花王の事例に見る企業が今後CM活動を考えなければならない理由

企業は今迄広告代理店任せにして来たコマーシャル活動を 自らの手で展開するべきなのかも知れません。 少なくとも主導権を握り、広告媒体も慎重な選択が必要とされます。 更には情報化社会の転換期に当たりネットを活用した 自前のメディア構築への検討、投資もなされるべきでしょう。

花王株式会社 は多くの優良企業例えば資生堂やライオン、 P&Gにユニリーバ・ジャパンなどと正面から競合しつつ 好業績を重ねてきた押しも押されぬ優良企業でした。

その同社の2012年7月25日に配信したプレスリリース(PDFファイル) 平成24年12月期第1四半期 決算短信 では今年2012年の4月~6月の業績が前年度の平成24年3月期第1四半期と比較されるに 売上高0.1%減、営業利益29.1%減、経常利益が27.3%減と、 震災後にあったそれと比較しても低下しているのでした。 売上高については為替変動影響を除けば1%増など説明されますが、 伸びを示していない停滞状況にあるのは否めないでしょう。

利益面に至ってはほぼ3割減と只ならぬ数値を示しています。 これの主な理由として販促費の膨らみを挙げています。

花王は有態に言えばCM活動に多大な金銭を投入して競走優位を築いて来た面があります。 言ってみれば旧来メディアに於ける優等生でありました。 マスメディアに大量に自社コマーシャルを投下し、 顧客に良好なイメージを抱いて貰うことで業績を伸ばす戦略でした。 これは 株式会社ゼータ・ブリッジ が提供する 2011年 関東地区年間CMオンエアランキング (2019年8月19日現在記事削除確認)の企業別オンエアランキングを見ても容易に知られます。

恐らくはこの戦略が時代の転換と効験を得られなくなって来ているのです。 其れ処か運用を誤れば手痛いしっぺ返しを受ける事例として花王社があるのでした。

フジテレビへのCM出稿累計/ゼータブリッジ株式会社公開データ2009.1~2012.2(Twitpic, @FujitvKaoDemo)

花王社としては理由には挙げませんが2012年4月9日のプレスリリース 会長・社長人事、代表取締役の異動及び役員人事に関するお知らせ (2019年8月19日現在、2014年以前の花王社のプレスリリースは削除されています。)にあるトップ交代は販促活動方針の失敗が招いたものと巷間取り沙汰されています。 それはフジテレビへの大量のCM出稿でした。 上のゼータブリッジ社の提供データを引用したものとして@FujitvKaoDemoさんがTwitpicに「フジテレビへのCM出稿数累計」などのTweetもされているようです。

フジテレビはかたむき通信2012年6月1日の記事 絶対味覚は川越達也シェフの薀蓄溢れる料理エッセイ本 の中にも今迄視聴率競争で優位に立っていたものが日テレやテレビ朝日の後塵を拝しつつあります。 所謂 韓流押し に関して視聴者から嫌われているのが原因の一つに挙げられるでしょう。 これがフジテレビのボイコットに繋がり、 余り効力がないと見たボイコット側はターゲットを変更、 フジテレビのダイスポーンサーである花王社に的を絞り、 不買運動を繰り広げることになったのでした。

これもトップ交代と同じく花王社からは公式にはその影響は覗えません。 フジテレビにしても花王社にしても公式な見解としての影響は認めていません。 また上に上げたような数字も影響を認めざるを得ないような 数値的に明らかな根拠とは考えてはいないということでしょう、公式には。

但しその影響の有無は兎も角、 企業は恐らくこの如き危険性をこれからは考えねばならないことは自明でしょう。 それは立派な代替案が用意されているからなのでした。 インターネットです。 インターネットはフジテレビを含む旧来メディアの大いに嫌う新興メディアでもあります。

今や個人が情報を発信する コンシューマジェネレートは空気のような当たり前の存在になりつつあります。 正しく一方通行の 放送broadcast) から双方向の 通信communication) への時代の転換です。 企業が組織として自社メディアを持ち情報発信してはいけない理由が何処にあるでしょうか。 ここに於いて自社資源を大量に放送につぎ込む施策はその効力を失いつつあるのにです。

孰れ多くの企業が自社メディアを持つに至るでしょうし、 現在は旧来メディアの枠取りに懸命な広告代理店の仕事も 企業自社メディアの運用支援へと舵を切らざるを得なくなるでしょう。

使用写真
  1. フジテレビへのCM出稿数累計( photo credit: @FujitvKaoDemo via Twitter)
スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする