河合商会事業継続断念~遣る瀬無く物悲しい老舗倒産

水車!長野の大王わさび園 photo credit by 052_otyon

遠い記憶を辿れば、 確か昔の日本の風景に溶け込んだ建築物のプラモデルを拵えたことがありました。 プラモデルといえば飛行機や戦車、自動車などの乗り物が主だった処に 建物のプラモデルなどが有るのか?と驚きを覚えた印象が未だに残っています。 それは恐らく 河合商会 のものだったではないかと思うのです。

残念ながらこの 株式会社河合商会 (2019年11月26日現在Webサイト停止確認)が事後処理を弁護士へ一任した上で 今後自己破産を申請する意向であるのが伝えられる処[※1・2] となりました。 長引く不況に今後の事業継続が困難と判断されたものです。 負債総額は調査中ですが推定で1億円程度となるものと見られています。

昭和46年7月:足立区島根町に河合商会を設立し、鉄道模型ジオラマ用パーツ製造及販売業を開始する。
昭和48年7月:プラスチックモデル風物詩シリーズNO.1「そば屋」を発売。
昭和48年9月:有限会社河合商会に組織を変更。資本金300万円
昭和51年2月:グリーンホビー箱庭シリーズを開発。NO.1「農家」発売。
昭和51年7月:日本プラスチックモデル工業協同組合加入
昭和51年10月:第16回全日本プラスチックモデル見本市、東京・大阪 初出品。
昭和52年5月:静岡見本市初出展
昭和52年10月:グリ-ンホビ-(箱庭シリ-ズ)にて、プラモデル大賞・フロンティア賞を受賞する。
昭和55年9月:系列会社キリン食品〈食品+プラモデル〉創立。
平成1年3月:第一カワイビル完成。7F~8F 事務所、展示室、社長室、経理、企画、営業
平成1年9月:関連会社ワールドショップ可愛開設
平成2年2月:韓国 ソウル美工社との技術提携契約する。
平成3年5月:鉄道模型 貨車類販売
平成4年1月:保木間工場及倉庫(保木間3-34)完成
平成4年5月:92東京おもちゃショー初出展
平成4年9月:20周年を迎える。
平成5年5月:静岡見本市出展。N-鉄道模型 新製品貨車発売
平成7年1月:自社製品プラモデル中国廣東省汕斗市工場にて生産開始(低単価品)
平成8年2月:韓国ソウル美工科学社との技術提携する。
平成9年9月:プラモデル4WDカーパーツ特許申告取得する。
平成10年12月:㈱ゲイトウェイグローバル(ジャパン)ダイキャストカー販売会社設立する。
平成11年1月:有限会社より株式会社 河合商会に組織変更する。
平成11年2月:ホームページ開設。
平成12年4月:関連会社ワールドショップ可愛からネット販売営業部第5課通販業務へ組織変更する。
平成12年6月:流通センターを足立区花畑から同区保木間3丁目に移転。
平成13年9月:創立30周年を迎える。
平成13年11月:ニューレイ ジャパン リミテッド (東京都足立区保木間3-34-6)総合玩具販売会社設立する。
平成14年1月:営業部門を強化の為、5課に区分する。
平成14年2月:ミラクルハウス製品輸出向け販売開始する。
平成15年9月:ギフトショーTOKYOに初出展する。
平成16年4月:ニューレイジャパンの総代理店として販売を委託開始する。
平成17年9月:設立35周年を迎える。

遠い記憶に同社の影が差すのも上掲の同社の沿革を見れば納得です。 その創業の僅か翌々年には同社の看板となる 風物詩シリーズ の第1弾が発売されているのでした。 その名も そば屋 とある通り、昔懐かしいお蕎麦屋さんの佇まいがプラモデル化したもので、 当時としては異色のシリーズと言えるでしょう。 子供は勿論、大人にもこのシリーズは人気を博したのではないでしょうか。

このシリーズが発売されるのもまた沿革を見ればその創業が 鉄道模型ジオラマ用パーツ製造及販売業 に由るものですから、全く同社の強みを活かしたものであったと 模型界の門外漢にも今となれば分かります。 そしてその強み其の侭に昭和51年(1976年)には 新シリーズ 箱庭シリーズ を開発、その第1弾として 農家 が発売されています。 もしかしたら記憶の片隅にオボロゲに浮かぶのは此方だったかも知れません。 この年には初めて東京大阪の大都市圏見本市にも出品し、 翌年には模型の聖地、静岡見本市にも出展を果たしています。 同時に箱庭シリ-ズでプラモデル大賞・フロンティア賞を受賞してもいますね。

その創業初期からジオラマ系に強みを発揮しながら事業を伸ばして来た様子が沿革にも覗えます。 そして受賞以降も好調が続いただろうことは 平成元年(1989年)に自社ビルが完成していることからも読み取れます。 風物詩シリーズや箱庭シリーズだけでなくその創業事業である鉄道模型に於いても鉄道ファンの間に カワイの鉄道模型シリーズ として一定の知名度、評価を獲得し売上が伸びていきました。 販売先は国内だけに留まらずアジアにも商圏が広がり遂には 2003年8月期に年商は約9億円となったのです。 これは平成15年のこと、沿革ではギフトショーTOKYOに初出展した頃ですね。

しかし冒頭にも記したように近年打ち続く不況、 長引く円高に因る海外販売の採算悪化に加え、 東日本大震災に於ける消費自粛も相俟って去年平成23年(2011年)には8月期の売上が 2億5千万円程迄落ち込んでしまいました。 そして今回の仕儀と相成ってしまったのでした。

鉄道ファンと言うのは根強く愛着を持ってくれますから 同社のNゲージ鉄道模型には昔からのファンで今現在もファン居続け、 残念に思われる向きも少なくはないでしょう。 そして河合商会の風物詩シリーズや箱庭シリーズなどのジオラマ模型に端を発するシリーズは 人によっては甘酸っぱいようない幼い日の思い出と重なるかも知れません。 ホビー業界に独自の地歩を築いた老舗の倒産は何とも遣り切れない物悲しさがあるものです。

使用写真
  1. 水車!長野の大王わさび園( photo credit: 052_otyon(2019年11月26日現在アカウント削除確認) via Flickr cc
参考URL(※)
  1. 鉄道模型(Nゲージ)で知られる玩具卸 株式会社河合商会 弁護士一任、自己破産申請へ(帝国データバンク:2012年10月17日:2019年11月26日現在記事削除確認)
  2. (株)河合商会[東京] 玩具販売~ 鉄道模型専門店として有名 ~(東京商工リサーチ:2012年10月17日)
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