メタンハイドレート開発急ピッチ~日本がエネルギー資源大国に変貌する可能性

未曾有の大震災と伴う原子力発電所の事故より エネルギー問題は日本に於いて更に喫緊の問題となりました。 代替エネルギーの議論も喧しいですが、 その内の一つ、天然資源である メタンハイドレート に於いては日本が一躍エネルギー資源大国にのし上がる可能性があります。

メタンハイドレートは天然ガスエネルギー資源で 日本近海に膨大な埋蔵量が確認されています。 それこそ世界で最も産出量が期待出来、 言ってみれば現在日本は石油に於けるアラブ周辺の位置にあると言っていいでしょう。

メタンハイドレート(methane hydrate)とは、メタンと水の化合物です。 見た目が白く結晶状で氷のようであるのに火をつけると燃えることから 燃える氷 とも呼ばれています。 メタンハイドレートから分離したメタンガスが燃えるときには 二酸化炭素の排出が石油や石炭の半分であることから 地球温暖化対策にも有効なエネルギーとなります。

メタンハイドレートが何処にあるかと言うと存在出来る環境の条件が 低温かつ高圧であるですので可能性としては永久凍土の地下や海底になりますが、 実際にはほとんどが海底に見付かるようで、 現時点では日本近海にその発見量が著しい多さを見せていることになります。

メタンハイドレートについては サイエンスチャンネル 提供の動画が分かり易いので下に埋め込みます。

日本に於いては1990年代にメタンハイドレートの基礎研究がスタートしました。 2001年7月には経済産業省がメタンハイドレート開発計画を発表し、 それに伴い メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム 、通称 MH21 が発足、商業化に向け研究が進められています。

メタンハイドレート研究開発予定は 商業利用を最終目標として3つのフェーズに分かれています。 以下に挙げるものがフェーズの条項と時期になります。

  • 第1フェーズ:基礎研究(2001年~2008年)
  • 第2フェーズ:実証試験(2009年~2015年)
  • 第3フェーズ:技術整備(2016年~2018年)

現在は第2フェーズの真っ只中、ということになりますね。

第1フェーズに於いては様々な基礎研究がなされました。 その結果、本記事冒頭に記したように日本近海の豊富な埋蔵量が明らかになったのです。 中でも東部南海トラフ(紀伊半島から遠州灘沖に掛けての海域)では最も調査研究が進んでいます。 そしてこのフェーズの集大成が2008年冬にカナダと日本の共同開発として実施された 陸上産出試験 の成功です。 この試験では6日間に渡り減圧法により連続的にメタンガスを生産することに世界で始めて成功、 メタンハイドレートのエネルギー資源としての現実性の実証となりました。

ここで言う 減圧法 とは上にも記したメタンハイドレートの安定存在環境である低温かつ高圧の内、 高圧条件を低減することで水とメタンガスを分離する方法です。

只今真っ只中にある第2フェーズではその最終目標を海洋での実証実験に置き、 着々と開発研究は進行中です。 このフェーズは2015年の 海洋産出試験 の実施を以て終了予定となっています。

そして最後の第3フェーズでは商業的産出の為の技術整備が行われます。 これを以てして漸く我々一般がその豊富なエネルギー資源の恩恵に与れることになるのですね。

商業利用に於いてはまだまだ問題は山積されており、 例えば南海トラフのメタンハイドレートは深く泥中にありその採取には困難を伴うことがあります。 また第1フェーズの集大成として実証された減圧法も効率を上げようと 圧力を低め過ぎると地層内に氷が発生してしまうので 補完的に熱を加えたりしなければいけない、などと言った問題を解決していかなければなりません。

しかし冒頭にも記したように今日本に於いてはエネルギー問題は喫緊の最優先課題の一つです。 このような状況下、 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC) は今年2012年2月2日に海洋産出試験に着手すると発表しました。 愛知県渥美半島沖で掘削作業を開始し、来年2013年1月~3月の産出を目指す、というものでした。 世の動向を受け計画は前倒しに進められているのでしょう。

実際の商業利用は遠い未来となると考えられていたメタンハイドレートも 一般からの後押しを受け割りと早い時期に実用化されることになるのかも知れません。 嘗てエネルギーの自給率の低さに喘いでいた日本がエネルギー資源大国となる、 こんな夢の様な物語も直ぐそこまで来ているのかも知れませんね。

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