サブプライムローン再来の懸念ゆうちょ銀行住宅ローンと近年住宅意識から見る実効性

配信元の週刊ダイヤモンドオンラインさえその効果を疑っているだろうと思われるのは その2012年7月3日配信記事のタイトルが 驚きの内容で参入検討が進むゆうちょ銀行の住宅ローン とあり、文内には 越えるべき壁は高い ともあり、また末尾は 懸念は根強い と結ばれているからです。

記事の要旨は ゆうちょ銀行の住宅ローン事業への本格参入 としていいでしょう、 しかしその内容から一般的に考えて実効性に疑念が発せられるものです。 その内容とは 年収400万円以下の人への融資を一つの基準とし、50年にわたる超長期ローン と提供するものです。 この具体案に対して記事は 何ともチャレンジング と如何にもオブラートで包んだ調子で評しています。

従来ゆうちょ銀行はスルガ銀行の住宅ローンを代理販売するのみで 独自のものの販売はありませんでした。 巨大金融機関の進出を恐れる他金融機関を慮ってのことでしょう。 これが今年2012年4月の改正郵政民営化法成立を受け、今議論が活発化しているとのことです。

金融機関に取って一般の方への融資としては最も額の大きい 住宅ローンは魅力的なものなのでしょう。 ゆうちょ銀行としては一般の金融機関として考えた時、 先ずは住宅ローンが浮かび上がるのも無理からぬでしょう。 ではその住宅ローンと言うものは今、如何なる状況に置かれているでしょうか。

住宅などと言う高額の買物をするには借金は欠かせぬものですが この借金は住宅を買おうとするからこそ背負おうと言うものです。 それをゆうちょ銀行としては50年間背負う覚悟が購入者にあると見積もっている訳です。

処で此処に住宅購入マインドを推し量る好適な記事が一昨日2012年7月1日に配信されています。 MONEYzineの 買い時だけど、買わない「夢はマイホーム」時代の終焉か がそれです。 ゆうちょ銀行住宅ローン担当者の肝を冷やし兼ねないタイトルが設えられているようです。

その冒頭には以下引用の如き何とも相矛盾する文章が直列に繋がって提示されます。

ローン金利の低下や価格下落の影響もあり、マイホームは今が買い時といえる。 しかし、将来的にマイホームを購入したいという人は大幅に減少した。

これがタイトルの 買い時だけど買わない に反映されているのですね。

記事には詳細な分析はなされていませんが ハイアス・アンド・カンパニーが、1,836名を対象として6月に実施したデータが 以下引用の如く提示されています。

マイホーム未購入の人に、自分にとって今がマイホームの買い時だと思うか聞いたところ、 71.0%の人が「買い時だと思わない」と回答した。 さらに、将来的にマイホームを購入したいと思うかを聞くと、 「購入したい」が52.8%になり、昨年の70.3%より約2割近く減少した。

このようなデータをゆうちょ銀行では採取しているのでしょうか? 週刊ダイヤモンドは更にサラリとですがかなり致命的な一文をものします。 それはこの新住宅ローンの販売に当たっての肝は精緻な審査スキルであるに関わらず ゆうちょ銀にそのノウハウはなきに等しい、としています。 通常民間企業は新規事業に進出するにも自社のコアコンピタンスを 如何に活かせるかで進出事業を決定します。 さもなければ鵜の目鷹の目の既存市場での失敗は目に見えているからです。

どうやら此処にゆうちょ銀行の心底が浮かび上がってくる感も見て取れます。 金融機関であれば集めた資金を運用して利益を上げなければなりません。 そしてその運用リスクと減じるために運用先は分散させる必要も出て来ます。 此処にゆうちょ銀行はほぼ運用を国債に頼り切っている、 即ちそれが審査能力の欠如にも繋がる状況を招いている訳ですが、 詰まりはとても金融機関と胸を張って主張出来る形態を保てていない様相を呈しているのです。 有態に言えば 国債以外の資金運用先開発に焦っている としても好いのかも知れません。

従ってダイヤモンド記事は他金融機関関係者の懸念である 民間と競合させてくるのではないか を持ち出して文章結んでいます。

巨大金融機関の進出での従来金融機関の破綻は好ましからざるものではありますが、 只に衰亡に向かうとするのも面白くありません。 それはゆうちょ銀行の資本力を見れば致し方ないとは思うものの 一方を押さえ込んでの歪な形の市場には違いないからです。

ゆうちょ銀行の無理な商品開発は些か疑念を抱かざるを得ませんが、 既存住宅ローンへの進出はそれはそれで 利用者側の立場から考えれば悪いばかりでもないように思えるのです。 ただし住宅取得マインドが充分暖まっていればの話しですけれど。

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