ギャートルズ肉のエスケー食品を追い込んだデリバティブ取引(為替予約契約)と金融機関の責任

誰もが一度はかぶり付いてみたいと思った 骨付きマンモス?のお肉を実際に ギャートルズ肉 として商品化して話題を呼んでいた エスケー食品株式会社 の倒産のニュースを記したのはかたむき通信2012年5月25日の記事 ギャートルズ肉のエスケー食品倒産~まるでバブル崩壊の再来 でした。

しかもです、その倒産は帝国データバンクが定義付ける処の

  1. 2回目不渡りを出し銀行取引停止処分を受ける
  2. 内整理する(代表が倒産を認めた時)
  3. 裁判所に会社更生法の適用を申請する
  4. 裁判所に民事再生法の手続き開始を申請する
  5. 裁判所に破産を申請する
  6. 裁判所に特別清算の開始を申請する
の内、5番、即ち法的整理による清算型の手法になります。 詰まり会社自体が消滅することになってしまった訳です。

これを伝えてくれるのが帝国データバンクの大型倒産速報の2012年6月8日の記事 エビフライ・天ぷら等の製造販売【続報】 エスケー食品株式会社破産手続き開始決定受ける 負債53億8510万855円 になります。

この記事内に気になる点が3点あります。 以下です。

  • 近年は販売数量が伸び、年売上高は堅調に推移していた
  • 為替予約契約(デリバティブ取引)によって、毎月1000万円以上の差損が発生
  • 当社と金融機関との間で、売掛債権譲渡担保の担保権実行の留保について交渉していたものの奏功せず

この商売自体は堅調だったにも関わらず エスケー食品を消滅させるまでに追い込んだ デリバティブ取引とは一体何なんでしょうか?

デリバティブ とはWikipediaに依れば伝統的な金融取引や実物商品・債権取引の相場変動によるリスクを 回避するために開発された金融商品の総称であるとされています。 英語のderivativeの意は 派生したもの であり日本語では金融派生商品とも表現されるそうです。 その形態の一つに 先物取引 があり中でもエスケー食品が陥った罠は 通貨(為替)先物取引 であったろうと推測されます。

何故、食品加工業者がこのような金融商品に手を出したのか? そこには投機と言い切ってしまうのでは片付けられない事情があるようです。 この辺りの事情をよく説明してくれているブログ記事がありました。 おゆみ野四季の道ブログさんの2010年12月16日の記事 なぜ今、中小企業の為替デリバティブ倒産か? です。

この記事では2003年に或る食品輸入販売会社へ 金融機関が融資とセットで為替デリバティブの購入を勧めた例が挙げられています。 先物取引とはある商品を将来に渡って決まった為替相場で購入するものですから 金融機関の勧誘の台詞は、 120円のものが110円で購入できるから、絶対お得です というものでした。 実際2008年までは順調に推移していたとされています。 しかしリーマンショックで全て暗転しました。

2003年の円安時代を反映した契約は10年、 最初の5年は円安が続きましたが後半は円高へと転じました。 すると本来莫大な利益を享受出来る時期にこの食品輸入販売業者は 莫大な損を被ると言う不条理な事態が発生したのです。

ここで重要なのは金融機関にはまるで損失がない契約が結ばれていることです。 この食品輸入業者の事例では毎月数千万円単位の支払いを銀行から求められ、 勿論それでは耐えかねますからこの不条理な為替デリバティブ契約を解消しようとすると なんと年間売上高に相当する違約金の支払いを求められると言う 八方塞の状態に追い込まれてしまったのでした。 しかも金融機関自体が前門の虎、後門の狼に豹変するという事態は 餌で引き寄せ罠に追い込み仕留めようとしていると表現しても過言ではないでしょう。 打つ手立ても有り様筈もなく、とうとう倒産してしまったとの話です。

何故このような無慈悲な真似を金融機関はするのでしょうか? 本来金融機関は企業と手を携え合って商売を盛り上げているべき立場です。 さもなければ長期的には融資先を失って自らの首をも絞めることになる筈です。 答えは正しくその短期的視点にありました。 株式会社ファイナンシャルインスティチュートの2011年5月27日の記事に 銀行は、なぜデリバティブ取引を推進したのか があります。

此処には銀行側の短期的儲けを達成するための忌むべきからくりが赤裸々に解説されています。 そしてその根本には銀行が本来業務の貸金の金利よりは 効率的な手数料ビジネスの比率を増すべき大号令がありました。 信用コストのない手数料収益の方が、融資先の状況や時期に関わらず収益を上げられるからだそうですが、 そうであれば信用付き合いを以て成立する顧客企業を陥穽に落とす心根も分かろうというものです。 顧客企業の全く与り知らぬ処で銀行は昔の金融機関ではなくなっていたとも言えます。 しかも金融機関は己の損害が無いように法律的に万全の契約を整えているのです。 自らを信頼してくれていた丸腰の顧客企業を完全武装で後ろから一体どうしたいのでしょうか?

エスケー食品に於いても恐らく似た状況であったのではないかと推測されます。 有り得ようことです。 金融機関担当者と企業トップの遣り取りまで目の当たりに図が浮かんで来ます。 そして状況が反転、毎月1000万円以上の差損が発生しては手の施しようがありません。 当然エスケー食品としては金融機関に頼るのは人情と言うものです。 しかしです、売掛債権譲渡担保の担保権実行の留保に於いて 遂に金融機関は是としませんでした。

契約と言えばそれ迄です。 金融機関側に法律的落ち度はないのですから 最早顧客ではなくなった負債としか見られない企業には勝手にどうとでもなれ、と言うことでしょう。

金融機関サイドもデリバティブ取引などさせず本来業務を着実に積み上げていれば 現在の円高で莫大な収益を上げていただろう企業と末永い付き合いが出来、 永続的な収益も得られたものでしょう。 この短期的儲けに目の眩んだ明らかに可笑しな仕掛けで ギャートルズ肉が手に入らなくなるのは実に残念至極です。

追記 (2013年8月24日)
エスケー食品のギャートルズこそ消えたもののその思想は脈々と受け継がれているようです。 AKB48がギャートルズのお肉を喰らう を配信しました。

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