歴史有る独国ニュルブルクリンクサーキットの破産を受け支援活動活発化

ドイツの森に20km以上と言う長大なコースレイアウトを有する Nürburgringニュルブルクリンク サーキットが破産しました。 AUTOCAR Japanの2012年7月21日の記事[※1] などに伝えられる処です。

内燃機関を有する自動車はドイツに最初に実用化されると共に 人々はその自動車の速さを競い合いました。 モータスポーツの始まりです。 無鉄砲な男達がスピードを争うのに辺り構わないのは余りにも危険だったでしょう、 現在でもマン島やモナコでは公道を閉鎖してレースが催されますが、 その危険性は度々俎上に上る処でもあります。 こうして完全な閉じた競争空間、レース専用のクローズドサーキットとして誕生したのが ニュルブルクリンクであり、1927年のことでした。

Nürburgring, Germany 1960
Nürburgring, Germany 1960 photo credit by ╚ SεΣ ╤hi∩Gs DiƒFerεNT└y ╗

それでも公道レースとクローズドサーキットの端境期に産まれただけあってか 直ぐにも有料道路として一般にも開放されたようです。 その伝統は今に至るも生きており、 世界中のあらゆるメーカーはニュルブルクリンクで新型車のテストを行いますし 今も一般に開放されています。

一般にも開放されるコースであり更にはその長大さから なかなか全てに手入れが行き届かないとなればサーキットとしては厳しい条件のものになりますが、 今以てニュルブルクリンク24時間レースと言う 世界の自動車メーカーが競う最高の場としても機能しています。 その安全面から近年ではコースの一部のみを用いる世界最速を競うF1レースも 以前は長大な全コースを使って争われていました。

破産の要因には複合観光施設として運営しようと言う経営方針や 支援期間との調整の難航なども伝えられますが、 矢張りそのコースの長大さも一つ問題となっているようです。 なんとなればその全面改修には凡そとんでもない金額が必要とされます。 これが多額の借入れを発生させる引き金の一つともなってしまったようです。

この歴史の生き証人とも言えるサーキットが今回破産の憂き目にあってしまったのは 返す返すも残念で、そう思う人々は多いのでしょう、 オートスポーツWebの2012年7月21日の記事[※2] には何とか救いの手を差し伸べようとの呼び掛けがされているのを見て取れます。

その維持は困難を伴うとは言え純粋なクローズドサーキットとして設計されたコースが 大変な距離を有するのは実に魅力有る事象でしょう。 出来得ればそのサーキット然とした姿を長く留めて欲しいように思います。

F1 2011 & DiRT 3 on 160-inch curved rear screen with Thrustmaster T 500 RS racing wheel

因みに余談ですが上の動画に映されているこれ、 最新式のゲームマシン…と言うには高価なのでシミュレーターと呼んだ方が良いのでしょうが、 後半では森の中のドライブシーンが演出されていますね。 ニュルブルクリンクが意識されているような気もしました。

追記(2015年3月21日)

本日 Hockenheimringホッケンハイム サーキットとの交渉が不調に終わり、今季F1ドイツGPの中止が正式に決定[※3・4] された旨、発表されました。 ドイツGPは2007年からは此のホッケンハイムと本記事の主役 ニュルブルクリンクとの隔年開催となっており、今年2015年はニュルブルクリンク開催年に当たりましたが 本記事に取り上げた財政難は未だ解決されず サーキットオーナーも変じ ては、F1の実質的な興行主たる Bernie Ecclestoneバーニー・エクレストン 氏との交渉は此方も決裂していました。 従って今季F1カレンダーからドイツGPは抹消されざるを得なくなったのです。 以て1950年からのF1の歴史に於いて名義上ドイツGPにはあらぬヨーロッパGP及びルクセンブルクGPもニュルブルクリンクでの開催であったれば ドイツにてグランプリが開催されないのは遠く半世紀以上隔てた1950年、1960年から55年ぶり3回目となり其の中止の重みが感じられます。 商業的な側面に傾くのは興行である以上致し方ないのかも知れませんが、 他GPで充分な収益を上げられるのであらばF1全体を考え、歴史的重みを鑑み ニュルブルクリンク存続のための経済的援助を齎せ得る方向での決定が望まれるべきですが斯く結果が届いたのは遺憾の極みです。

追記(2019年6月26日)

前段、2015年3月21日の追記でエクレストン氏との交渉も不調に終わったのは、 傍点部にあるニュルブルクリンクサーキットの新オーナーが未だ経営権を得て期間を経ていなかっただからかも知れません。 経営難のニュルブルクリンクを1億ユーロ(2019年6月26日現在、日本円で約122億円)で買収支援したのは、 ドイツの自動車部品メーカー、 capricorn GROUPカプリコーン・グループ でした。 グループは30年以上に及ぶ歴史を有するドイツの自動車部品メーカーで、 総帥の Robertino Wildロベルティーノ・ワイルド 氏はモータースポーツに情熱を持つ人物[※5] であるとのことです。 その如き強力な支援を以てしても、経営に携わり始めた2015年初頭からの数箇月後では大イベントたるF1の誘致も不首尾に終わったのを伝えたのが前回の追記、 其れから4年を経た今、ニュルブルクリンクはどうなっているのか、 窺い知れるコンテンツをYouTubeに動画で共有してくれているチャンネルが在りました。 登録者数20万を超える 華音Kanonチャンネル です。 華音さん、イギリス旅行レポートがなんだかニュルレポートになっちゃったらしく、 ニュルブルクリンクの2019年6月の今が伝わると同時に、 楽しさが画面からはじけるように伝わって来る動画にもなっています。

