ホーリーランド~モラトリアムに存在する聖地

ロックンロールはモラトリアム音楽だと言われることがあります。 夏目漱石の小説でもお馴染みの高等遊民などもモラトリアムに生息する人種と批評されることもあります。 音楽や思想だけでなく格闘技にもモラトリアム特有のものがあるのではないか、 と思われるテーマを扱った漫画が 森恒二さん作画の ホーリーランド です。

漫画は白泉社のヤングアニマルに2000年20号から2008年11号と世紀を跨いで連載され、 既に全182回で完結して居り、 同社ジェッツコミックスの18巻全巻にまとめられています。

以下は途中迄でネタバレもないけれどホーリーランド漫画から抜粋した画面で構成された ホーリーランドの魅力が伝わる動画です。

ホーリーランドPV

この漫画では凡そ多種類の格闘技が、それも他には余り類を見ない 剣道をも含んで登場します。 ざっと以下が挙げられるでしょうか。

  • ボクシング
  • レスリング
  • キックボクシング
  • 空手
  • 剣道
  • 柔道
  • 拳法
  • 総合格闘技

それぞれの使い手が主人公を中心にその持つ技を駆使し対決が繰り返され、 さながら異種格闘技戦の感があります。

その中にも主人公の格闘技術は異彩を放っています。 それぞれ対決した相手を学び吸収しながら練り上げられた独特のものとなっているのです。 その他者を圧倒する技は或る種の威圧力を持って絶対的存在感をもつものとなります。 主人公の名は神代ユウ、 代とはしろを示し即ちその肉体は神の降臨すべき対象となります。 タイトルのホーリーランド、即ち聖地の中心に存在する者としての作者の神話の仮託でしょうか。

登場する人物はその大半が高校生及び大学生の年代、即ちモラトリアム期間にある者ばかりです。 いじめの対象とされた主人公は何時しかそれら群像の中で中心的役割を帯びます。 劇的な活劇ドラマが繰り広げながらもどこか儚さが漂うのは 其処が子供と大人の端境期、いつまでも続く永続的な場ではないからでしょう。 それは作者が作中に何度と無く彼等の無力さを語りとして挿入することからも意識されます。

その儚さにも関わらず格闘シーンは圧巻です。 鍛え上げられた肉体と肉体のぶつかり合いは有無を言わさぬ迫力が宿ります。 そこで決闘として繰り広げられる格闘技はその場に於ける彼ら特有の形にまで昇華しているのです。 謂わばモラトリアム格闘技とも言えるものに結晶しているのです。 決して継承されはしない一瞬だけ輝きを示した後散るを承知で其処に厳として在るのでした。

スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする