一般に業界用語は音楽用語に端を発するとは良く言われる処で 業界が即ち芸能界を意味する処なれば其れも宜成る哉たる処でしょう、 1万5千円をCから始まるコードの比喩としてチェーマンゲーセンなどと言い表すのは其の代表で 延いてはズージャなどはジャズの引っ繰り返しと巷間説明されたりしますが 玄人筋芸能音楽関係者はシンコペートしている、と説明したりする処です。 所謂拍子を喰っている、とするもので此れを繰り返せば言葉の首尾が引っ繰り返る道理です。 以前、上岡龍太郎さんがテレビ番組で シーワタのシーカレがズージャのドンバでヤノピーターヒー なんて鶴瓶師匠を困惑させていたのに大笑いさせられもしました。
さて此の如く耳年増に
一般的にアンティシペーションは予測、予想と訳されるのであれば成る程 此れはアニメーション業界に於いてはまた異なる意味で用いられているのでした。 其れは 事前動作 と訳されるものです。 以下のYouTube動画にはアニメーション界の大御所 大塚康生 さんに2002年に密着取材した際後進に指導する様子が映し出され、 キャラクターが大鎚を振るう様をアニメ表現する課題や キャラクターが飛び込み台から飛び込む様をアニメ表現する課題などに触れる折に説明されています。
此れから動じようとするキャラクターに突然其の動作に入らせるのではなく バネの弾む前に縮む如くキャラクターに備えの構えをさせると観客の目に自然に映ずると言う理屈で、 アニメーション描画の基本ともなるべき手法ですが 大塚さんは麻薬Gメンからアニメ業界に転身する際の面接で此れを自然に使い熟したと言うのですから 後のジブリの両巨頭、 宮崎駿 さんや 高畑勲 さんに大いなる影響を与えたと言うのも頷けます。
アンティシペーションなる言葉が芸能音楽とアニメーションと言う現代の2つの大きなエンターテインメント分野に それぞれ異なる概念として上手く組み込まれ面白可笑しく利用されているというのも床しいものに思います。
追記(2021年3月16日)
大塚康生さんの訃報が伝えられました。 昨日、2021年3月15日朝、日本アニメ界に偉大な足跡を残された其の生涯を閉じられたそうです。 享年89歳。 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。 氏の訃報は以下各メディアに取り上げられる処となっています。
追記(2021年5月23日)
大塚康生さんの出身地は島根県津和野にて、
昔風に言うならば
- Jazz.( photo credit: Sadie Hernandez via Flickr cc)
- シンコペーションとアンティシペーション(トロンボニスト相川等:2020年4月27日現在記事削除確認)
- 著名アニメ作家の原点 津和野駅(島根県津和野町)【いわみがたり 鉄道編<3>】(中國新聞:2021年5月2日)
- 大塚さんのアニメパネル展 出身地の島根・津和野「ルパン三世」など(中國新聞:2021年3月18日)