アメーバ経営はJALにも病院にも有効~広がる京セラ秘伝のタレ

打診された誰もが断り、誰にも不可能と思えた沈む重空母たる 日本航空株式会社 、JALの経営再建を見事僅か2年と言う短期間で成し遂げた 稲盛和夫 氏には、例えに出して恐縮ですが 今沈みつつあるエルピーダやルネサスなど日の丸半導体で失われる雇用を思えば 幾ら賛辞を贈ろうとも足りないように思います。

かたむき通信には2012年7月4日に 稲盛和夫氏主導JALの奇跡のV字回復再上場とLCCスカイマークの挑発的サービスコンセプト を配信、その中で経営再建にはJALを一度倒産させたことが実に大きいとしましたがこれは受け側の話し、 支援側が確りした経営手腕を有さねばV字回復など有り得よう筈もありません。

これに一つ与って力の大きかったのが アメーバ経営 でした。 京セラ経営の肝として有名な手法です。

製造業たる京セラの経営手法であればそれが如何なる分野にも通用するかと言えばそれは分かりません。 JAL再建を打診された当初、任ではないと断り続けたその心の動きには 勿論数万人の雇用の確保、日本経済への打撃の大きさと言う大儀が大きかったでしょうが、 経営手法の検討も小さくとも一部を占めていたと忖度します。 即ち航空運輸事業には門外漢であるのは確かでしたし、 その発言からも自らの創り上げた手法が通用するか如何かの シミュレーション的思考も脳裏を掠めたように思われるのです。

しかし最後は矢張り大儀に依って立たれたのでしょう。 その決心の時には同時にアメーバ経営は航空運輸事業にも通用する強い確信もあったのだと思います。 そのように言えば些かギャンブル的印象は免れ得ず語弊があるのは否めませんが それは数年の内にJALV時回復として見事に実証されました。 アメーバ経営は航空運輸事業に於いてもその効果を見事な迄に発揮して見せたのです。

アメーバ経営書籍 などが多く出版されますが、 なかなかに全貌が伝え切れるものではありません。 稲盛氏が後を託す植木社長始めJAL社員に、 これは秘伝として貴方達だけに伝えるものですから如何か大切になさって下さい、 とするのは勿論手取り足取りの指導あってこその言ですが、 机上ではなかなか伝えきれるものではないものを直接指導し、 伝えた確信もあってのことだと思います。

それでもこれだけの効果を見せ付けられては 直接指導の受けられぬ者としてもも知りたく思うのは人情というものでしょう。 書籍のみにてはなかなか要領を得ない部分も多くの情報に多角的に接して補完して行けば 少しは身になるようにも思うのです。 その一助たる記事が日経BP ITproの2012年7月6日の記事 [IT Japan 2012]JAL再生の内幕、「アメーバ経営」の伝道師が語る として配信されています。

この記事は京セラのグループ企業KCMC代表取締役会長で、 JAL特別顧問でもある森田直行氏が2012年7月6日に日経BP社主催のイベント IT Japan 2012で アメーバ経営と経営改革 と題された講演に依っています。

稲盛氏はJAL再生に当たり森田氏を副社長執行役員に任命、 補佐役に位置付けた一時にもJAL会長就任時点の2010年2月には アメーバ経営を確信を以てJALに適用、再生の梃子としようとしたのが伺われます。 森田氏にはその決意を 更生計画を着実に実行していけばJAL再生は必ず成功する とも語っていたそうです。

2010年春頃にはJALへのアメーバ経営導入の素案がなったものの 航空業界の事情に合った組織体制やコスト計算手法を作り上げるのに時間を掛け 組織変更を実施したのは2010年12月であったとあるのも 実際に身近にアメーバ経営を取り入れる際に参考になるでしょう。 JALに於いて具体的には

  • 路線統括本部 を新設し職制別に縦割りだったパイロット、キャビンアテンダント、空港カウンター、整備などの部門の人員もアメーバに分け採算を計算しやすくした
  • 社内計算用のパイロット費用、キャビンアテンダント費用なども設定し 1便当たり収支 を細かく算出できるようにした
が紹介されています。 1便当たり収支などは航空運輸業に於けるアメーバ経営適用の肝になる部分であるかも知れません。 着実なアメーバ経営の導入に依って2011年の未曾有の東北大震災を 乗り越えられたのはかたむき通信7月4日の記事にも伝えた処です。

更に記事は航空運輸事業に留まらずアメーバ経営は既に医療法人に20の導入事例があり 孰れもが効果を発揮しているとします。 そこではJALでパイロットやCAのコストを可視化した如く 看護やリハビリ支援など診療報酬に直結しない行為の不明瞭なコストにサービス料を 院内協力対価計算システム を用い決定しコスト構造を見え易くするのだそうです。 そうなれば小分けの採算管理も吝かではありません。 ここに医師やコメディカルをアメーバに分割可能となります。 コスト構造の可視化はアメーバ経営の一つの重要な柱となっているようです。

2007年にはITproは7月6日に森田氏にアメーバ経営についてインタビューをものし、それは記事 インタビュー:京セラ 森田直行副会長「現場が統一指標で見える、人に優しい管理手法だ」 として配信されています。 そこにはアメーバ経営をうまく機能させるためには、 アメーバと呼ぶ小集団の組織をどのように編成すればいいかを最初にきちんと決めることが欠かせず、 また組織変更に伴い業務フローを変え、各アメーバの責任範囲を明確にすることが大切とされています。 これは上にJAL導入時に際し 航空業界の事情に合った組織体制やコスト計算手法を作り上げるのに時間を掛け たのにも符合します。

此方の記事には以下アメーバ経営の特徴、利点などが挙げられます。

  • 製造部門の生産量を決めるのは営業部門であり、 自ら減損処理の必要が出るため好い加減な需要予測をして不良在庫を出せない
  • 間接部門の経費は製造部門にも営業部門にも按分され、 間接部門が経費を削減すれば、製造部門と営業部門の時間当たり採算は減少するので 間接部門の仕事ぶりは他のアメーバ全部から監視状態に置かれる
  • 時間当たり採算という独自指標では労務費(人件費)は考慮せず、 人間関係を考えなくて良い和気藹々とゲーム感覚での数値の向上に努められる
  • 時間当たり採算はアメーバの大小にかかわらず、比較的近い数値となることで以下の効果が得られる。
    • 経営者は小さいアメーバの業績を見落としにくくなる
    • アメーバ間に適度な競争心が芽生えやすい
    • 時間当たり採算を大きな値にするには、売り上げを伸ばすか、経費を削るか、時間を有効活用すると言う 単純化で財務諸表と違いパートにも分かりやすい
  • 残業しているのに採算表に正確な総労働時間を記載しないと時間当たり採算は高くるため、 ちゃんとルールを守っているアメーバから不平不満が出る、従ってサービス残業は御法度

このように折に触れ外部に情報提供されるアメーバ経営は JALへは日本国への最後のご奉公とばかりに自ら何十年も掛けて仕込んだ秘伝のタレを これは経営の秘伝中の秘伝ですから大切にして余り余所へは語らないように、 とは言いはしながら特に隠されることもなく、 孰れ日本国中へ広がり国家としてのV字回復を齎してくれるのかも知れません。

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