全国初マジコン販売業者を改正不正競争防止法で摘発~任天堂30年戦争

ファミコンの次世代機としてスーパーファミコンが華々しくデビューしたのは1990年11月21日のことでした。 当時よりの問題とされますが、類似の問題はファミコン時代にも耳にした記憶もあり、 そうとなれば任天堂としてはゲリラ戦を相手の30年戦争、スーパーファミコンからでも20年戦争になります。 時事ドットコムが2012年5月30日に配信した 「マジコン」販売容疑で男逮捕=1200台以上、全国初摘発-愛知県警 (2019年4月16日現在記事削除確認)によれば全国で初めて愛知県警サイバー犯罪対策課と千種署は同日マジコンの販売を摘発したとのことです。 容疑は不正競争防止法違反でした。

マジコンとはマジックコンピュータの略とされます。 20年ほど前にフロントファーイースト社製のスーパーファミコン用コピーツール スーパーマジコン がその始まりとされ、名称もそこから引き継がれて来ました。 スーパーマジコンはスーパーファミコンで利用出来るゲームのデータを複製出来る機能を持ち、 著作権法上の私的複製を謳って販売されました。 しかしその複製データは個人の私的利用に留まらず 広く第三者が使うように流通し剰え売買もされたのでした。

それは任天堂の長く苦しい闘争の始まりでした。 マジコンは世界的に普及していったからです。 インターネットの普及が更にコピーゲームの流通を容易にしました。 ゲームボーイアドバンスからニンテンドーDSなど、 ゲーム機を発売するたびにこの問題に頭を悩ませたと言っていいでしょう。 しかし同社は倦まず弛まず対策を進めたのでした。 要諦はマジコンの流通規制にありました。 決して潜在顧客である利用者への罰則要求ではありませんでした。

スーパーファミコン発売より10年が経とうとする1999年10月に不正競争防止法が改正され ゲームにかけられているプロテクトを意図的に解除する装置や道具の販売は違法とされました。 またその10年後、2009年2月27日には東京地裁からマジコン販売業者に対し、 マジコンの輸入販売禁止と在庫廃棄の命令が下されました。 しかしこれには刑事罰が規定されておらず、 個別に民事差止請求・損害賠償請求をする必要があり、 実体は野放し状態であったとも言えます。

そして2011年12月、不正競争防止法は再度改正されました。 この改正を受け、今回の逮捕劇の露払いとなるような事件が今月上旬5月10日に発生していました。 毎日jpが2012年5月11日に伝える処の 商標法違反:PSP模造品販売、容疑で29歳男を再逮捕 /栃木 (2019年4月16日現在記事削除確認)です。 容疑は1月から2月に掛け、ネットのオークションでソニーの携帯ゲーム機、 PSP模造品を販売して商標権を侵害したこと、 更にはネットで不正取得したソフトが使えるよう改造したPSPのメモリーを販売したこと、 で逮捕、起訴されたのでした。 容疑はマジコン販売に於いてではありませんが不正競争防止法の改正後初の適用となる逮捕劇でした。

そして遂に今回マジコン販売業者の逮捕劇に至ったのです。 任天堂ではこの件に関し2012年5月30日付けでプレスリリース ニンテンドーDS用装置の販売者に対する刑事摘発について を配信しています。 以下に引用します。

 このたび、ニンテンドーDSに施された技術的制限手段(セキュリティ)を回避してコピーゲームの起動を可能にする、いわゆる「マジコン」と呼ばれる装置の販売者に対する、刑事摘発が行われましたのでお知らせします。

 マジコン等の技術的制限手段回避装置の輸入・販売行為に対しては、昨年12月1日に改正不正競争防止法が施行され、同行為に対する刑事罰が導入されました。今般の刑事摘発は、同法の改正後、マジコンを販売する業者らに対する初の刑事摘発となります。

 マジコン販売業者らに対しては、これまで民事的手段を通じて警告を発し、また、民事訴訟を提起して対応してきました。しかしながら、マジコンの販売を違法とする民事訴訟の確定判決(平成20年(ワ)第20886号、35745号)を得、さらに、昨年の不正競争防止法改正によりマジコン等の販売に刑事罰が導入された後も、なお同種装置の販売を止めない業者らが後を絶たないことから、愛知県警察本部のご協力を得て、今般の刑事摘発に至りました。今般の摘発により、今後マジコン等の装置が市場から無くなることを期待しています。

 なお、改正不正競争防止法に基づく刑事摘発としては、本件に先だって、本年2月に福岡県警察本部によるWiiの改造を代行していた業者に対する事件があり、既に同事件は被告の有罪が同月中に言い渡され、その後判決は確定しています。

 なお、マジコンの販売等行為を違法とする判決は、日本以外の各国(韓国、台湾、イギリス、イタリア、オランダ、ドイツなど)でも相次いで出されており、一旦はマジコン販売業者に「無罪判決」が出されたフランスやスペインにおいても、その後「有罪」とする判決がなされ(フランス:平成23年9月、スペイン:平成22年10月及び本年4月)、その一部は既に確定しておりますので、併せてお知らせします。

 これらの摘発に際しまして、ご協力をいただきました多くの関係各位に、この場を借りまして感謝申し上げます。
以上
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