日経新聞にアサヒビールを擁する アサヒグループホールディングスが、 東欧のビール大手 スターベブ(2018年12月24日現在公式webサイトは閉鎖) を買収する最終調整に入った旨、 昨日2012年3月11日に伝えられたそうです。 買収価格は日本円で2,000億円超ということで、 アサヒグループHDに取っても買収額は過去最大となるようです。
このニュースからはアサヒの新興国への気構えが感じられます。 日本のものづくり、メーカーの凋落が言われること喧しいですが それはグローバル化にも要因の一端があり、 清涼飲料・酒類企業に取っても対岸の火事とはなり得ないのでしょう。 うかうかしていれば己もグローバル化の波に飲み込まれてしまう、 それに対する対策の一つが今回の一石なのだと思います。
2011年にはアジア・オセアニアでの買収案件4件、 総じて1,400億円を投じているとのこと、 今回更に東欧への投資が為されようとしている訳です。
因みにスターベブは 東ヨーロッパの醸造グループでチェコ共和国に本拠を置き 20以上のブランドを保有しています。 設立は2009年12月で従業員は4,000人以上の規模です。 アサヒに取って東欧、延いてはヨーロッパへの 最適な足掛かりとなるのではないでしょうか。
アサヒは2011年海外売上高の942億円、 これを2015年には4,000億超に伸ばす方針を固めているといいますから 1年毎現在の売上高以上の売上伸長が求められます。
アサヒビール株式会社 は アサヒグループホールディングス株式会社 の100%出資の完全子会社で2011年に旧法人のアサヒビール株式会社が 商号をアサヒグループホールディングス株式会社と変更した際に、 会社分割によって設立された新法人です。
アサヒビールのビール業界に於ける2011年のシェアは 37.9%と2位のキリンの36.2%に僅差で上回っています。
追記(2018年12月24日)
スターベブはアサヒグループHDならぬ、 米国の大手ビール企業 モルソン・クアーズ・ブリューイング・カンパニー (Molson Coors Japan Co., Ltd.) の買収する処となりました。 以下の大手メディアの伝える記事を列挙します。
- 米モルソン・クアーズがスターベブ買収へ-約2900億円(Bloomberg:2012年4月3日)
- 米モルソン・クアーズ、東欧ビール大手スターベブ買収へ(ロイター:2012年4月3日)
- 米モルソン・クアーズ、東欧ビール大手スターベブを買収(日本経済新聞:2012年4月3日)
- モルソン・クアーズ、チェコのスターベブを26.5億ユーロで買収(WSJ日本版:2012年4月4日)
買収金額は26億5000万ユーロにて当時の為替相場では約2900億円、2018年12月24日現在では約3,350億円の大型買収でした。 本記事に伝えた当時買収元企業と見られていたアサヒグループHDについては、 ロイターの記事では、30億ドル、2018年12月24日現在日本円にして約3,320億円に上る買収には消極的だったとの関係筋の話を伝え、 日本経済新聞の記事では、2011年から2年間で4000億円を投じる用意があると表明してきもし、2000億円強の買収資金を用意したものの、 結局は3000億円近い買収額は投資効果が低いと判断し買収回避に動いたものの様です。 本記事の共有より8年半を経て少々気になるのは、 日本企業が買収撤回したことよりも、欧州、米国の相互に其れ程変わらぬ為替相場に対して、 両者に対する日本円の為替相場が300億円以上も低減している事実にて、 日本企業が欧州、米国の産業界から蚊帳の外に置かれていた買収劇が、日本低迷の兆し、象徴としても受け取られるように感じるのは穿ち過ぎでしょうか。
追記(2019年12月24日)
アサヒグループHDがスターベブ買収を不調に終わらせたのは、 日本凋落の象徴としての米国企業との競り負けなのか、 勘定に合わぬと自ら身を引いたのか、 はアサヒのみぞ知る処ですが、 販売量が漸減している国内市場とは言え、 こと国内販売に関しては本記事配信時の2012年から6年経った去年2018年の実績では、 アサヒビールはキリンビールを逆転する処か、 課税数量ベ ースでシェア39.1%と首位を勝ち取り、 2位のキリンビールの31.8%に大差を付けており[※1] 経営判断に狂いが無いのが証明されています。
一体、アサヒグループHDがスターベブ買収を目論んだのはグローバル展開が目的で、
萎む国内市場に危機感を覚えた所為でしょう、
国内シェアを逆転された
キリンホールディングス株式会社
も思う処は同じ、
上に埋め込んだ
ANNnewsCH
が2019年11月21日に共有した動画では、
キリンビールが全米に販売網を擁し
クラフトビール
とは動画が伝える処に依れば、
小規模生産で味や香りに独自性を持ち、国内で女性や若い世代の需要の弥益す分野としています。
クラフトとは本来「技術」を意味し、其処から敷衍して技術を生かした手工芸品、民芸品をも包含する言葉で、
従ってクラフトビールとなれば職人が手作りするビールとなり、
英語圏では大手ビール企業の量産ビールに
日経新聞が更に詳細を伝える記事[※2] では、ニュー・ベルジャン社は 「ファットタイヤ」や「ブードゥー・レンジャー」を始めとして40種類を数えるブランドを以て全米で事業展開しているとされ、 而して上記した様にシェア3位を勝ち取っているのでした。 また記事にはクラフトビールは米国では去年2018年の販売量がビール市場全体の約13%を占めるともされ、 些かクラフトの原義からは外れて来ている気もしますが、 従ってビール企業に取ってはクラフトビールとは無視出来ない製品分野となってもいるのが伺え、 キリンHDも食指が動いたのでしょう。
日本国内に於いては地ビール分類のシェアは僅か1%と些少な中で、 大手四社中にもキリンビールが特に注力しているのは、 米国の潮流を見ての動きでしょうし、孰れ国内にも此の流れの生まれるのを予見しての動きでしょう、 先んじて自家薬籠中の物とせんとしています。 確かに今、クラフトビールに分類されるビールが日本国内では女性、若年世代に受けている状況を以て、キリンビールが其れをアサヒビールに対する決め手として、 グローバル展開の後には、国内市場シェアの再逆転を狙っているものと思われます。
参考URL(※)- 【2019年版】ビール業界の国内市場シェアと現状、今後の動向(転職・就活のまどサラリーマン:2019年4月4日)
- キリンHD、米クラフトビール3位を買収(日本経済新聞:2019/11/20)