年6月9日にロシアのマリア・シャラポワ選手が 全仏オープンでイタリアのサラ・エラニ選手を6-3、6-2のストレートで破り初優勝すると共に 遂に史上10人目の生涯グランドスラムを達成したのです。

シャラポワ選手は2001年に14歳でプロデビューしました。 そしてなんとキャリアに於いて初の優勝は2002年4月21日の草津国際女子オープンテニス大会と日本なのです。 日本との相性が好いようで好戦績を上げており日本贔屓でもあるとのことです。デビュー後メキメキと頭角を現したシャラポワ選手は2003年にはウィンブルドンの4回戦に進出、 同じ年ジャパンオープンを単複制覇しました。

そして翌2004年に、17歳2ヶ月は史上2番目に若い年齢と言うオマケ付きで ウィンブルドン女子シングルスに優勝、 この時が生涯グランドスラムに向けての第一歩となりました。 しかしそれは今回の彼女自身のコメントに ここまで長い道のりだった。 とあるように決して平坦な道のりではありませんでした。

2005年にはロシアの選手として初めて女子世界ランキング1位を獲得、 翌2006年に全米オープンに優勝し2冠を達成しました。 そして2008年には全豪オープンを制し3冠を達成するもこの年は怪我に悩まされる年でもあり、 右肩の手術を敢行、トーナメントからの長期離脱を余儀なくされてしまうのです。

テニスではコートが何で出来ているか(サーフェス)に依りプレイスタイルがまるで変わります。 最も伝統的な芝のコート(ウィンブルドン、全豪オープンなど)では球足は速く滑ります。 ハードコート(全米オープンなど)では球は大きく弾み、足腰への負担も大きくなります。 そしてクレイ(土)コート(全仏オープンなど)では足は滑って踏ん張りが利かなくなり、球は弾みません。 斯様にコートによりプレイスタイルを大きく変えねばならないことで 複数の4大大会を制すのは難しくなるのですが、 シャラポワ選手は特にクレイコートでの戦績が思わしくありませんでした。

全仏オープンが開催されるパリ近郊の Stadeスタッド・ Rolandローラン・ Garrosギャロス のテニスコートは特徴的な煉瓦を砕いた赤い色の土で出来ているクレイコートで開催されます。 このサーフェスに於いては選手はハードコートのように足を止めて打つのではなく 足を滑らせながら球を打つことを要求されます。 この赤土上でのフットワークに於いてシャラポワ選手は 氷上の牛 と酷評されるほど苦手としていたのでした。

怪我や病気が時には人を成長させることがある如く、 しかし怪我から復帰し復活し、25歳となったシャラポワ選手は心技体ともに逞しくなっていました。 赤土上のフットワークも嘗てのシャラポワ選手とは格段切れの良さを見せたのです。 足を滑らせながらのプレイも其処からの切り返しのフットワークの改良が施されていました。 そして遂に生涯グランドスラムは達成されたのでした。 大会後にはシャラポワ選手は4年ぶりに世界ランキング1位に復帰する予定です。

以下にグランドスラム達成者10人をリストアップします。 頭の年数は達成年を後ろの括弧内には掛かった年数を、単年度の達成者には 年間グランドスラム と表記しました。 歴史上の人物から年代に依っては懐かしかったり顔馴染みの人物まで見られるのではないでしょうか。 シャラポワ選手はクリス・エバート選手と同じく最長の8年掛かっての獲得となったのですね。

  • 1953年:モーリーン・コノリー(年間グランドスラム)
  • 1954年:ドリス・ハート(5年)
  • 1957年:シャーリー・フライ(6年)
  • 1970年:マーガレット・スミス・コート(年間グランドスラム)
  • 1972年:ビリー・ジーン・キング(6年)
  • 1982年:クリス・エバート(8年)
  • 1983年:マルチナ・ナブラチロワ(5年)
  • 1988年:シュテフィ・グラフ(年間グランドスラム)
  • 2003年:セリーナ・ウィリアムズ(4年)
  • 2012年:マリア・シャラポワ(8年)

追記(2020年2月27日)

Mariaマリア・ Sharapovaシャラポワ 選手が引退を表明しました。 時事通信社や、 AFPBB Newsなどが速報を伝えますが、 其のニュースソースは時代を反映するかの如く、 本人の言葉としてWebサイト Vanityヴァニティ・ Fairフェア に昨日2020年2月26日付けの記事として配信される Exclusive: "Tennis—I'm Saying Goodbye." に見られます。 また、ファッション・サイト Vogueヴォーグ の動画コーナー Vogue Videos に同じく昨日2020年2月26日付けの記事として配信された Watch After 28 Years and Five Grand Slams, Maria Sharapova Steps Away From the Game では本人の肉声が聞かれます。

現在、32歳の彼女ですが、本記事に紹介した 生涯キャリアグランドスラム達成時は25歳でした。 此の間には、翌々年の2014年にも27歳で全仏オープンを制しており、グランドスラム大会は通算5度制覇の偉業を達成していました。 振り返ってみれば、 氷上の牛 と揶揄される程に不得意であった筈のクレイでのみ、2度大会を制覇しているのも床しいものです。 年間最終世界ランキングの最高位である2位を達成したのは2006年、2012年、2014年で間の肩の故障に悩まされた不調期の2009、2010年を挟んで2度のピークである最盛期を見れば、 衰えの見られるのは致し方ない部分がありますが、少し若い気もします。 しかし其れだけに Vogue Videos を見れば其の末尾での発言に 「And so, in whatever I might choose for my next chapter, my next mountain, I'll still.」 ともあり、新章が孰れの分野になるにせよ、新たなピークを目指しての活躍を期待したくあります。

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