老舗皮革メーカーである メルクス株式会社 (2019年4月24日現在webサイト閉鎖確認)が倒産となりました。 設立は明治44年即ち1911年の長野県に本拠を置く老舗です。 つい先年、創業100周年を迎えたばかりでした。 負債総額は約27億1559万円と見積もられています。
同社からは2012年6月11日付けでPDFファイル 民事再生手続開始の申立てに関するお知らせ (2019年4月24日現在webサイト閉鎖によるファイル削除確認)が配信されています。 ここ数年は売り上げ不振から組織の合理化、経費の削減、人員調整等の実施、 及び金融機関の返済猶予を受け、また中国企業との合弁事業も模索する中で、 愈々自力での再建が難しいと判断、 今回の民事再生手続開始の申立てを東京地方裁判所に行い、同日受理される措置となりました。
この措置は民事再生法に基くもので、 倒産と言っても再建目的型のものですから 鋭意努力されて立派に再生されることが望まれます。
同社は老舗ながらも皮革業界では大手であり 1961年、即ち創業50周年には東証2部に上場していた上場企業でもありました。 しかしここ数年間は、例の記憶にも新しいサブプライム問題を引き金とする為替相場の変動、 今般の長引くデフレ経済下での原皮相場の高騰、 併せて同業他社との競争が激化し同社の収益性は著しく減殺されてしまう状況が続いていたと お知らせでは慙愧の念を伝えます。
即ちここ数年は上場企業としての資質に耐えうる状況ではありませんでした。 実は同社は去年2011年6月に フェニックス銘柄 に移行していたのです。
ではフェニックス銘柄とは何でしょうか? 上場廃止となった企業の株式は売買が難しいものとなります。 法人は無論、個人となればその敷居は一層高くなってしまいます。 その敷居を下げるために日本証券業協会が2008年3月に フェニックス銘柄制度を創設しました。 この制度に指定されている銘柄をフェニックス銘柄と呼んでいるのです。 従って株式売買を営む型には馴染みのこの銘柄も 門外漢には比較的新しい概念で耳にするのは初めてだという方も多いかも知れません。
日本証券業協会 にはフェニックス銘柄について分かり易く解説されていますので下に引用しましょう。
金融商品取引所を上場廃止となった銘柄の発行会社は、金融商品取引法等により開示が義務付けられている上場企業に比べて、企業内容の開示が十分に行われていないところが多いため、日本証券業協会では、非上場企業が発行する有価証券について、証券会社が投資家に対して投資勧誘を行うことを原則として禁止しています。
したがって、上場廃止になった銘柄は、上場廃止時点で換金機会がいちじるしく低下します。
さらに、本協会の規則により、非上場銘柄は原則として証券会社による投資勧誘が禁止されているため、投資家は証券会社を経由して売却先を探すことができず、特に、自力で売却先を探すことのできない個人投資家は、当該企業が再生を果たし再上場するまでの間は、当該株券を保有し続けるといった消極的な対応を求められるのが現状でした。
そのため、既存株主の換金の場として、フェニックス銘柄制度が創設されました。
基本的には既存株主の救済の場として構想された制度であるようですね。 メルクス社はこの制度の下で株式売買は維持され経営再建に奔走していたのですが、 今回それは適わぬものとなってしまいました。 従ってフェニックス銘柄としても昨日2012年7月12日付けで取引が停止されています。