下の動画では華音さんが歩きながら見せてくれる画面にはジェットコースターも映し出され、 車に興味がない人でも楽しめる施設の用意があるのも伝えられ、 当日はツーリストライドに当たり、誰でも自分の車で好きに走ることが出来る日とて、 マクラーレン540C のハンドルを自ら握っているのでした。 但し、いくら運転が好きでも一般ドライバーに留まれば、 ナビシートにはコースを教えてくれたりする専門家たるお兄さんも同乗しています。 聞けばお兄さんは2017年のニュルブルクリンク24時間耐久レースにBMWを駆ったチャンピオンとやら、 働き始めて三年のお兄さんのお仕事は此のように同乗したり、勿論自ら運転したり、 たまには修理もするのだそうです。

マクラーレン540Cでニュルブルクリンクを走った結果…!

誰でも走れるニュルブルクリンクは平日は一周25ユーロ(約3千円ちょい)で、 金、土、日曜日には30ユーロ(約4千円)で走れるのだと、 華音さんは一般走行メニューも紹介してくれています。 走れる車の制限はないそうで、中には観光バスや何故か荷物運搬用のバンなどもスポーツ走行を楽しんでいるのだと伝えてくれます。 また、ニュルブルクリンクはレースだけでなく、音楽のフェスティバルや自転車走行のスポーツイベントの会場としても使われているのだそうで、 新オーナーの元、逞しく稼いでいる様子も伺えるのでした。 ツーリストライドならぬ日にはプロドライバーに運転を任せ、 レーシングスピードを体感も出来るとあって、 下の動画では華音さんはプロドライバーのおじさんの操る ポルシェ911GT3RS のナビシートに身を沈めます。 ニュルのコースの説明付きでコースを猛スピードで走行する中、 何故かうら若き華音さんが一番好きなレーサーと言う頃日亡くなった Niki Laudaニキ・ラウダ[※6] 氏が、1976年F1で事故を起こしたポイントもプロドライバーのおじさんが紹介してくれています。 事故ったら載せられるYouTubeコーナー などもおじさんは笑いながら紹介してくれるのは時代の反映でもあるでしょう。 おじさんはニュルブルクリンクを1.2万から1.5万ラップは重ねた手練れのプロドライバーにて、 同乗を終えた華音さんの感想は「どんな地球上の 乗り物ジェットコースターよりも一番死ぬほど怖かった」のだそう。

【プロが運転】ニュルブルクリンクでポルシェ911GT3RSに乗ってみた!

今度は車を マクラーレン720S に変えたのが下の動画です。 ヘルメット装着ですから凡そ異次元のレーシングスピードでニュルブルクリンクを駆け巡るのですが、 最も速度の乗る直線ではスピードメーターが 273km を超えて遂には計測不能の 0 表示を示すのは驚きです。

ニュルブルクリンクでマクラーレン720Sに乗ってみた!

ドライバーのお話ではニュルブルクリンクでは日本人が日本からマイカーを持ち込んでのイベント開催もあったらしく、 此れなど歴史あるブランドを活かした商魂逞しさの発揮の一面とも取れるのではないでしょうか。 ところが華音さんが欧州仕様の電源で日本での使用には難の有るも面白がって購入したのはでっかいトースターで、 何でこんなアイテムを売ってるのか買った当人の華音さんも不思議がるくらいなので、 嘗ての苦い経験を再び招かぬようお土産コーナーは手直しした方が良いのかも知れません。

他にも華音Kanonチャンネルが共有してくれている動画には ポルシェ911GT3RSでニュルブルクリンクを走ってみた!【プロの運転】ニュルブルクリンクでジャガーPROJECT8に乗ってみた! など用意されますから、遠く離れたニュルブルクリンクの今を知りたい向きはご覧になってみては如何。

使用写真
  1. Nürburgring, Germany 1960( photo credit: ╚ SεΣ ╤hi∩Gs DiƒFerεNT└y ╗ via Flickr cc
参考URL(※)
  1. ニュルブルクリンク、破産(AUTOCAR Japan:2012年7月21日)
  2. 「ニュルブルクリンクを救おう」署名活動展開中(オートスポーツWeb:2012年7月21日)
  3. ドイツGP中止が発表。2015年F1は全19戦に(AUTOSPORT web:2015年3月21日)
  4. F1ドイツGP、2015年の中止が決定(F1-Gate.com:2015年3月21日)
  5. 破産のニュルブルクリンク・サーキット、独部品メーカーが1億ユーロで買収(レスポンス:2014年3月13日)
  6. 元F1世界チャンピオンのニキ・ラウダが急死(AUTO SPORTS WEB:2019年5月21日)
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