戦争となればその兵器としては銃器や戦車、戦闘機、戦艦などを通常は思い浮かべると思います。 しかし今やスマートフォンが兵器と化しているというのです。 平和な世の中にあっては便利で肌身離せないスマホは 戦時に於いてもどうやら状況は同じ様です。
TechCrunchの2012年3月10日の記事[※1] ではそのスマートフォンを戦場で携帯することで 思わぬ苦戦を強いられることがあることが伝えられます。
今やスマホにGPSが搭載されることは当たり前です。 これは戦場に於いて、己の位置特定に有利に働くことは間違いないでしょう。 しかしこの己の位置情報が敵に漏れたとしたらどうでしょう。 その危うさは謂う迄もありません。
その漏れる経路は写真にあります。 デジタルカメラ時代になってから写真にはExifデータと言う 位置情報を透かしのように含むことが当たり前ですから これを共有した途端に戦況が敵方に丸分かりとなってしまうと言うのです。
従軍記者や国防総省の調査員、軍需企業の社員などは言うに及ばず、 下士官さえも軍律でこれを防ぐことは難しいそうで ソーシャルメディアさえ戦略の一部に組み込むべき必要があるのかも知れません。
以上を鑑みた米国では特別なスマートフォンを開発、 戦場に於いての利用を考慮しているそうです。 同じくTechCrunch、2012年2月4日の記事[※2] を見れば既に実践段階に入っているものと思われます。
工業化社会から情報化社会へと移り行くに従い 戦場も兵器も様変わりが余儀なくされるようです。
追記(2019年7月17日)
iPhone初代の発売日は2007年6月29日、日本では2008年7月11日、 初のAndroid端末の其れは2008年10月22日でしたが、 数年を以て世の中を席巻し、今やスマートフォン無しには世の中は成り立たなくなりました。 世に広く普及した民生用の機器はやがて軍事用の端末を性能面にも費用面にも凌駕し、 本記事配信の運びとなったのでしたが、濫觴時として脅威の種類は位置情報の漏洩を挙げ、其の活用情報は未熟の感がありました。 そして様変わりを余儀なくされるべく機密情報取り扱い用のAndroid端末開発の端緒に就いた旨、紹介したのでしたが、 専用の端末開発は頓挫したようで、矢張り民生用に頼らざるを得ない状況と、其れが惹起する重要な問題に関する報道[※3] が齎されました。 去年、2018年々末に、米軍使用のAndroid用2アプリは深刻な脆弱性が孕み、 実際の戦闘にさえ影響を及ぼすと言うのです。 2アプリは以下に列挙するAndroid端末用のプログラムにて、 孰れも周囲の状況の衛星画像を提供し、リアルタイムで友軍との作戦上の調整を行い得る機能を有すと言います。
此れ等は2012年から開発されたと言いますから、 本記事配信当初の時期で、若しかしたら末尾に紹介した特製Android端末と関係が有ったのかも知れません。 此れ等が2015年からは米軍の総ての部隊に実戦配備されていたとされるのですが、 去年2018年々末にセキュリティー上の脆弱性を孕むものと内部告発者、 Anthony Kim 氏によって明らかにされたのですから、実務使用され常に軍事作戦が漏洩する可能性のあった3年間が恐ろしくもあります。 更に此の2アプリは軍事演習での使用を想定され、本来実践に投入されるべきものではないため、 サイバーセキュリティー上の対策が施されてなかった旨、明らかにもなり、となれば此れはプログラム上のバグとかではなく端的に杜撰な管理に因る人災にて、 世界一の軍隊を有する米軍と雖も、IT事情はまるで経営者が不慣れな零細企業の感もあるとは、意外な知見を得られたものです。 世界最強の軍隊に斯くあれば、リアル兵器ではあっても、 純粋なITガジェットであるスマートフォンの導入では従来のリアル兵器とは異なる支給ノウハウが必要となるのかも知れません。
使用写真- Army engineers develop chargers for phones, laptops in combat( photo credit: U.S. Army RDECOM via Flickr cc)
- 陸軍がジオタギングの危険性を警告(TechCrunch:2012年3月10日)
- 合衆国政府と軍部が機密情報を扱える特製のAndroid携帯を開発中(TechCrunch:2012年2月4日)
- 米軍が使用していた2つのAndroidアプリに深刻な脆弱性--内部告発で明らかに(ZDNet Japan:2018年12月21日)