じわじわと真綿で首を絞められるように業績の下がっていた処に 東日本大震災で津波の直接被害を受ければ堪ったものではありません。 岩手県大槌町の 大槌町漁業協同組合 が2012年10月5日、遂に盛岡地裁に破産を申請[※1] しました。 負債総額は約15億5千万円とされています。
今年明けたばかりの2012年1月13日には理事会が催され そこに事業継続を断念、事業は停止されていました。 新組合に事業は移管されて以降任意整理の方針で手続き[※2] は進められました が一部債権者の理解は遂に得られず今般の仕儀と相成ったのでした。
大槌町漁協は年頭の経営破綻したのはしかし唯に東日本大震災の影響に非ずして、 それは引き金となったのみで、以前より債務超過は進んでいたものとされます。 原因は近年の当該漁協を取り巻く環境の変化に対応し切れない処にありました。 同漁協では鮭の定置網漁を中心に事業を展開していましたが、 この鮭は近年増加する輸入に需要を奪われていました。 また環境の変化に因る漁獲高の減少もありました。 これに適切な対応策が打てぬまま債務は徐々に膨らんでいったのです。
しかし矢張り東日本大震災が大きな被害を与えたのは確かですし、 それが引き金になる今回に類似した事態が今後相次ぐかも知れないのは否めません。 またこれが状態の良かった漁協をも苦境への扉を開かせしめるものともなり兼ねません。
水産庁からは2012年9月11日付けでレポート 東日本大震災による水産への影響と今後の対応 が配信されています。
このレポートに依れば北海道、青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉の7道県で 全国の海面漁業・養殖業生産量の5割を占めており、 大震災は正しくこの日本の漁業に多大な被害を与えたのでした。 エネルギー問題も重要ですが、この漁業に与えられた甚大な被害も 海洋国家日本に取っては深刻な問題です。
水産庁レポートには東北圏域に於いて津波被害を受けた漁港が図示されています。 下に掲示するのがそれであり、ハイライト部分には 大槌町もリストアップされているのが分かるでしょう。
加えて図を見れば大槌町漁港ばかりでなく東北圏の太平洋岸一帯に 被害を受けた多くの港があるのが判然します。 然るに水産庁の復興施策計画などの記載されたレポートが配信されもしたのですが、 残念ながら今回大槌町漁協の破産申請がなされてしまいました。
今なお大きな爪跡の残る東北大震災の凄まじさを又もや思わされる今回の倒産事案となりましたが、 その原因がバブルであってもリーマンショックであっても、そして大震災であっても 倒産事案は原因の発生に連動して即時にすべてが起こるものにはないのはかたむき通信に 倒産 カテゴリーを用意すれば容易に知られます。 何とか事業を継続しようと努力して努力して幾ヶ月、幾年かはもたせ、 それでもなお耐え切れず刀折れ矢尽きる状況が見て取れるのです。
上図の如き大震災の影響の広範さが見られる東北圏域に漁協の動静が気になる処ですし、 復興支援計画は速やかに、効果的に実施され 少しでも今回に類似の事案が防がれるのが望まれます。
参考URL(※)- 大槌町漁業協同組合(東京商工リサーチ:2012年10月9日)
- 大槌町漁協が経営破綻、11億円の債務超過(読売online:2012年1月14日:2019年11月12日現在記事削除確認)