星野アイエヌジー廃業~自作アルミケースの雄星野金属工業及びソルダムからの系譜ブランドWiNDy消滅

付加価値の高く市場に周知もされた商品を創り上げながら 遂に地に落ちてしまったメーカーがあります。 星野アイエヌジー株式会社 です。 今2012年6月16日現在、同社サイトにアクセスしても空しく下記引用する文言が並ぶのみです。 (2019年5月3日現在webサイト閉鎖確認)

誠に勝手ながらこの度弊社は営業を停止し、整理・廃業することになりました。
長らく御支援・御愛顧を賜り誠に有難うございました。

We stop business on June 15. Thank you for having you cheer windy for a long time.

嘗て自作PC用アルミケースで一世を風靡しながら 帝国データバンクの倒産速報にも扱われない淋しい幕引きとなりました。

同社の失敗はその分かり難い組織体制にも一因が有ったように思います。

自作PC業界で一世を風靡した製品は高品質のアルミケースでした。 それは1998年に発売され、その品質の高さから高価格設定ながらも 瞬く間に評判となりPC系の雑誌は挙って取り上げました。 自作パソコンで同社の製品を使うことはステータスとも感じられたのです。

ここに同社の製品としましたがこれが一概に同社と言い切れない 込み入った事情となるのが分かり難い組織体制とする処です。 それは創業当初、製造部門が星野金属工業株式会社、 販売部門がソルダム株式会社の2社体制であったことです。

こう聞けば何も違和感はありません。 1982年以前のトヨタ自販とトヨタ自工のようなものとも思われ、 一つの経営戦略としてないものではありませんし、 時期さえ折り合えば効果的なものともなり得るでしょう。 しかし星野金属工業及びソルダムではそうはなりませんでした。

その悪弊の最たるものがWebページとして残っています。 それはITmedia+D PC userの2005年10月29日の記事 「うちは入荷しません」──某社製ケース製品を入荷しない、あるアキバショップの本音 です。 ここに執筆者の感想が当時の市場を示す貴重なものとして記載されています。 即ち2005年の時点で2、3年前には新製品が出る度に秋葉原で結構な話題となっていた ソルダム(星野金属工業) の製品が最近はあまり見かけない気がする、 と言うものでそれこそこの記事起稿の契機となっているのでした。

その原因はソルダムが自社展開する通販サイトで 他社に卸している店頭での高付加価値価格を考慮しているとは思えない 卸値並みに安い廉価で提供したいたことでした。 これでは他店で売れる筈もなく、 従ってソルダムでしょうか?星野金属工業でしょうか?から仕入れられることも有り得ない話しです。

そして遂にその翌年2006年7月11日のITmediaニュースの 「WiNDy」PCケース製造元・星野金属工業が不渡り に記される如き事態を招いたのでした。 この記事に於いては当初からはっきりしない同社の体制について、 WiNDyブランドは星野金属工業の製品ブランドとして1997年に登場、 1998年に旧星野精工がソルダムに改称し、同ブランド製品を販売することになった旨、記されてもいます。

此の後も敢えてこの件をまとめてWiNDyブランドと呼べば WiNDyブランドは混迷を極めました。 星野金属工業が倒産後に外部委託した製品では粗悪な品質のもので、 遂には2008年ソルダム自らも消滅することになります。 その消滅に関してのWiNDyブランドの動きこそ奇妙奇天烈でその経緯は インプレスのAKIB PC Hotlineの2008年6月21日の記事 WiNDyブランドの発売元が変更、混乱も に詳しくあります。 極く約めて言えばWiNDyブランドの取扱いは短期間に ソルダム株式会社→ウィンディデヴェロップメント株式会社→星野アイエヌジー株式会社 と移管したことになります。

これを混迷と謂わずして何を混迷と言うでしょう? この混迷は明らかに製品に影響を与えました。 最早一世を風靡したあの高品質なWiNDyブランドはその見る影も有りませんでした。 2ちゃんねるには同社を揶揄する 【規約違反】星野ING・ソルダム113【義捐金詐欺】 のようなスレッドも立つ始末でした。

そして今回とうとうITmedia+D PC user2012年6月15日の記事 星野アイエヌジー、廃業 に伝えられる本記事冒頭の次第と相成ったのです。

今回の顛末を見てみると組織体制は実に重要なものだと思い知らされます。 商号、屋号を自社の主力ブランドに変更する企業は多く見られますが、 今回の件に類似した事情も鑑みた上での措置なのだろうと思います。 同社もその価値を一旦は持ち得たブランド名 WiNDy に統合、企業資産を集中すればまた違った展開が有ったのかも知れません。

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