提案好きなのは岐阜県の県民性なのでしょうか、 たった二つの企業の特性を見ただけで決め付けてもいけませんが、 業績絶好調の中小企業が共に岐阜県に本拠を置き、 共に社員から改善の提案を募っているシステムを上手に機能させているとなると 単なる符合とも思えなくなって来ます。
扱うゴキブリ退治の商品 ゴキブリキャップ は大ヒットのベストセラー商品で尚且つ1985年創業の翌1986年に発売してから 今尚売れ続けているロングセラー商品でもあるのが、殺虫剤を主業務とする 株式会社タニサケ です。
かたむき通信には2012年6月12日に 未来工業~ヘンなきまりの優良企業はホウレンソウも残業も禁止 を配信、これも岐阜県に本拠を置く 未来工業株式会社 を取り上げました。
未来工業は数々の他社とは逆を行くユニークな施策が有名であり これをテーマに現取締役相談役の山田昭男氏が上梓した 日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり” もベストセラーとなっています。
その施策の一つとして6月12日記事内にも記したのが 改善提案制度 でした。 差別化を図る為の方策として社員に常に考えることを習慣付けさせようとの目論見ですが、 これが面白いのは提案内容を見る前に、即ち内容如何に関わらず500円の報奨金が付される部分です。
普通は採用された改善提案が金一封を受けるものですが、 どんな下らない内容でも問題無く対価が払われるのも異色です。 毎月何件は提案してやろうと言う気概を抱く社員も出て来るようで、 山田氏の思う壺、正しく社員の 餅 ベーションを上げようと言う目論見通りに機能している ヘンなきまり の一つです。
さて此方は同じく岐阜に本拠を置くタニサケも 社員の改善提案でアイデア満載の企業で Biz STYLEの2008年9月11日配信のビジネスマガジン <2008.7月号特集>case3タニサケ(揖斐郡池田町) で取り上げられ、2006年当時日本HR協会調査で 年間1人当たりの改善提案への報奨金が23万円で 6年連続全国報奨金ランキング首位を奪取した旨伝えられます。
そして未来工業と奇妙な一致を見せるのはその提案に対する取扱いで 社員から出された改善提案には基本的に否定しない、と言う部分です。 従って改善提案1件につき300円を支給する、これも関わらずまた、 効果に応じては1000円から2万円がこの額に追加されると言いますから 此方も社員のモチベーションは上がらざるを得ないし、 ブレインストーミング的、下手な鉄砲式に様々な改善提案が挙がる流れを産みます。
結果優良企業となったタニサケの経営の最前線からは一歩退かれた松岡氏には 全国から講演の依頼がひきもきらなくなりました。
三重県では2007年9月に講演を行った中での言、 先約優先 がランチェスター経営三重の メンター通信 第56号 に見えます。 愛知では豊橋商工会議所のホームページ内、 「変革と挑戦」 ~時代とともに変化する「快適」のカタチを追求~ (2019年7月8日現在記事削除確認)にクリーニング事業を営む方の言として松岡氏に感化された旨など言及されています。 講演依頼には講演会インフォ 松岡浩 からも依頼出来るようですね。
またタニサケに経営を学ばんとする全国の経営者の要請を受けて タニサケ塾 を開き、月に一度の開校時に於いては2012年7月現在、 7月29日、30日の第194回、 9月2日、3日の第195回まで定員いっぱいとなる盛況を示しています。 Biz STYLE記事には2008年当時にも当該塾は半年先まで予約でいっぱいと言いますから 何年もの間持続した人気を博していることになります。
このような人気を得たのも業績の好調を受けてのこと、 その業績を普段の社員による改善提案が支えているのでしょう。 松岡氏は自らの限られたアイデアを補填するには、 現場を一番知る各社員の知恵を活かせば宜しいとします。
中部地方に改善の声を聞くとき、そしてその改善が現場と密接に繋がっている時、 矢張り世界に冠たる大企業が想起します。 即ちトヨタ自動車が本拠を置く豊田市を擁しています。 その発展を支えた工場運営の骨法の生みの親とも言える トヨタ自工元副社長故 大野耐一 氏は Acenumber Technical Issues に2008年11月10日の記事 自働化とジャスト・イン・タイム に取り上げています。 氏の上梓された貴重な書籍 トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして の内容は中部地方には特に大きな影響を与えてもいるでしょう。 世界に覇を唱え世界共通語ともなった カイゼン 発祥の地ですから、その影響が本記事に取り上げた両社に無いとは言えないでしょう。
それでも業種的に関わりの無い それも地元に根差す有料中小企業に揃ってこの改善提案形態が見られるのは 若しかしたら地域特性として古来から濃尾平野に広く保有されて来たのではないか、 と言う思いを抱かされるものでありました。